パンダ イン・マイ・ライフ

ようこそ panda in my lifeの部屋へ。
音楽と本、そしてちょっとグルメなナチュラルエッセイ

蕪村と芭蕉 萩原朔太郎

2021-02-28 | book
萩原朔太郎は、近代、明治から昭和にかけての詩人である。その朔太郎が、俳人の蕪村や芭蕉論を展開する。「郷愁の詩人 与謝蕪村」を読んだ。
朔太郎は、明治19年1886年生まれ、昭和17年1942没。

本書は、昭和11年1936に初版。文庫収録は、1988年、昭和63年第1刷、購入したのは、2019年6月の30刷だ。平均すると1年に1回増刷している計算だ。まさにロングセラーだ。

詩人の朔太郎は、俳句の枯淡と寂び、風流という馴染めず、俳句を毛嫌いしていたが、ただ、蕪村は唯一、好きであったという。
そして、正岡子規により提唱された俳句革新の指標としての蕪村に論及する。そして芭蕉論も展開する。

正岡 子規は明治維新の前年、1867年(慶応3年)9月17日生まれ。1902年〈明治35年〉9月19日没だから、朔太郎は、子規の20歳余り下になり、子規が亡くなった時には、朔太郎は若干16歳であった。

収録されている「郷愁の詩人 与謝蕪村」は、昭和8年(1933)、9年(1934)、10年(1935)と発表された。このタイトルのとおり、朔太郎は、俳句は抒情詩、ポエジイ(フランス語で詩)であり、そこに主観が存在するという。

「蕪村の俳句について」で、蕪村を再評価する。単なる写生主義者、単なる技巧的スケッチ画家ではないと。蕪村は、強い主観と、痛切な思慕を歌った、真の抒情詩人であり、真の俳句の俳人であったとする。
具体の例句、春35句、夏22句、秋15句、冬19句の計91句でそれぞれの鑑賞を踏まえ、その論証を行う。
次に、蕪村の俳詩「春風馬堤曲」(発表不詳)で、解説・鑑賞を。
また、付録として、「芭蕉私見」(昭和10年(1935)、11年(1936)発表)で、芭蕉の句18句を挙げ、論評を重ねる。芭蕉は、その生涯を旅で暮らし、そして自然と人生を語るヒューマニストの詩人だと。

蕪村は1700年代、芭蕉は1600年代だ。いずれも古典俳句だが、それを批判するのではなく、それぞれの特徴を分析し、その魅力を伝える。その生涯を旅で暮らした芭蕉。在宅で作句にいそしんだ蕪村。いずれの作品も今に通じると朔太郎はいうのだ。

掲載された評は、いずれも1930年代に発表されたものだ。2020年代の80年を過ぎた今、その文体と中身は今でも色あせず、新鮮で鋭い。近代詩人が、古典俳句を論ずる魅力は尽きない。
芭蕉を音楽的詩人、蕪村を絵画的詩人であり、2人とも叙情詩人であったという。そして、正岡子規を真の叙情詩人ではなかったとも。
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蕪村と芭蕉 飯田龍太

2021-02-21 | book
飯田龍太(平成19年2007年87歳没)の「龍太俳句入門」(初版は令和2年2020年4月。平成22年2010年刊行の「俳句は初心 龍太俳句入門」を再編集)の第1章「俳句の特色と魅力」の「才智の甘えを捨てる」で、芭蕉と蕪村の比較論がある。

松尾芭蕉は、17世紀、江戸時代前期の俳諧師。寛永21年(正保元年)(1644年)~元禄7年(1694年)。与謝蕪村は、18世紀、江戸時代中期の日本の俳人。享保元年(1716年)~天明3年(1784年)。

龍太は、秀句では、蕪村。20句30句の名句では、芭蕉とするものの、才能の多寡では蕪村に軍配を上げる。しかし、龍太は芭蕉を、晩年の貞享(1684年から1688)から元禄(1688年から1704年)の10年間に秀作を次々と生み出したとし、「ひたすら努力に努力を重ねて前人未到の高度を極めた」「才智の甘えを捨てて、真の才能をつかみ取った人だ」と。つまり龍太は、才能はないよりもあったほうがよいが、才能を信じるよりも努力に頼ったほうが立派な俳人になる近道だという。

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ホームズの娘

2021-02-14 | book

2019年9月文庫描き下ろしで刊行。横関大のルパンシリーズ第3弾「ホームズの娘」。あきさせない、そして軽快でスピーディーな展開を期待して。

前回までのストーリーを踏襲し、相変わらずの桜庭家、三雲家の面々。そして、華の伯母、玲の存在が気になる。
警視庁捜査一課に北条美雲(24歳)が配属されて5カ月たった。冒頭から殺人依頼のシーン。品川区の住宅街で殺人事件が起きる。飲食店経営の妻が殺され、殺人の夜、夫にはアリバイがあった。税理士の女性のマンションにいたのだ。税理士は和馬の高校の同級生だった。三雲は、華の兄、天才ハッカーの渉35歳と交際を始めた。渉との結婚に向け着々と話は進む。

