パンダ イン・マイ・ライフ

ようこそ panda in my lifeの部屋へ。
音楽と本、そしてちょっとグルメなナチュラルエッセイ

バカ論

2018-07-29 | book
ビートたけし。漫才ツービートで一世を風靡し、テレビ、ラジオ、映画監督までこなし、小説「アナログ」も執筆した。1947年、昭和22年生まれの71歳が、自らをお笑いバカと認めながらも世の中のバカを切る。「バカ論」は、2017年10月発刊。11月には4刷だ。

数々のインタビューを重ね、ものを言う「バカなことを聞くなんじゃない」と。インタビューする方も勉強しろ。
多数決の危うさ。多数決で決めることを信用するな。残りの1人になる勇気を持て。一億総活躍社会の危うさ。
人生相談編。若い奴らの「やりたい仕事がみつかりません」には、身の程を知れ。やりたくてもそれに伴う実力がないだけだ。周りの大人もいけない。夢をあきらめるな、なんていうもんじゃない。老後をどう過ごせばよいかには、答えは一つ。死ぬのを待てばよいだ。社会にとって必要なくなるから老後なのだ。孤独死が心配だ。人間は一人で生まれ、一人で死ぬ。

人生訓。金はあげても貸すな。ギャンブルで余計な運をつかいたくない。どんなときでも芸人根性。バカだと言われて喜ぶ商売。失敗と成功は背中合わせ。大失敗が成功に。その逆もあり。失敗してみないとわからないこともある。結果論で受け入れ、今ある自分を良しで、しょうがねえなあで始めよう。人生は一回経験すれば十分だ。人生の最後に一番やってみたいのは死ぬこと。

バカにも良いバカと悪いバカがある。一番たちが悪いのは、自分がやっていることがバカだとわかっていないバカ。芸人はバカであることが武器になるが、社会全体がバカになると困る。日本という国は、社会全体がバカ踊りしちゃうから油断ならないと。

何がバカで、どのようにしてバカが生まれるのか考えてほしいと著者。自分というものをしっかりと持ち、周りをきちんと見ながら生きている。怖いものはないたけしの生き方、生きざま。
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架空の犬と嘘をつく猫

2018-07-22 | book
1977年生まれの寺地はるなの新刊「架空の犬と嘘をつく猫」を読んだ。新聞書評から。2017年12月刊行。

佐賀県のある街を舞台に、家族の崩壊と新生、個々の成長と死を描く。心情を吐露し、もがきあう若者、壮年、老人たち。

小学3年生の羽猫山吹が主人公。家や両親に反発する二つ年上の姉の紅。山吹の弟が事故で死に、その苦悩を背負う母親。浮気を続ける父親。
中2の山吹。高校受験を控え、塾に行きだす。そこで塾の先生の姪、一つ上のかな子と出会う。かな子は故合って母親と別れて暮らしていた。
19歳、専門学校の山吹。バイト先で頼という山吹と同じ年の女の子と出会う。
印刷会社に就職した山吹。頼と児童施設に慰問に行く。
28歳の山吹は頼との結婚を決意する。行方不明の姉、紅の居場所がわかる。
34歳の山吹は、会社が倒産してしまう。子どもができないことを悩む頼。祖母の死。山吹を頼ってくるかな子。そし、葬式にやってくる紅。
39歳の山吹はバイトをしながら童話の懸賞に応募していた。ついに本が出ることになる。遊園地に行こうという父。母、紅、そして頼と5人の家族が出会う。

人は家族の中で成長し、個人として歩みを始める。苦痛でも居心地がよくても家族は選べない。やがて、家族の殻を破り、個があるのみとなる。成長には家族は責任をとってはくれない。自分で生き抜くしかない。しかし、絆は死ぬまで絶えない。そして、家族は年を重ねて変化していく。死があり生があり、喪失と加入がある。家族と個人、人生を考えさせられた作品。
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家族のあしあと

2018-07-16 | book

「岳物語」で、息子の成長と子離れを書いた椎名誠が、今度は、自ら自分の幼少時を書いた「家族のあしあと」を読んだ。2017年7月刊行。月刊文芸誌に2015年から2017年まで連載されていた。自分の父や母、兄弟、小学校時代の出来事。

世田谷の大きな邸宅に住んでいたが、小さい頃、千葉の山間に転居し、次に海辺に転居する。父は会計士であった。後妻に入った母親に4人の子供。自分は下から2番目だった。

怖かった父と能天気な母、そこに集う親戚や近所の人たち。異母兄弟との食卓。海部屋の山を走り回り、いたずらもしながら、大人の世界も垣間見た子供の頃の思い出。大勢の人たちとの生活も徐々に一人一人いなくなる。

椎名はいう。「家族というものの絆のあやうさ」がこの連載の動機だった。子どもの頃の大家族。そして結婚して、子どもができて成長し、そして今は夫婦二人。家族全員で顔を合わせる時間はわずかなもので、残されるのは記憶だけなのだという。

