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Wein, Weib und Gesang

ワイン、女 そして歌、此れを愛しまない輩は、一生涯馬鹿者であり続ける。マルティン・ルター(1483-1546)

思いの外時を費やす読書

2007-09-10 | 文化一般
旅行に出かける前には書かなかった。ミヒャエル・エンデのヒット作「モモ」を読んで、その映画化されたものを観ての感想である。

これらには個人的な時間の繋がりがある。それは、その映像を否応無く見せられたのが、フランクフルトからアンカレッジへのルフトハンザの機内であったからだ。二月ほどの中欧・北欧滞在の帰路であった。1986年の秋のことである。

慣れぬ空の旅でみせられたその映像の印象は、暗く、そのスラプスティクな筋運びは、隣に居合わせた西ベルリン人の説明の子供文学として大成功したと言う説明を僅かばかりも納得させては呉れなかった。それゆえか、帰宅後その書物を丸善で注文したのである。日本語訳は当時まだ出版されていなかったようで、英訳などが一部で読まれていたようだ。

今回、その本を一字一句丁寧に読み返す気にさせたのは、その背後にあるシュタイナーの人智学などのオカルト精神を読み取って浮き彫りにして見ようと意地悪く意図したからである。

結論からすると、思想哲学的にそれほど強く一貫しているものは導き出すことは出来なかった。むしろ、当時その映像に感じた、当時の映像表現への違和感のようなものを、それを覆すまでの力強さはその原作を読んで感じなかったと言うのが正直な感想である。

それでも、月並みと評されるかもしれないが、北イタリアにありそうなユーモアーとペーソスのような、一見旅行記の様な雰囲気はたいへん上手く伝えられていて、そうした表情は子供向け文学として一級の感はある。

それに引き換え、主題である時間感覚の表現や示唆への表現は、感覚的なもので、理解出来ると言うものではない。それは、この児童文学の読者の年齢層を分かり難くしている。恐らく参考にされたルイス・キャロルのファンタジーなどとも比較されるのだろう。

この物語の特徴は、それでも時間を司るホラと言う人物が存在して、その上部に万能の神の存在を象徴していることであろう。これを以って、この物語の荒唐無稽さにある安定感を与える救いとなり、文学賞に繋がっていることには違いない。

その反面、微妙な年齢の少女の設定や非人格的な悪役群の設定は見事ととしか言えない。つまりそこにこそ、歴史的文化的な流れの中において、我々の興味を繋げるものを提供しているのである。

同様な配慮は、一字一句読ませる文章で、必要以上に時間を費やせる、つまり内容に比して、敢えて読み流させない配慮を施している文書となっている。これは、同じ時間を扱った「あたたかな気持ちのあるところ」にもその目的や綴り方やジャンルの大きな相違に関わらず共通していることで面白い。更に時間の芸術と言われる芸術音楽などもまさに そ れ を聞かせるのがミソとなっていることに気がつく。

それにしても歩みの鈍い亀カシオペアの案内とその背中に浮かぶ文字は、先頃逝去したイングマール・ベルイマン監督の「魔笛」の演出を思い起こさせ、緑のパトカーに停止を求められるような趣すらある。

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2 コメント(10/1 コメント投稿終了予定)

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初めまして。 (chouchou)
2007-09-24 07:10:53
pfaelzerweinさま、こちらでは初めまして。
私の拙いサイトにコメントを頂き、こうして伺うことができました。とっても素晴らしい!!ですね。勉強になるお話がいっぱいです。私は音楽や映画や読書などが大好きなのですが、文学はドイツからです。難解なことは苦手ですが興味のある事柄が沢山こちらに書かれていてワクワク致します。ニーチェやトーマス・マン、ベルイマンの「魔笛」、エンデの「モモ」などとても大好きなのです。今後とも、どうぞ宜しくお願い致します。
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流石に目が早い (pfaelzerwein)
2007-09-24 15:15:21
chouchouさん、ようこそ、コメント有難うございます。お忘れのようですが、前回は映画の方のサイトでCatherine Breillatの作品について言及させて頂きました。

流石に目が早いですね。ご指摘のように、ここでもルイス・キャロルのファンタジー繋がりで、彼の仲間や文化的背景に興味を持っています。只、如何せん読書量が乏しく、繋がる糸も思うように引けない有様で歯痒く思うばかりです。

皆様のサイトのお知恵を借りて好奇心の対象を広げて参りたいと思います。こちらこそ宜しくお願い致します。
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