Mizuno on Marketing

あるマーケティング研究者の思考と行動

クリエイティブな仕事のツールは共通する

2009-02-03 21:44:26 | Weblog
IT media に以下のようなコラムが載っていた。

Microsoftを救うのは……鼻歌作曲ソフト?

Microsoft が開発/発売した鼻歌作曲ソフト Songsmith については,どちらかというとシニカルな意見が多いようだ(あるいはパロディとして楽しまれている)。しかしこのコラムは,この製品は「Microsoftがどうすれば未来を取り戻せるかを示す素晴らしい例だ」と述べる(それが本当は皮肉だったら,かなり意地悪だ・・・)。だが,そのこと自体は,ぼくにとってどうでもいい。興味を惹かれたのは,著者が Windows は Mac に倣うべきだと主張するなかで,Mac の成功要因の1つに iLife を挙げていることだ。

著者によれば,米国の多くのジャーナリズム養成学校では,MacBook の購入が推奨されている。Mac に付属してくる iLife の写真・ビデオ編集機能は Windows のそれに比べはるかに便利なので,新しいタイプのジャーナリストの必携ツールになっているというのだ。iLife の発売当時,誰もそんなことは想像していなかった,と著者はいう。おそらく,開発者もそこまで読んではいなかったかもしれない。ただし,クリエイティブな仕事とは何かについて,開発者にそれなりの意識があったことだけは間違いない。

仕事か遊びか,あるいはアートか報道かということに関係なく,クリエイティブな知的生産を行う作業には何か共通の流儀がある。それにフィットするツールがどうあるべきかを Apple は知っており,iLife にはそれが体現されているのである。いや,正しくは,そうしたデザインにたどり着く術を知っている,というべきか。いずれにしろ,その底流には,そうした技術を草の根に還流して,社会を変えたいという「思想」が流れていると思われる。おそらく,cultural creatives といわれるものがそれに近いはずである。

The Cultural Creatives: How 50 Million People Are Changing the World

Three Rivers Pr

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ワイアードから始まったロングテール論もまた,この流れを汲んでいる。その分,ビジネスに関する議論に甘い理想主義が忍び込んでしまうわけだが,それをとがめるよりは,肯定的に見たいと思う。人が社会について言及するとき,価値観から全く自由になることなどあり得ない。むしろ,近視眼的な金儲けの話だけに終始して,重要な現実の変化を見逃すことは避けるべきだ。ということは,ぼくとしてはなるべく早く,クリエイティブライフとロングテールの研究(一応は別のプロジェクトだ)に復帰しなくては。

その前に何かをしなくてはならなかった・・・ 何だったけ?