奈良県旧西吉野村は南朝所縁の地、その吉野川支流丹生川沿い、黒淵にある春日神社に三体の観音石仏が安置されている。
五條市、国道24号線より分岐して紀伊半島を縦断する国道168号線を南下する事約30分、緑濃く山谷ともに深い西吉野地区は、
秘境十津川への序章のように、山肌にしがみつくような山岳集落もそここに望める。
賀名生(あのう)皇居跡のある賀名生歴史資料館を越えすぐ、西吉野トンネル手前を左折、丹生川を望む大きい一軒屋、旧家「公文家」の脇道を辿ると黒渕春日神社がある。
春日神社はダムに依る水没から逃れるためこの高台に遷宮、そういえば歴史を感じる重みには欠ける境内です。
そんな境内の片隅に簡素な覆屋があり、鍵の掛かった格子戸の奥に三体の石仏が安置されている。
光の足りない小さな堂内、それも格子戸の隙間にレンズを差込み、至難の技での撮影、不満足な画像ですが・・・・
元、近くに在った奈良時代建立だと伝えられる崇福寺跡に伝えられた石仏だと言われています。
向かって左、二重光背を持ち、蓮華座に座し、合掌する宝冠の観音石仏。
中央に座す石仏も殆ど変わりない像容・・・・
右端の石仏も他の二体と瓜二つ。
像高約40cm、きめの粗い凝灰岩質の石材一石で蓮台二重光背、半肉彫りの合掌観音坐像石仏を刻みだしている。
蓮弁や全体の像容から、古く藤原時代の遺仏で有ろうと考えられている。
境内傍らにある「南朝三帝黒木御所跡」の石碑がどこか侘しく建って居ます。
歴史の片隅に忘れ去られたような、しかし重要な一頁がここには隠されているのかも??
それにしても同じような合掌観音石仏が三体も有るのはどう云う事なのだろうか??
撮影2011.7.30