パンダ イン・マイ・ライフ

ようこそ panda in my lifeの部屋へ。
音楽と本、そしてちょっとグルメなナチュラルエッセイ

ずっこけそこない話

2015-10-25 | book
佐賀市に住む96歳の作家,というか物書き草市潤のずっこけそこない話を読んだ。新聞書評から。何気ない毎日の日記を綴る。2014年11月刊行。

朝,6時に起き,8時に万年筆を握り,せんべいをかじりながら机に向かう。家では手押し車の生活。数年前に妻は亡くなり,午後は,片道2時間かけて,ブリジストン製の前2輪,後ろ一輪の3輪車をこいで佐賀駅に向かう。雨なら行けない。買い物や本屋を訪ね,行き帰りには街並みや人,四季の移ろいなどと出会う。そんなことを題材に13年11月から14年6月までの日記だ。

100歳近くになっても,自分で食べ,排泄できることの素晴らしさ。そんな中で自分と向き合う時間を持ち,外に出て刺激をもらい,それを文にする。日々感謝の心にあふれ,温かいゆったりとした時間が流れる。何時まで生きながらえるかわからないが,こんな老境の境地がうらやましい。いつになればこんな境地になるのか。努力すればできるのだろうか。
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桜の下で待っている

2015-10-18 | book
彩瀬まる。1986年生まれの女性作家。人の心を上手く表現し,今を生きる若者の生態を同身代で表現する。感性がほんとうに豊かな人だと思う。
家族とは何か。東京の暮らしと田舎の家族。そんな若者の生態を5つの短編で鮮やかに描く。「桜の下で待っている」は2015年3月初版。5月に第3刷だ。

モッコウバラのワンピース
19歳の大学生の智也は千葉に生まれ育った。宇都宮にいるおばあさんに会いに新幹線に乗る。おばあさんは周囲の反対を押し切り,老いらくの恋を実らせた。しかし,その夫は不慮の事故で先立つ。智也も1年上の先輩,心美との付き合いに悩んでいた。

からたち香る
30歳に手の届く律子と許嫁の由樹人。律子は由樹人の実家,福島の郡山へ新幹線であいさつに向かう。由樹人の家族に温かく迎えられるも,福島(フクシマ)に不安を抱く。新しい家族との出会い。東京での2人の暮らし。不安と期待。そんな微妙な感情のひだ。

菜の花の家
母の3回忌。仙台へ新幹線で向かう武文30歳。故郷で家を継ぐまだ,子どものいない長兄の鷹夫,姉の淑子はバツイチ。そんな親戚の集う法事のひと時。姪と訪れたアンパンマンこどもミュージアム,そして伊達家の御墓で偶然に武文は中学時代の同級生の女子と出会う。

ハナモクレンが砕けるとき
小学生の高学年の知里は伯母の結婚式に両親と新幹線に乗り,花巻へ出かける。おばあちゃんの家に泊まる。でも仲が良かった低学年のみどりちゃんは交通事故で死んでしまった。宮沢賢治の童話村。家族のきずなと,それを知らずに旅たった幼い子。

桜の下で待っている
さくらは29歳,新幹線で土産を売る20代前半の車内販売員だ。成人なりたての頃,両親は離婚。5歳年下の弟,柊二がいる。結婚のことで相談に来る柊二。自分にとって家族とは何なのか。そんな彼女に訪れた合コン。東京暮らしで楽しみなアパートから見える東京タワー。

新幹線の出会いが1つの軸。日々に格闘し,生きる若者たち。いずれも日々の暮らしで訪れるちょっとした出来事に戸惑いながらも,正面から受け止め,生きていく姿に共感する。
家族とはどんな存在か。生きるってこんなことだよなと思わせる心温まるいい作品群です。



