学歴あるいは学校歴は,本書の帯にあるように「綺麗ごとばかりじゃすまされない」問題だ。大人はしばしば建て前と本音を使い分ける。大学に進学すべきか悩んでいる高校生,あるいは卒業する価値があるのか悩んでいる大学生にとって,大事なことはまず「事実を知る」ことだろう。
本書の前半では,教育社会学者である中村氏が「受験競争」という現象を諸外国との比較や競争という社会的機能の観点から語っている。後半では計量社会学者である吉川氏が,学歴と社会階層の関係について語っている。いずれも研究の蓄積を踏まえつつ,わかりやすく書かれている。
学歴・学校歴が人生において重要かどうかは,その人が選択した人生次第である。つまり,万人に当てはまる一般則があるわけではない。本書はあらゆる角度から,そう単純ではない現実を解き明かそうとする。したがって読者は結論を急がずに,著者の議論にじっくりつき合うべきである。
しかし,諸事情で悩みが頂点に達しており,焦りを感じている方は,まず5章を読んでみてもいいかもしれない。そこでは,18歳の時点での進路として「高卒正規就職」「大学進学」「フリーター」の3つが提示され,それぞれの選択に対する得失がデータに基づいて論じられている。
本書が本来想定している読者は高校生だが,大学に入学したものの,将来に展望を見出せないでいる大学生にとっても読む価値があるし,自分の子どもや孫の進路を心配する大人にとっても有益な本だ。最終章での政策提言も議論を喚起しそうで興味深い。多くの人にお奨めできる良書。
本書の前半では,教育社会学者である中村氏が「受験競争」という現象を諸外国との比較や競争という社会的機能の観点から語っている。後半では計量社会学者である吉川氏が,学歴と社会階層の関係について語っている。いずれも研究の蓄積を踏まえつつ,わかりやすく書かれている。
学歴・競争・人生: 10代のいま知っておくべきこと (どう考える?ニッポンの教育問題シリーズ) | |
吉川徹,中村高康 | |
日本図書センター |
学歴・学校歴が人生において重要かどうかは,その人が選択した人生次第である。つまり,万人に当てはまる一般則があるわけではない。本書はあらゆる角度から,そう単純ではない現実を解き明かそうとする。したがって読者は結論を急がずに,著者の議論にじっくりつき合うべきである。
しかし,諸事情で悩みが頂点に達しており,焦りを感じている方は,まず5章を読んでみてもいいかもしれない。そこでは,18歳の時点での進路として「高卒正規就職」「大学進学」「フリーター」の3つが提示され,それぞれの選択に対する得失がデータに基づいて論じられている。
本書が本来想定している読者は高校生だが,大学に入学したものの,将来に展望を見出せないでいる大学生にとっても読む価値があるし,自分の子どもや孫の進路を心配する大人にとっても有益な本だ。最終章での政策提言も議論を喚起しそうで興味深い。多くの人にお奨めできる良書。