また地面が話題である。先日来の「資本主義終焉」キャンペーンは、新刊書の発売に合わせて、ラジオ等で大変盛んに繰り広げられている。土曜日の新刊本紹介では、作者のエルマー・アルトファーター元自由ベルリン大学教授が、「進化で無く革命だ。」と強調して煽る。もちろん「フランス革命の君主の首を打ち落としたりソヴィエト革命の混乱を言うのではない」と語るのであるが、こうして今時公共ラジオ文化波で「革命」を叫ばれるとどうしても気になる。
いくらかネットで探ってみると、このキャンペーンの背後と言うか、真意は分かって来た。結論から言えば、これはイラク騒動に始まる一昨年来の資本主義再考の流れに乗ったいささかアジテートするマーケティングである。マルクスの資本論やその他の旧左翼イデオロギーの書物に比較的関心がもたれるようなトレンドが背景として存在する。
ネットに在った教授の講演要旨は、化石燃料を軸とする産業革命と資本主義から見た地政学的なポスト植民地主義、オイルショック以後の西側の計画経済と自由市場、化石燃料の枯渇に備えての代替燃料への移行、化石燃料から解放された新たな経済秩序などが述べられている。門外漢の我々でもマクロのこうした議論は特に目新しくも無く新たな視点は得られない。
しかし特にシックリと来ないと感じたのは、「経済活動がモラルによって、下位からの合意によって執り行われるようになる」とする 予 測 は、我々が見てもあまりに楽天的過ぎるように思えるからだ。教授は、コソヴォ攻撃のあの日までは環境政党「緑の党」のシンパであったようで、所謂左派知識ブレーンはこういったものなのであろう。具体的なヴィジョンを示せない限り、このような過激な発言は下位からは否定的にしか映らない。上位からは非現実的と一笑される。それはどこかアンゲラ首相の役立たずの懐刀・超自由主義者パウル・キルヒホッフ教授の理想論にも似ている。
この点から現実の世界をミクロの視点で見て行くと、中華人民共和国のアフリカでの活動などは、資本主義の権化のような八面六臂の活躍にみえる。アフリカとの交易では米国、フランスに続いて第三の主要国となり英国を超えた。全アフリカ大陸への直接投資額は、150億USDに及んでいる。共産圏時代の第三世界構想とも切り離せないが、鉄道や港などのインフラスクテゥアーの整備や北京留学招聘などでの人的素材育成を含めた大掛かりな援助協力は、自国経済の成長に伴ってさらに進化している。
昨今のアフリカの経済成長は5.2%に及んでいる。特に原油の排出から20%の成長を示すアンゴラに於いて、その政体や指導層の汚職への経済制裁を加えるため援助を中止したIMF等の思惑を向こうにまわして、北京政府はこれを逆手に利用して、2億USDの経済援助に対して原油利権と全体の七割の開発受注の権利を獲得した。タンザニア、エチオピア、ガボン、象牙海岸、トーゴ、マリなどとの間にも同様な協定が結ばれている。「内政不干渉!」と「民族固有文化の尊重!」を対外政策の軸とする北京政府のなりふりかまわぬ商売の足場作りの遣り口は、西側先進国の努力を水疱に帰するだけの威力となっているようである。
アフリカ各国は、そこに埋蔵する化石資源への関心だけでなく、先進国で輸入制限を受けた繊維製品の重要な市場として北京政府にとって重要性は増している。さらに人件費が向上している中国での生産をアフリカへと移転する計画は進行しており、中華人企業の搾取、労働人権が大きな問題となっているのは周知の通りである。先日のフウ・ジンタオ主席の訪問は、企業家や開発技術者を伴って、それらの問題解決への姿勢よりもより強力な関係強化を示して、舞台裏では政治家間での巨額な利権が動いているのであろう。
こうして二つの話題を総合すると、ワシントンの武力を背景とするネオリベラリズム以上に、北京政府の自由経済主義信奉はその利権だけでなく金融市場においても莫大な経済的影響を与えているのだろう。双方とも、自由経済とは名ばかりで化石資源の奪い合いをしているうちは、地政学的な国家戦略から抜けきれない。北京政府による膨大な石油や鉱物の備蓄と海外投資への並々ならぬ意欲は、局部紛争による一種の後退と停滞を招くと見るのは間違いか。
米国の化石燃料の輸入依存とネオリベラリズムの旗印の下での突進は、その原油購入額をバーレル50USDと換算して現在の2500億USD から2020年には3500億USDへと負担を上昇させると試算されている。温暖化による自然災害の復興経費もここにさらに付け加わる。一方中国の備蓄施設は2010年までに完了すると言うが、分析によると、物理的な北京の権益下の掘削はその時点で全て終了して貯蔵されるようになる。
こうしたことから、出来得る限り早い時期に化石燃料依存から脱皮して、市場優先主義から進化した生活密着型の経済秩序への移行が必要だが、一体何時になることだろうか?後期資本主義からの脱皮は、地球の中での有限の時間と有限の資源を慈しむようなポスト近代の実現であるのだろう。
参照:
覚醒の後の戦慄 [ 歴史・時事 ] / 2005-10-15
ニューオリンズを聞いたボブ [ 歴史・時事 ] / 2005-09-06
来週火曜日までの期限 [ 歴史・時事 ] / 2005-05-29
核反応炉、操業停止 [ アウトドーア・環境 ] / 2005-05-27
限りある貪り取れる目方 [ 生活 ] / 2005-05-12
