パンダ イン・マイ・ライフ

ようこそ panda in my lifeの部屋へ。
音楽と本、そしてちょっとグルメなナチュラルエッセイ

哲学な日々

2017-01-29 | book
野矢茂樹は、1954年生まれの東大教授。専門は哲学。2015年10月発刊の「哲学な日々-考えさせない時代に抗して」を読んだ。

哲学というと、ソクラテスなどのギリシャ哲学、カント、ヘーゲルといった教科書で学んだ名前だけの暗記ものとしての単語しかない。ましてや、その著書に触れたいとも、その能力もないと、触れる気持ちも機会もない。

そんないわゆる哲学とは一線を画し、哲学とは、考える力を養うこだとという。2部構成で、一部は「哲学者のいる風景」は、新聞に掲載された50回もの短編集。急ぐことではなく、とどまることの重要性、座禅のすばらしさ、散歩の重要性、考えることの大切さなど、とても小難しい先人の思想の紹介ではない。第2部は「哲学も、哲学じゃないことも」は、いろいろな雑誌に掲載された小編集。

これまでに触れたことのない、考えることの楽しさ、尽きることのない思考など、焦らず歩むことを教えてくれる。

肩ひじ張らない文章が、発刊の12月には3刷の理由か。
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ハリネズミの願い

2017-01-22 | book
1941年生まれのオランダの童話作家、医師のトーン・テヘレンの作品。オランダ在住の長山さきが訳した。2014年の作品。2016年6月発刊。

引きこもりがちなハリネズミが、家に招待する動物たちをめぐりその対応を自問自答する。59の短編からなる。クマ、クジラ、ビーバー、ミーアキャットなど、多くの動物たちが、その性格を作り上げられ、ハリネズミと会話を繰り広げる。人の心の複雑さ。やさしさ、残忍さ、弱さを動物の口を借りて、各編で歌い上げる人間賛歌だ。

テヘレンは、動物たちが登場する物語を50以上書いているという。
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恋するハンバーグ

2017-01-15 | book
同年代の作家、山口恵以子の人情小説、「佃 はじめ食堂 恋するハンバーグ」を読んだ。2016年7月刊行。おもしろい。ドキドキさせて、ほろっとさせる。かつて、1970年代前後のホームドラマを見ているよう。

舞台は、昭和40年、東京オリンピック直後の東京、下町で開店する洋食屋が舞台。孝蔵は、38歳、すし屋の息子でホテルの副料理長を務めた、ハンサムボーイ、一子は32歳でラーメン屋の娘。岸恵子似の美女。美男美女の2人は、24歳、18歳で結婚し、小2の息子の高がいる。

登場人物は、その厨房を手伝う、松方英次25歳、日室真也22歳。東北から出てきて1話の「覚悟のビフテキ」で無銭飲食をし、孝蔵・一子夫婦と深い因縁を持つことになる西亮介18歳、孝蔵のホテルの兄弟弟子、後にホテルの料理長になる涌井直行、ホテル勤務時代からのお馴染み、都市銀行の頭取の勝田、病院の女医で一子と同年代の佐伯直。個性ある善人だらけの登場人物が、各物語に絡んでくる。

ウルトラのもんじゃ
亮介が住み込みで店を手伝うようになる。ウルトラQの登場。高がいなくなる騒動。栄次に若い女性の影が。

愛はグラタンのように
孝蔵と一子の馴れ初め。昔、一子に言い寄る慶応ボーイの金持ち息子、不動産屋の時任恒巳。英次と付き合っている風間紗栄子は銀行に勤めるOL。25歳でそろそろ英次との結婚を考えている。紗栄子が英次に、一人立ちのためにいい物件があると相談を持ち掛ける。どうも恒巳が紹介しているらしい。怪しく思う孝蔵。

