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パンダ イン・マイ・ライフ

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波乱万丈の人生 高松陵雲 「夜明けの雷鳴」 吉村 昭 24

2008-12-13 | 吉村 昭
NHK大河ドラマ「篤姫」もいよいよ明日が最終回。江戸城無血開城から明治維新後へといよいよファイナルである。

高松陵雲(1836生まれ)を取り上げた「夜明けの雷鳴」(平成12年/2000刊行)である。
明治維新の際、箱館戦争で傷病者の治療にあたった医師。明治に入り、貧民を無料で診察する組織「同愛会」を設立した。

吉村昭の歴史小説には、医師がよく登場する。最初の陸軍軍医総監となった松本良順、「解体新書」に取り組んだ前野良沢、杉田玄白、種痘の普及に生涯をかけた福井の町医師、笠原良策などである。

その中でも陵雲の生涯はまさに波乱万丈であろう。幕末に福岡県の庄屋に3男として生まれ、20歳で久留米藩へ。医師を目指し、次男を頼り江戸へ。将軍に仕えた有名な蘭方医の石川桜所を師事、蘭学を修める。その京都行きに随行した陵雲は、一橋家に仕えた友人の知遇で、一橋家の医師となる。そして、この一橋家当主が15代、最後の徳川将軍慶喜となり、弟昭武の、パリ万博行きに随行することとなる。
陵雲31歳の時である。フランス医学を学ぶ傍ら、日本では大政奉還、鳥羽・伏見の戦いとまさに、主家の存続にかかわる大事態が発生。陵雲は、帰国後、幕臣として、箱館戦争にて、西洋で学んだ敵味方無く支える治療に徹することとなる。
その後、榎本軍降伏後、敗軍の医師として忸怩たる思いで東京、水戸、静岡へと空虚な日々を過ごす。結婚や廃藩置県など、めまぐるしく移り変わる環境の中で、市井の医師としての道を歩む陵雲。
しかし、明治9年の旧藩士が起こすさまざまな乱、明治10年(1977)には西南戦争が起きる。41歳の時。明治10年に東京で民間救護団体の同愛社を設立した。大正5年(1916年)、81歳で死去。

医師として、大きな時代のうねりの中で、フランスで学んだ病院経営を常に実践する信念。吉村の歴史小説の登場人物は、皆、清廉で稜々たる気骨の持ち主である。吉村の視点は揺るぎない。
また、勝者と敗者を考えさせる作品でもある。巻末の箱館戦争時、病院患者を戦争から救った敵方2名の薩摩兵士の末期が利く。村橋は行く方知れずで死亡、池田も侘しい生活者となっていた。


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