イナゴの大群-FAZを読んで [ 数学・自然科学 ] / 2005-05-05
資本主義再考-モーゼとアロン(3) [ 歴史・時事 ] / 2005-05-04
人のためになる経済 [ 文学・思想 ] / 2005-04-11
いくらかネットで探ってみると、このキャンペーンの背後と言うか、真意は分かって来た。結論から言えば、これはイラク騒動に始まる一昨年来の資本主義再考の流れに乗ったいささかアジテートするマーケティングである。マルクスの資本論やその他の旧左翼イデオロギーの書物に比較的関心がもたれるようなトレンドが背景として存在する。
ネットに在った教授の講演要旨は、化石燃料を軸とする産業革命と資本主義から見た地政学的なポスト植民地主義、オイルショック以後の西側の計画経済と自由市場、化石燃料の枯渇に備えての代替燃料への移行、化石燃料から解放された新たな経済秩序などが述べられている。門外漢の我々でもマクロのこうした議論は特に目新しくも無く新たな視点は得られない。
しかし特にシックリと来ないと感じたのは、「経済活動がモラルによって、下位からの合意によって執り行われるようになる」とする 予 測 は、我々が見てもあまりに楽天的過ぎるように思えるからだ。教授は、コソヴォ攻撃のあの日までは環境政党「緑の党」のシンパであったようで、所謂左派知識ブレーンはこういったものなのであろう。具体的なヴィジョンを示せない限り、このような過激な発言は下位からは否定的にしか映らない。上位からは非現実的と一笑される。それはどこかアンゲラ首相の役立たずの懐刀・超自由主義者パウル・キルヒホッフ教授の理想論にも似ている。
この点から現実の世界をミクロの視点で見て行くと、中華人民共和国のアフリカでの活動などは、資本主義の権化のような八面六臂の活躍にみえる。アフリカとの交易では米国、フランスに続いて第三の主要国となり英国を超えた。全アフリカ大陸への直接投資額は、150億USDに及んでいる。共産圏時代の第三世界構想とも切り離せないが、鉄道や港などのインフラスクテゥアーの整備や北京留学招聘などでの人的素材育成を含めた大掛かりな援助協力は、自国経済の成長に伴ってさらに進化している。
昨今のアフリカの経済成長は5.2%に及んでいる。特に原油の排出から20%の成長を示すアンゴラに於いて、その政体や指導層の汚職への経済制裁を加えるため援助を中止したIMF等の思惑を向こうにまわして、北京政府はこれを逆手に利用して、2億USDの経済援助に対して原油利権と全体の七割の開発受注の権利を獲得した。タンザニア、エチオピア、ガボン、象牙海岸、トーゴ、マリなどとの間にも同様な協定が結ばれている。「内政不干渉!」と「民族固有文化の尊重!」を対外政策の軸とする北京政府のなりふりかまわぬ商売の足場作りの遣り口は、西側先進国の努力を水疱に帰するだけの威力となっているようである。
アフリカ各国は、そこに埋蔵する化石資源への関心だけでなく、先進国で輸入制限を受けた繊維製品の重要な市場として北京政府にとって重要性は増している。さらに人件費が向上している中国での生産をアフリカへと移転する計画は進行しており、中華人企業の搾取、労働人権が大きな問題となっているのは周知の通りである。先日のフウ・ジンタオ主席の訪問は、企業家や開発技術者を伴って、それらの問題解決への姿勢よりもより強力な関係強化を示して、舞台裏では政治家間での巨額な利権が動いているのであろう。
こうして二つの話題を総合すると、ワシントンの武力を背景とするネオリベラリズム以上に、北京政府の自由経済主義信奉はその利権だけでなく金融市場においても莫大な経済的影響を与えているのだろう。双方とも、自由経済とは名ばかりで化石資源の奪い合いをしているうちは、地政学的な国家戦略から抜けきれない。北京政府による膨大な石油や鉱物の備蓄と海外投資への並々ならぬ意欲は、局部紛争による一種の後退と停滞を招くと見るのは間違いか。
米国の化石燃料の輸入依存とネオリベラリズムの旗印の下での突進は、その原油購入額をバーレル50USDと換算して現在の2500億USD から2020年には3500億USDへと負担を上昇させると試算されている。温暖化による自然災害の復興経費もここにさらに付け加わる。一方中国の備蓄施設は2010年までに完了すると言うが、分析によると、物理的な北京の権益下の掘削はその時点で全て終了して貯蔵されるようになる。
こうしたことから、出来得る限り早い時期に化石燃料依存から脱皮して、市場優先主義から進化した生活密着型の経済秩序への移行が必要だが、一体何時になることだろうか?後期資本主義からの脱皮は、地球の中での有限の時間と有限の資源を慈しむようなポスト近代の実現であるのだろう。
参照:
覚醒の後の戦慄 [ 歴史・時事 ] / 2005-10-15
ニューオリンズを聞いたボブ [ 歴史・時事 ] / 2005-09-06
来週火曜日までの期限 [ 歴史・時事 ] / 2005-05-29
核反応炉、操業停止 [ アウトドーア・環境 ] / 2005-05-27
限りある貪り取れる目方 [ 生活 ] / 2005-05-12
イナゴの大群-FAZを読んで [ 数学・自然科学 ] / 2005-05-05
資本主義再考-モーゼとアロン(3) [ 歴史・時事 ] / 2005-05-04
人のためになる経済 [ 文学・思想 ] / 2005-04-11