変身! ハンバーグ
涌井が有名なフランス料理の賞をもらう。忙しくする涌井は、はじめ食堂にやってくる。心なしかやつれたように見えた。

さすらいのコンソメスープ
70歳前後のうらぶれた老人が、はじめ食堂にやってくる。住所不定でお金もないらしい。

昭和45年、1970年万博開催。栄次と紗栄子の結婚式。栄次の後釜で富永亘という青年が来る。はじめ食堂の近くに喫茶店がオープンする。その若い店主、樋口玲子は美女で銀座のクラブで働いていたという。その顔を見て孝蔵はびっくりする。孝蔵と玲子の関係は。亮介の一人立ちの日が近づく。

あの頃を知っている人たちには、空気がまざまざと蘇る。テレビと団らんが直結していた日々。隣近所がほんとうに近かったなあ。孝蔵と一子の周りに起きるいろんな出来事。そこを夫婦で乗り切る。料理小説は、料理の温かさとともに読めるので本当に温かい。まさに人情小説だ。展開も早く、構成もみごと。センテンスが短く、二度読みしてしまった。

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活版印刷 三日月堂

2017-01-09 | book
ほしおさなえの「活版印刷三日月堂」2016年6月刊行。ほしのさなえは、1964年生まれの作家・詩人。繊細な心情描写が、若者の心を鮮やかに描き出す。

世界は森
埼玉県川越市が舞台。小江戸と呼ばれる川越にある閉じた古い活版印刷所、三日月堂。28歳の弓子が、この店を始め、レターセットを作成する。川越運送店に勤めるハルは、だいがくに進む一人息子のプレゼントに悩んでいた。夫を早く亡くしたハルの子供が巣立つ寂しさと向き合う一編。

八月のコースター
叔父の喫茶店「桐一葉」を継いで、その店の在り方に悩んでいた「僕」は30歳前後の青年。ハルさんに相談して、ショップカードとコースターを三日月堂で作ることにした。弓子と打ち合わせをしながら、少しずつ自分らしさを形にしていく。大学時代に俳句サークルで付き合っていた彼女との別れ。俳句と向き合い、新たな一歩を歩み始める。

星たちの栞
川越にある私立高校の国語教師、10年目の遠田は、喫茶店「桐一葉」のコースターを気に入る。そして、生徒と印刷所三日月堂を訪れ、学園祭の出し物を決める。生徒の両親の離婚、遠田の大学時代の演劇部仲間のその後などを織り交ぜ、弓子は印刷所として学園祭に参加する。

ひとつだけの活字
川越の市立図書館に勤務する佐伯雪乃は、小学生の同級生、宮田友明のプロポーズを受け入れ、外国へ行くことになるが・・・。祖母が作ってくれた活版印刷のお年玉袋を大切にしている雪乃は、高校の学園祭に行き、その活版印刷の魅力を再認識する。そして、結婚式招待状を活版印刷でしようと思い立つ。宮田と、その親友のデザイナー三日月堂を訪れる。弓子と父の思い出や活字店の存在など、活版印刷のミニ知識などを織り交ぜ、旅立ちを迎える女性のび微妙な心理を再現する。

一つ一つの物語が受け継がれ、やさしく人々の心を包み込む。活字というものを通して、言葉の温かさ、メッセージ力を再認識する。うまいストーリーテラーだ。


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ディランの日めくりカレンダー

2017-01-08 | music/pops
ソニーミュージックのボブ・ディランのホームページを見ると、今年から日めくりカレンダーがスタートした。前振りは、以下のとおり。

あけましておめでとうございます! 今日からBOB DYLAN日めくりカレンダー・スタート! 本日2017年1月1日より、Bob Dylan日本限定企画スタート! 「Bob Dylan Daily Calendar 2017」
日替わりでBob Dylanの楽曲を当時の貴重な写真と共に振り返っていきます。世界が認めた珠玉の詩(ことば)たちを再度皆さんで振り返りませんか? http://dylancalendar.com/ である。

