Mizuno on Marketing

あるマーケティング研究者の思考と行動

ある授業の終わり

2009-02-09 23:54:08 | Weblog
今日は MBA コースの「マーケティング」講義。2003年の冬から初めて今年度で6年目だが,ついに最後の年を迎えることになった。次回は学生に最終プレゼンをしてもらうので,講義としては事実上今日で終わったことになる。そうか・・・ 多少寂しくもあるが,むしろ,そろそろ年貢の納め時だな,というのが正直な気持ちだ。なぜなら,これまで重ねてきた「無理」が,そろそろ限界を迎えたように思われるからだ。

この講義,初年度は HBS のケースを用いるなど,より MBA コースらしいものだったが,翌年からマーケティング・サイエンスの色彩が濃いものにした。戦略シナリオ・プラニングの演習を別に担当することになったので,役割分担を図ったという面もある。しかし,それよりはぼく自身の経験を踏まえ,マーケティング・サイエンスを実務に生かす道があるのではないか,それを何とか教えられないか,と思ったことが大きい。

そこで,消費者行動モデルを縦糸に,「使える」手法を横糸にした講義を目指すことにした。考えてみれば,ぼくが広告業界に就職したときの「必読の」教科書,チャールズ・ヤン『ニュー・マーケティング』やデビッド・アーカー『アドバタイジング・マネジメント』などが記憶の底にあったかもしれない。その頃マーケティング・サイエンスはまだ草創期にあったが,同時に実務家からいま以上の期待感が寄せられていた。

しかし,目指したような織物がうまく編めたわけではない。毎年糸をほぐして編み直すことの繰り返しだったといってよい。原因の一つは,「いま使われている」手法を教えることに徹すればいいのに,「これから使われるべき」手法についても言及したいというスケベ心を抑えることができなかったことだろう。後者についてさほど強固な信念があるわけではないので,それをどこまで,いかに教えるかで毎年ブレてしまった。

今年度は,そこにサービスの顧客調査データを教材として使うというミッションが加わったので,かつて行っていた演習のように,チーム作業のオリエンやプレゼンを授業に組み込むことにした。その分講義の時間が減って,生煮えの知識を詰め込むことになったかもしれない。また,講義と演習を系統的に組み合わせるという点でも課題が残った。しかし,この授業の担当は今年で終わり,この経験と反省は別の形で生かすことになる。

そういえば長崎での非常勤も,突然終わってしまった。「派遣切り」ではないが,この種の変化は突然来るものなのだ。新たな勤務先で担当している「クリエイティブ・マーケティング」と「統計学」は,しばらくは終わることなく続くはずだ。こちらもご多分に漏れず,講義内容が確定しているわけではないので,試行錯誤を避けられない。新たなマーケティングの授業の探求は,舞台を変えて今後も続く・・・か。