パンダ イン・マイ・ライフ

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音楽と本、そしてちょっとグルメなナチュラルエッセイ

天に遊ぶ 吉村 昭 61

2019-12-01 | 吉村 昭
原稿用紙10枚程度の短編を21篇集めた「天に遊ぶ」(平成11年(1999)発刊)を読んだ。夫婦や男女の絆や縁などを通じ、人生の断片を語る。
「短編を書くのがこんなに楽しいとは思わなかった。天空を自在に遊泳するような思いで書き続けた」という。短くもそれぞれ人の寂しさを感じさせる吉村節を堪能アレ。

取材で訪れ、天明の飢饉の文書に、後に書いて貼った鰭紙(ひれがみ)を通し、今とつながる機縁を書いた「鰭紙」
後輩の後添えの話。美人のお相手の同居人とはだれか。「同居」
取材で訪れた農村。帰りに警察に尋問される。「頭蓋骨」
作家の葬式に現れる老婆。葬儀場に緊張が走る。「香奠袋」
戦時中の思い出。お妾さんと2人の子供。「お妾さん」
桜田門外の変の現場責任者の水戸浪士の関鉄之助の病気を探る。「梅毒」
50過ぎの川瀬が別れた妻、君枝に喫茶店に呼び出される。川瀬の同僚の年下の男に求婚されたという。吉村にはめずらしい艶のある作品。「西瓜」
子どもの頃、一時期共に暮らした男と親戚の葬式で出会った。彼は、小さい頃謝って弟を殺していた。「読経」
大津事件で国賊と呼ばれた津田。彼の遺族を取材で訪れた。「サーベル」
半年前に定年退職した浦川は、妻の伯父が亡くなり葬式に行こうとしていた。妻が悔やみから帰ってきた。恋愛結婚だった伯母に伯父の死を伝えると。「居間にて」
大学時代の友人の家が強盗に遭った。友人との共犯を疑われた私は、警察に出頭する。「刑事部屋」
獣医の磯貝は、肺がんの犬を治療する。「自殺」
パトカーが磯貝の病院にやってきた。心中の片方が犬だった。「心中」
戦時中の思い出。「鯉のぼり」。出征中の父に代わり孫と暮らす祖父。その小学生に入って間もない孫がトラックに轢かれて亡くなる。
従妹の芳恵が男と行方がわからなくなって数年。ある町にいることが知らされる。面会を頼まれ向かった町。「芸術家」。
戦時中の思い出。「カフェー」。煙草屋の主人と自転車屋の2階に越してきた男。その男に誘われてカフェーに出入りするようになった主人。
「鶴」。同人誌の仲間の54歳の死。葬式に行く私。仲間が作家をあきらめた25歳も年上の同居の女性と会う。
「紅葉」。終戦後、冬には閉じる湯治場での出来事。隣部屋の男女の営み。男は殺人で捕らえられる。
「偽刑事」。八丈島での取材。飲み屋で、ある男を刑事だと嘘をつく。その嘘に苛まれる。
「観覧車」。2度の浮気で妻の玲子と別れた島野。月に1回の一人娘との面会で、玲子への思いが募る。男の性(さが)
姉が病気で亡くなった。その葬式に昔、姉と結婚を誓った久保田が現れる。「聖歌」。

「鰭紙」から「偽刑事」19篇は1997年1月号から翌年7月、「観覧車」は1996年1月、「聖歌」は1999年4月に掲載。


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