記念すべき1月1日のタイトルは、「Like a Rolling Stone」だ。1965年7月20日にシングルとしてリリースされ、アルバム『追憶のハイウェイ61』(1965)に収録された。
2日は「Blowin' in the Wind」。ボブ・ディランのセカンド・アルバム『フリーホイーリン・ボブ・ディラン』(1963年)に収録。
3日は、 1965年リリースのアルバム『ブリンギング・イット・オール・バック・ホーム』から「Subterranean Homesick Blues(サブタレニアン・ホームシック・ブルース)」
4日は「Lay,Lady,Lay(レイ・レディ・レイ)」。'69年のアルバム『ナッシュヴィル・スカイライン』の中の一曲。
5日は、1973年のサウンドトラック・アルバム『ビリー・ザ・キッド』に収録、シングルとしてリリースされた「"Knockin' on Heaven's Door"(天国への扉)」。
6日は、「I Want You(アイ・ウォント・ユー)」。アルバム『ブロンド・オン・ブロンド』(1966年)の中にある。シングルリリースされた。
7日は、「All Along the Watchtower(見張塔からずっと)」だ。1967年発売のアルバム『ジョン・ウェズリー・ハーディング』に収録された。

ノーベル文学賞授賞記念なのか、今回の企画の真意は定かではないが、写真と共に、詩人としての側面を強調し、その長い芸歴を振り返るということなのだろう。音楽ダウンロードもできる仕掛けなので、ソニーミュージックの商業主義が垣間見えるが、それはそれで致し方ない。ディランは、ライブ中心の考えを持ち、アルバムはその証拠に過ぎない人なので、今回の企画でその作品に興味を持ってもらえればよいのではないか。ディランの詩は日本語訳でも難解なので、よく分らない曲も多い。
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日めくり「おかげさん」

2017-01-02 | book
書家で詩人、相田みつをを知ったのは、2015年の2月放映の日曜美術館。そこで鮮烈な生きざまに感動し、いわゆる「人間だもの」シリーズに代表される思想に共感し始めた。本も買い、さまざまな作品に触れることができた。平易な言葉のなかに、禅(曹洞宗・道元の著「正法眼蔵」)の心に裏打ちされたメッセージを我々に提供してくれる。

1924年大正13年栃木県生まれ。1991年、平成3年に67歳で亡くなった。この書体も当初は古典書道で有名になったが、その後、平易な独特の味のある書体に変って行く。1984年昭和59年、詩集「にんげんだもの」出版した。前向きで、あきらめない心を、私たちに温かく鼓舞する言葉たちは、日々の暮らしの糧となっている。

今回、購入したのは日めくり「おかげさん」だ。その言葉が31の日めくりとなって現れる。生誕90周年記念発売だそうだ。掲出しているのは、トイレだ。1日の始まりを、1人で穏やかに過ごせる場所。自分を見つめることができる場所に掲示している。朝、起きてトイレに行ける幸せ。毎朝、この日めくりをめくり、相田作品に出合える幸せ。失礼かなと思いつつ、一日始まる時に、一人静かに自己を見つめる場所はここしかない。

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ディランのノーベル賞と新年を迎えて

2017-01-01 | music/classic
そして、4回目のチャンスが、今回のノーベル文学賞だ。購入したのは2冊の本。2013年刊行、湯浅学の岩波新書「ボブ・ディラン‐ロックの精霊」


と2014年刊行「ボブ・ディランは何を歌ってきたのか」だ。


前者は、生まれてから今に至る遍歴と発表アルバムを組み合わせた。後者はディスコグラフィーだ。

新年の幕開けに、ディランの人生を読む。そして、この1年、ディランの音楽とともに過ごしてみるのもよいのではないだろうか。

15歳ほど年上の人生の先達だ。フォーク、プロテストソング、フォーク・ロック、ザ・バンドとの共演、ブルース、カントリー。時代は変わろうとも常に今を生きてきたディラン。それぞれの年齢に自分を投影する。冒頭の写真は、2001年のアルバム「Love and Sept」。ディラン60歳、還暦の作品だ。

The answer is blowin’ in the wind

そう、いつの時も、どんな境遇でも、その答えは風の中だ。自分で決めるしかないのだから。
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