Wein, Weib und Gesang

ワイン、女 そして歌、此れを愛しまない輩は、一生涯馬鹿者であり続ける。マルティン・ルター(1483-1546)

土壌の地質学的考察

2006-05-09 | アウトドーア・環境
ワイン土壌の地質学的考察を、ある醸造所の店先で地質環境の専門家から拝聴出来た。火成岩や堆積岩や変成岩を見る火山活動や堆積、造山隆起活動などを基本として、土地の大まかな地殻から土壌を見て行くようだ。その観点からすると、幾らかでも馴染みのある土地柄については、観光ガイドやハイキングの本などに詳しく、皆が良く知っている。

特にライン河を挟む平野は、馴染みのあるもので、両側に盛り上がっている山地が特徴である。断面図を見て分かるのが、オーデンヴァルトに於けるユラ層の貝殻石灰岩であり、プェルツァーヴァルトに於けるその下層となる雑色砂岩層である。こうした地盤隆起・沈下、侵食の様相を頭に入れておくと以下のような議論が容易に理解出来る。

上の図示を見ても分かるように、地下の古い下層が山地として突出していると云う事は、その麓に於いて必ずや層の錯綜が存在する事であろう。つまり洪積世が平野を作るまでの区間に、部分的な土壌を表出させる事になるのである。このような変化が最も多いドイツのワイン産地はナーエ地方である。

さて、このような事象がワイン街道のミッテルハルト地域でも所謂グランクリュの栽培地を形成している。玄武岩から石灰岩、スレート、などと様々な土壌が表出している。これらの特徴が、カリシウムやカリウムの植物に於ける摂取として、出来上がったワインの成分に大きな影響を与える事は十分に知られており、水捌けの良さや土壌の温度などと共に土壌の個性として語られる。

こうした事から、其々の土壌を以って、ワインの味覚を語ろうとするのが通なのだが、上述した地質環境の専門家は更に明確にこれを解説した。つまり、特別な土壌の突出よりもその地層の多様性が、少なくとも10メートルとも30メートルとも云われるワインの根の長さを考慮すると、興味あるワインの特性を左右すると云うのである。これは、大変説得力ある説明である。何故ならば、一般的に良く云われる水捌けの良し悪しと、根の張りかたの関係もこれで説明出来るからである。

水捌けが良い山肌の上部の土壌では、幾ら深く根を張らそうとも、その根が吸い採ってくる水に溶けたミネラル成分は限られており、反対に多様な土壌の層が存在している場所では多様なミネラル分が摂取される。つまり、地図を見る事で大まかな土壌とその水捌けなどが推測出来るのである。こうした作業は、グランクリュとなった伝統的な地所の各々の性質を固定観念として捉えるよりも、遥かに科学的な推測なのである。

大まかに纏めると、地下水も流れ着く、中腹よりも下部の方が土壌の多様性も高くなりミネラル成分を多く含み、それより平野部では堆積した粘土質となり、なんらのミネラル分を含まないとなる。これはワイン街道を離れるとリースリングなどのワインは生産される事無く、粘土質の土壌でのロゼなどの葡萄の生産となることを示している。反対に斜面の上部となると、ここでは珪素の多い砂岩成分となり、そうしたシャンパーニュのような、グランクリュワインからは外れる、軽快なリースリングとなる。少なくとも現在までのワイン体験の多くを大変上手に説明出来る。

疑問として残ったのがローマ人のワイン栽培の遺跡である。この位置が、一箇所は山の上部、一箇所が殆んど粘土質となっている場所にある。当時の生産方法では、現代のワイン栽培のようなミネラル成分配合の妙を味わったとは思えないので、酵母成分の生育や寒さにも負けない葡萄の栽培が北の辺境の植民地で優先されたのであろう。



ローマ人の片方の粘土質の土地はブドウ栽培でなかったようだ。つまり他の野菜を栽培していたらしい。
コメント (4)
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