パンダ イン・マイ・ライフ

ようこそ panda in my lifeの部屋へ。
音楽と本、そしてちょっとグルメなナチュラルエッセイ

死ぬのが怖いとはどういうことか

2013-04-29 | book
大学教授の前野隆司(まえのたかし)が書いた『「死ぬのが怖い」とはどういうことか』を読んだ。今年の1月発刊。ロボットと人間の心についての著作が多いという。1962年生まれ。心の哲学の探求者だ。

なぜ人は死を怖がるのか。死後の世界を誰も知らない。今よりいい所かもしれない。人は心を持つ動物が故に苦しむ。
今を失うのがいやなのか。でもいずれは人は死に、周りの人からも忘れ去られてしまう。記憶に残るのもせいぜい60年ぐらいなもの。ましてや、人は過去や未来を共有できない。今しかないのだ。

今を生きる術が、死を恐れないことだ。禅や浄土真宗のことにも触れる。仏教は死後の世界感ではなく、今の世界感なのだと。今を生きること、生き抜くことに全力を傾注する。人はいつ死ぬかわからないのだから。

心を科学と宗教、哲学をからめて分析した人生の指南本。
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死んでも負けない

2013-04-28 | book
古処誠二(こどころせいじ)は、1970年(昭和45年)生まれ。ウィキでは、戦争を描き続ける異色の作家とある。その作品『死んでも負けない』を読んだ。2012年12月発刊。

ビルマで戦争を体験した祖父と高校2年生の孫の交流を描く。16歳の哲也、父46歳の道也、専制君主の祖父の武也は三人で暮らしている。武也の日々の生活には、常にビルマの戦争体験があり、それが物差しになり、小笠原家がある。その武也が、日射病で倒れた。看護婦の川島佳代さん、哲也のガールフレンド、京子ちゃんに諭される姿は、なんとも人間味がある。道也も哲也も結局、生活に不満はあっても、その生活にどっぷりはまっている。

子は親を選べないし、親は子を選べない。戦争体験が風化している中で、「申し訳ありません」とうわ言をいう祖父の姿はなんともいたわしく思えた。

月刊の推理小説雑誌に連載されていた。淡々とした文体、ホームドラマを見るような家族のほのぼのとした景色。これがまた、古処の魅力なのか。
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「JAMJAM日記」

2013-04-21 | book
今年、10年日記を購入したが、その日記が本になる人がいる。殿山 泰司(とのやま たいじ)の「JAMJAM日記」だ。1977年12月刊行。殿山は、大正4年(1915年)生まれ。 - 平成元年(1989年)に73歳で亡くなる。50代以上の人なら、本のカバー写真を見れば一度は見たことがある名脇役だ。だみ声とスキンヘア、トレードマークのサングラスの奥のぎょろっとした目は一度見たら忘れられないはずだ。

この名脇役が、昭和50年代初頭、1975年11月から1977年3月までの暮らしを日記として綴った。自称、三文役者(殿山)が、東京や京都で映画やテレビに出演する傍ら、その空き時間を利用し、移動の電車や万年床でとにかく古今東西のミステリーを読みまくる。そして、数々の映画を楽しみ、フリー前衛ジャズのライブ漬の毎日を描いた。

出てくる映画やテレビの題名、俳優の名前が懐かしく、たくさんのミステリーも紹介される。銀座や新宿、赤坂、浅草の映画館やジャズのライブハウス、本屋の名前など、往時を知る人にはたまらない魅力であろう。これらを批評する、自虐的な文章(ヒヒヒヒ)が小気味のよく、リズミカルで読者を飽きさせない。

戦前から出演した映画は3000本以上だといわれる。昭和30年代からはテレビドラマに出演した。ウィキペディアに出演作品一覧があるが、よくこれだけ調べたものだと関心するほど。タイトルだけでも知っている作品が多々あるのに驚く。

どこでこの文章が書かれたのか。タイチャンは電車か喫茶店、万年床でノート片手に執筆したのであろう。それにしてもタイトルの「JAMJAM」とは何のことだろう。多分、音楽用語で即興のかけあいを意味するJAMなんだろうな。まさにその日限りの役者稼業が、暇に任せて、つれづれにその日々を描いた作品なのだ。破天荒な人生と、その余白を埋めるように、ミステリーや映画やジャズにのめり込む日々がすさまじい。
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ハナミズキ咲く

2013-04-20 | life
今年もハナミズキが咲いた。きれいな白と緑のコントラストが鮮やかだ。

ハナミズキは北アメリカが原産で、なんと1911年に当時の東京市長がアメリカのワシントンに日本が贈ったサクラの返礼として、1915年に贈られてきたのが始まりという。

春の強風にあおられても、凛としている姿がよい。



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64

2013-04-14 | book
横山秀夫の『64(ロクヨン)』を読んだ。2012年10月刊行。3ヶ月後の1月には6刷という驚異的な人気。昨年10月に図書館にリクエストしたら来年の3月に順番が回ると言われ、2月に順番が回ってくると、後には59人待ちだという。1957年生まれなので、同年代。『半落ち』『クライマーズハイ』などで人気のミステリー作家だ。

64とは昭和64年。1月1日から7日までの1週間あった昭和最後の年。14年前のその年に起こった少女誘拐殺人事件、「ロクヨン」。その未解決事件をD県警の話。

46歳の広報官三上は、匿名報道で、県警記者クラブとの軋轢にもまれる。そこに起こった、県警生え抜きトップ警務部長ポストの本庁天下り騒動。警務部と刑事部の軋轢のすごさ、組織のむごさ。
未解決事件を名目ににかかわる本庁からの天下り人事のために訪れる警察庁長官のD県警来訪。その前日起こる少女誘拐事件。三上の高校3年生の娘の家出もからみ、緊張感とストレスで胃が痛くなるような心理戦が繰り広げられる。
647ページを片時も離せないほどのスリリングで、次々と送り出させる次の一手。最初の1ページから最後まで目が離せない。久々に寸暇を惜しんで読んだ。読後の清涼感を味わうために、しばらく苦悩とともに過ごそう。
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はじまりの物語 吉村 昭 49

2013-04-07 | 吉村 昭
久々の吉村昭です。48冊目となる今回は、執筆のため氏が収集した膨大な資料から、その事始について触れた『事物はじまりの物語』。2005年1月刊。
何事にも始まり、それを起こした人がいる。日本に伝わり、今を作り上げた。もう見ないものもあれば、現在まで息づくものもある。取り上げたのは、解剖、スキー、石鹸、洋食、アイスクリーム、傘、国旗、幼稚園、マッチ、電話、蚊帳・蚊取り線香、胃カメラ、万年筆の13品。氏のクールでタイトな文体がなつかしく、足で稼いだ氏の地道な取材が思い浮かばれる。各編ごとに挿入された挿絵も楽しみ。江戸から明治にかけて、まさにフロントランナーが起こした文化の一端。
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