私の父も母も6人兄弟。小さい頃の思い出は伯父(叔父)や伯母(叔母)、そして多くのいとこたちとの限られた時間の中での思い出だ。正月、夏休み、法事など、訳も分からず父や母についていき、また、來家があり、交流があった。そして、時の流れとともに、一人、また、一人、お浄土へと向かわれていく。

1944年生まれの椎名は、岳物語が1985年発刊。2018年の今は74歳。
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ふたご

2018-07-15 | book
2010年デビューの人気バンド、SEKAI NO OWARIでピアノを担当する女性、藤崎彩織の小説デビュー「ふたご」を読んだ。2017年10月刊行。

この本の完成に5年を費やした。

中2の夏子は、中3の月島と付き合いだす。それは、恋人、友達、それとも話し相手。そんな二人が高1と中3になる。月島は、心と体に変調をきたし、高校を中退。そして、アメリカ留学を試みるも、2週間で帰国してしまう。そして、入院。音楽の高校に進んだ夏子。2人の会話で小説は進む。後半は壮絶なバトルだ。

2部は、月島と友達の矢部ちゃんらとバンドを組むことに。皆でお金を出し合い、練習場を確保する。そして、いよいよデビューかというところまでたどり着く。

この小説を書くのもバトルだったという。精神を吐露することは大変なこと。その精神の根本となる人間関係は大変。グループはさらに緊密で濃厚だ。切磋琢磨というが、並大抵の努力ではないと想像する。
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レイモンド・チャンドラーの世界(2) Farewell,My Lovely

2018-07-08 | レイモンド・チャンドラー
レイモンド・チャンドラーの長編2作目。1940年に発刊された「Farewell,My Lovely」(さよなら、愛しい人)だ。2009年4月に村上春樹が翻訳出版した。

フィリップ・マーロウが、偶然出会った大柄な前科者、マロイ。彼は誰かに密告され8年間刑務所に入って、出所してきた。そして、以前、この店で働いていた歌手の恋人のヴェルマを探していた。そんな時、マーロウに、ゆすりやマリオットから、ある金持ち夫人の翡翠のネックレスが盗まれ、強請られているから一緒についてほしいと依頼が入る。しかし、マーロウは殴られ、マリオットは殺された。そこに現れた元警察署長の娘。

個性的な登場人物も、前作通り魅力的だ。ヴェルマが働いていた店の経営者の妻のアルコール中毒のフロリアン。隣人のお節介婆さん。あやしい霊能力者や医者、地元警察の個性的な警官たち。海上の賭博場のボス。有能なロスアンジェルス中央警察署のランドール。

殴られ、たたかれ、薬を打たれても、タフガイぶりを示す、マーロウ。そして、取り巻く女性陣たち。

生き延び、マロイの居所を探しに、海上の賭博場へ赴くマーロウ。マーロウはマロイに会うことができるのか、また、マロイが探していたヴェルマは生きているのか。最後の大団円が息をつかず訪れる。圧巻だ。また、2回、連続で読んでしまった。

村上は、チャンドラー作品を翻訳していた日々を充実していたと語っている。自分の創作活動も行いながら、少しずつチャンドラーの世界に浸ることができた。チャンドラー作品のない人生と、ある人生では、確実にものごとが変わってくるとも。
チャンドラーの三冊に、「大いなる眠り」「ロング・グッドバイ」、そして、この「さよなら…を」挙げるだろうと。

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レイモンド・チャンドラーの世界 The Big Sleep

2018-07-01 | レイモンド・チャンドラー
The Big Sleep。「大いなる眠り」。

チャンドラーが1939年、51歳の時に出したミステリー、推理小説の長編小説第1作。初めて2回連続で読んだ。最初は登場人物がなかなか理解できず、筋書きも難解。骨太で、修飾語が多いため、読むのに一苦労だった。しかし、その修飾語が、それぞれの登場人物を魅力的に際立たせる。新聞小説のように各章にきちんと山があり、それぞれに緊張感がある。だらだら、飽きさせない。2回目は楽しく、合点のいく中身だった。

33歳の私立探偵、フィリップ・マーロウのタフガイぶりが魅力なのはもちろん、登場人物たちがいい。
マーロウに仕事を依頼した老いた将軍。その将軍が50代に授かった小悪魔的で奔放な20代の2人の姉妹。妹を慕う、将軍家の雇われ運転手の若者。娘(妹)の借金をかたに将軍を脅迫する怪しげな書店主とその書店に勤める魅惑的な女性と書店主の同居人の男性。強請り屋。将軍の長女が通うカジノの経営者。マーロウに情報提供をする小さな男。カジノの残忍な用心棒。そして、マーロウの元上司の検事。悪徳たちと裏で通じている地元警察。カリフォルニアのロスアンゼルスを舞台に、怪しげな人々がうごめく。その中で、自由に大胆にすり抜けるマーロウの活躍。映画化もされた。

出版されたのは1939年、昭和14年だ。日本では1956年に翻訳された。この大いなる眠りの翻訳は毎年ノーベル文学賞候補で騒がれる村上春樹で、2012年12月刊行。村上は、それから半世紀以上経てチャンドラーの長編作品群を世に出した。最初に2007年にThe Long Goodbye。そして2017年にThe Lady in the Lakeで、全7作品を翻訳した。

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