
地面に捨てられた朽ち行く葡萄は発酵して、斜面にそよぐ秋風はいくらか鼻につく腐敗臭を運び、実を奪われた抜け殻のような葡萄の生命力の衰退は一面を覆う。
夏時間でまだ明るい夕方の太陽は、じわじわと傾きかける。色づきはじめた葉々は、老いた緑の葉の間に見え隠れする。

中秋の夕刻。斜面上部から萎びた葡萄の房へと、山城の影は長く尾を引く。

貴腐の生えた葡萄は、密集することなく思い思いに間隔を開けながら枝にぶら下がる。貴い愉悦の営みに耽り、ひっそりと息づき、脈打つ、その房々。あたかも芋虫が草木を巻き込むかのように、細い枝などを張りつける作為的な様相はなんとも面映ゆい。

参照:
貴腐葡萄の収穫(モーゼルだより)
新月過ぎの葡萄の精 [ アウトドーア・環境 ] / 2005-10-10
今頃の収穫なのですね?
見てみたいものです。
植物の光合成や呼吸を肌で感じることはあまりありませんが、去年も同じ時期に同じようなことを感じているので、やはり葡萄のフェロモンでしょうか。
林檎なども同じかもしれませんが、ワイン畑はこの時期特別に魑魅魍魎としたものが存在します。こちらは本年に限れば既に終焉ですが、上のリンクのように完熟の遅いモーゼルはまだ残されているようです。
>貴い愉悦の営みに耽り、ひっそりと息づき、脈打つ、その房々。
葡萄が生る様は不思議に人の心を捉えますね。
山梨のワイナリーを描いた川原泉さんの「美貌の果実」が思い浮かびます。
変な存在感があるんですね。垂れ下がる重量感もありますし、流石に干し葡萄状になると軽そうですけど。他の果実だと、渋柿などが、鳥に突付かれながら何時までも木に残されるでしょうか。イチゴ類も乾燥してきますが、房がない。
素敵です。
想像をかきたてられますね。。
どんなものが見えるのでしょう。