殺人事件は、三雲の推理で交換殺人と判明。しかし、その犯罪を売った人物がいた。その名はモリアーティ。ホームズのライバル、犯罪者の名前だった。

三雲は、渉との結婚を認めてもらうために京都の実家に行く。しかし、太郎は無理だと告げる。
渉は、警視庁のハッキングで宗太郎と盛り上がる。そして帰りの新幹線の中で、渉と美雲は、渉の両親尊と悦子に出くわす。父の尊は、美雲に結婚をあきらめろと言う。しかし、渉と美雲の恋は激しさを増す。
今度は渋谷区で不動産経営の70歳の男性が殺される。美雲は37歳の元ホステスの妻があやしいと考え、和馬と独自の調査を始める。この女性もモリアーティから計画を買っていた。そして、和馬にモリアーティから電話がかかる。モリアーティからの3つの挑戦状だった。モリアーティとはだれか。数馬と美雲は、挑戦を跳ねのけることができるのか。

美雲と渉の恋の行方。華と数馬のぎくしゃくした関係。そして三雲玲の存在。

大団円まで息も切らせぬスピーディな展開。仕掛けらた様々な伏線。三雲家、北条家、桜庭家の人々。オールスターキャストで贈る第3弾。おもしろい。

まず、指定されたアパートで見つけた女性の死体。明日の正午までに遺体はだれかを知らせろと。数馬と美雲は、詐欺グループのリーダーで、最近仮出所をし、行方をくらました間宮礼子だと突き止める。

そして第2問目。次はだれが殺され、なぜ殺されるかだというのだ。期限は明日の正午。ヒントは「タカスギリュウヘイ」だとモリアーティは告げる。
間宮礼子を31年前に逮捕した警察官の一人が、高杉竜平。高杉は逮捕時に間宮の銃弾に倒れた。そして、もう一人が刑事部長の磯川武治だ。
美雲は、渉に頼み、警察のデータから高杉竜平の情報を手に入れる。
差出人不明で、華に贈られた数馬と中村亜里沙とのツーショットのDVD。誰が何のために。
怪しげな数馬の動きに、美雲は、それが華と渉の父、尊の姉、三雲玲の偽名、間宮礼子だと突き止める。三雲家の秘密を突き止める。数馬は美雲に提案する。モリアーティの秘密を明らかにする代わりに三雲家の秘密は口外しないと。
数馬と美雲は、高杉の弟で警官の直也から、兄の秘密を聞き出す。
そして3問目。4時間後に数馬の大切な人が2人亡くなるというのだ。それを防ぐのがミッションだと。
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ルパンの帰還

2021-02-07 | book
1975年生まれの推理小説作家の横関大(よこぜき・だい)のルパンシリーズ第2弾「ルパンの帰還」を読んだ。2019年7月刊行。
警察一家の警察官、桜庭和馬と、泥棒を生業とする三雲一家の長女、華との生活を軸に、前作同様、展開が息も切らせぬスピーディー。登場人物も個性的で賑やかな推理小説となっている。

和馬は33歳、華は書店員で30歳になった。2人の間には杏という3歳の娘がおり、既に人のものをとってしまう癖があり、華を悩ませている。相変わらずの桜庭家と三雲家の面々も心地良い。

今回は、警視庁で和馬の元に配属された新人刑事、京大法卒の女性刑事、北条美雲(三雲ではない…)が登場する。それも、実家の京都では有名な探偵事務所を営んでおり、祖父は昭和のホームズ、父は平成のホームズといわれる名探偵という設定だ。美雲を見守る執事兼秘書の60歳の山本猿彦の存在もいい。

次々と起こる事件に、和馬と美雲は挑んでゆく。

早速自宅マンションから飛び降り自殺をした歌舞伎町のキャバクラの事件をかいけつした美雲。そして、法務省のエリート官僚の自宅での殺人事件。次には、杏が通う保育園の親子遠足のバスジャック事件。法務省のエリート官僚の死と法務大臣の孫がいる保育園のバスジャック事件。そして、世田谷で元検事が殺される。そして、直後に30年前の詐欺殺人事件グループ5人の無期懲役者が仮釈放になる。そのうちの一人、主犯格の女性が姿をくらました。犯人の目的は何か。3つの事件の関係は。当時逮捕した警官が今は刑事部長になっていた。その車が講演先で爆破される。そして、華と杏が、保育園の運転手に家まで送ってもらうことになる。そして、クライマックスを迎える。次回への展開を予測させるおまけつき。そして美雲が恋に落ちた?。
相変わらず、息つく暇もないスピーディな展開が魅力。

その間、杏の4歳の誕生日を巡る両家のトラブルが勃発。三雲家が桜庭家に絶縁状を言い渡す。
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