Mizuno on Marketing

あるマーケティング研究者の思考と行動

論理と修辞,組織の力

2007-10-04 23:25:30 | Weblog
数理の大家の先生が「お祝い」に昼食をご馳走してくださるという。もう一人お祝いされる(数理の)先生とともに,くねくねと曲がる田舎道を車で飛ばして,地元の人しか知らない隠れ家のような蕎麦屋に行く。大きな窓から,広い田畑が見渡せる。ほんとならセイロを2枚ぐらい食べたいところだが,奢っていただく身なので遠慮する(とはいうものの,かき揚天ざるという,3人のなかで最も高額な注文をする)。

英語で論文を書く話になった。数学の論文は厳密な論理の展開だから,基本的には IF THEN だけで書けるという。ただし,新たな問題を提起するとき,それなりの修辞法が必要になり,一定水準以上の語彙や表現力が要求されるという。数学では,論理と修辞はたまに協力し合いつつ,基本的は独立し併存している。他方,社会科学の分野では,そうした明確な線引きはなく,論理と修辞が「溶け合っている」。

午後は約4時間,9チームの学生たちのプレゼンを聞く。お題はコンビニ業界の戦略環境分析。主に文献やネット上の情報から自社と競合,顧客など,さまざまなステイクホルダーの情報を集め,最後はSWOTまで持っていく。各チームが,まるでお互いダブらないよう申し合わせたかのように,それぞれ独自の視点を打ち出してくる。異質性を内部に抱えることが組織のパワーになることを実感する。

バカ!と罵倒する心理

2007-10-04 08:15:15 | Weblog
安倍/福田内閣の「目玉」とされる舛添厚生労働大臣が,自らの発言に抗議した市長らを罵倒している。「小人の戯れ言」あるいは「バカ市長」など,なかなか刺激的な表現だ。テレビに映る舛添大臣の目は,これほどの快楽はないというぐらい嬉しそうに輝いていた。

事の発端は,社会保険料の徴収で少なからぬ自治体職員が不正を働いたため,業務を銀行に移管させるという大臣の発言にある。こうした問題が起きていない自治体の首長が,職員のモラルを下げる発言だと噛みついた。それに対して大臣は,そんなことをいっている暇があったら,自分の自治体をちゃんとしろと言い返し,上述の発言に至ったわけである。

職員が不正を起こした市町村もあれば,そうでない市町村もあるのは事実である。しかし,舛添大臣から見れば,この問題は自治体組織の管理能力の欠如として一般化され,個々の市町村レベルの差異など,瑣末な問題に過ぎない。国務大臣たる私はかくも高所から問題を考えているのに,細かな問題を言い立てるなど「小人の戯れ言」にすぎない・・・と。

研究には一般化,抽象化は欠かせない。政治や経営でもある程度そうだろうが,その許容範囲はかなり違うはずだ。複雑なものを相当程度複雑なまま扱うことが要求される。その意味で,優れた学者が優れた政治家,経営者になるとは限らない。リーダーには鳥瞰と虫瞰の両方ができると周囲に感じさせる立ち振る舞いが必要だ。首相を目指しているという舛添氏にとって,意味のない攻撃性を露呈したことになった。

しかし,罵倒するときの舛添氏の喜びに満ちた目を見ていると,もっと深いレベルの何かを感じる。それは,外見上美人と見られる女性が,他の誰かを「ブス!」と罵ったときに周囲が感じる感情に近い。華麗なる経歴から,舛添氏の「頭がいい」ことは誰もが認めるだろう。黙っていればわかることを,他者をなじることでなぜ強調したいのか(逆効果になるリスクを冒してまで・・・)。表面からはわからない,何か不安があるのだろうか・・・。