フランス映画「さらば夏の日」は、フランシス・レイの甘美なメロディーと共に青春の情景を描いた心に残る名作だ。
夏のバカンスに南フランスにやってきた若いカップル。ヨットで地中海のクルージングを楽しむ計画だ。その旅の途中に青年は夏の日差しに惑わされたのか、別の女性に気を引かれてしまう。そのカップルは気まずいことになってしまい別れてしまう。しかし、季節が変わり再開した二人は、お互いがの心が通い合っていることに気付き、彼らは人生の次のステップへと進む。甘く切ない若者の一夏の出来事を描いた作品である。
夏のある日にクアトロにやってきたあるお客様は、ウニのクリームソースというパスタに心を通わせていた。ウニのクリームソースは一年中あるのに、なぜかクアトロには日替わりのおすすめになっている。いつものように、日替わりおすすめメニューにウニのクリームソース¥1500という表示があるのを確認し注文しようとした。その日替わりおすすめメニューにはウニのクリームソースと並べてポモドーロ・プレミアム¥1300と書かれているのも気に掛かる。カウンターに並べられているイタリア・トマトが目に映った。その赤く輝く細長いトマトが自分を誘惑している。太陽がふりそそぐ豊四季の田舎道を歩いてきたためだろうか、ウニのクリームソースと決めていたのに、そのトマトのパスタに心を奪われ、ポモドーロ・プレミアムを下さいと云ってしまった。
真っ赤なイタリアントマトの誘惑に負けるお客様の多い、この夏のクアトロである。
そして、次は秋の誘惑が待っていることに気付いていない。
それでも、それがグルメ人生のステップを登るプロセスなのである。