Mizuno on Marketing

あるマーケティング研究者の思考と行動

大学の壁を越えた大学院

2009-02-02 23:45:04 | Weblog
今年6月アンアーバーのミシガン大学で開かれる Marketing Science Conference への参加は見送ることにした。今年の前半は,山積した研究課題をできる限り片づけることを最優先する。米国あるいは世界における「最先端」の研究動向を知ることは重要だが,いまはそれより優先すべきことがあると考えたからだ。もちろん,アンアーバーという場所にあまり魅力を感じないということも,ほんのわずかだが影響している。だが,そのアンアーバーで8月,神経科学的な意思決定研究のワークショップが開かれるという。

Decision Neuroscience: How Neuroscience Can Inform Behavioral Decision Making Research

そこで目を引くのが,本篇とは別に, 神経科学になじみのない意思決定研究の院生を対象とした2週間のfMRIトレーニングコースが開かれることだ。さらに,神経科学を専攻する院生に意思決定研究のレビューを講義するセミナーも開かれる。現在,神経科学と意思決定の2つのクラスが提供されている大学院は,Duke, Erasmus, NYU, Caltech の4校だけとのこと。それではだめだと,NSF の資金援助も受けながら,神経科学的な意思決定研究を大学の壁を越えて促進させる企画が立てられたというわけだ。

日本に,神経科学と意思決定(あるいは行動経済学やマーケティング)を同時に学べる大学院はあるだろうか?

それはともかく,全く新しい分野の研究者を大学・学科を超えて養成する仕組みが日本にもあるとうれしい(ぼくが知らないだけで,それはすでにあるのだろうか・・・)。ただでさえ大学院が貧弱な日本の社会科学では,大学横断的な仕組みがより重要なはずだ。ぼくはいまの勤務先で大学院と隔絶され,院生との接点はない。しかし,共同研究を通じて何人か他大学の院生との接点があり,結果として大学の壁を超えた研究を進めている。ただし,個人的関係がベースで,システムになっていない点に限界がある。