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御宿かわせみ(20) お吉の茶碗

2015-10-12 | 御宿かわせみ
御宿かわせみ20冊目 お吉の茶碗 1995年4月

花嫁の仇討」
中津川から江戸に出てきた木材商日ノ木屋の女房おさだと娘のおたかが良い嫁ぎ先を探すためかわせみに泊まる。
上野で出会った仲人医者の鶴田典庵が間に入り,浅草の口入屋辰巳屋利兵衛の倅久松を紹介する。
辰巳屋の思わしくない噂を聞き,東吾は源三郎に相談を持ちかける。
源三郎と東吾は結婚に反対するが,おたかは決心したという。
姉さん思いの妹の仇討顛末。
お吉の茶碗」
大安売りの季節がやってきた。お吉は深川の骨董屋から一箱1両で買って来た。その骨董屋に賊が入り,主人を殺し,帳面が無くなっていた。
東吾が調べると,盗品を扱っていたらしい。東吾の勘が冴える。
池の端七軒町」
池の端の小さな煎餅屋のおばあさんお源は,細々と煎餅を焼いていた。
昔は大店の煎餅屋だったが,早くに主人を亡くし,一人息子も相場に手を出し,自殺していた。
今は,孫娘のおひさと暮らしていた。おひさは口汚くお源をののしる毎日に東吾も腰が引ける。
そのお源が不忍池へ身を投げた。心配して小田原から甥の市五郎がお源を引き取りに来るが,おひさはお源を放さない。
祖母と孫で暮らすせつなさが身に染みる。
汐浜の殺人」
浦安の行徳の塩屋の多田屋総右衛門の内儀,おつぎ43歳がかわせみに泊まりに来る。誰かと待ち合わせをしていると話すおつぎが長じゅばんを手入れする姿にるいは誰が来るのか心配するが。
しばらくしておつぎの亭主の総右衛門がやって来て,おつぎを連れて帰る。
しばらくして,おつぎの弟と名乗る伝之助が横浜からおつぎを訪ねてかわせみにやって来る。
そして,総右衛門が塩田で殺された。おつぎと伝之助は血のつながりのない姉弟だった。
春桃院門前」
麻布の料理屋 涵月亭の仙右衛門には一人娘の18歳のお順がいた。仙右衛門の妾おすがは花屋を営み,お順の1つ下の娘おえいがいた。
先月仙右衛門が亡くなり,お順はおえいを引き取る。
よく似た娘がいる料亭は評判になるが,そのおえいと板前の吉三郎が心中をしてしまう。
そのお順に縁談があり,店を閉じることになっていた。おえいの母のおすがは,おえいは殺されたと申し出る。
お順の悲しい人生の顛末。
さかい屋万助の犬」
洋風の武器弾薬を扱う御用商人さかい屋は,深川に広大な屋敷を建てる。その接待に大工の孫助の娘手伝いに行ったきり,戻って来ない。そして,使いが5両で引き取ると孫助に伝える。
その頃,屋敷にいる巨大な犬が話題に上る。
怪盗みずがらし」
東吾は勝麟太郎に気に入られ,軍艦操練所で洋上にいることが多くなった。そんな時に江戸の富商を荒らしまわる怪盗みずがらしが暗躍していた。
その手口から長助がるいに相談をかける。家人が眠ってしまうこと,火をつけること,家人がひとり逃げ出していることなどから,その女中が怪しいと推理する。
かわせみの近くで,盗人火事があり心配になった東吾はかわせみに駆け付ける。
捕り物小町のるいの感が冴える。
夢殺人」
神田の菓子屋三春屋の末娘,おふじが殺される。おふじは神田の東竜軒の若主人,堀江平太郎の許嫁であった。
そのおふじは嫁入り道具を身に,かわせみへ来ていた。
その姉のお銀は殺しをする夢を見ると麻生宗太郎の知り合いの医者に相談していた。
三春屋の主人長兵衛と後妻の女房のお永が心中する。長兵衛の遺書に自分がおふじを殺したとあった。
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すぐれもの 20 ウオークと金木犀

2015-10-11 | すぐれもの
公民館でノルディックウオークの講座があり,申し込んだ。毎月第2日曜の朝,7時から1時間程度,公民館周辺を東西南北歩く。7月からの4回シリーズ。今日で終了した。毎回,15人程度が集まった。初回は真夏で水分補給も気を配っていただいた。Tシャツで参加したが,さすがに10月ともなれば長袖にジャンパーと言う出で立ちだ。館長さんや地域の皆さん数人と話ができるようになった。

初回は背中腰,腕に張りが出て,湿布するほど疲れた。ネットでは,ノルディックやポールウオークと紹介され,どうも,杖で後ろへ押し出すのか,前から後ろへなのか,よく違いがわかならい。ステッィクも握りやステックの底のつくりが違うようだ。

それでもなんとか続いたし,ポールも購入した。15分から始め,30分,45分と,歩く時間を延ばし,今ではなんとか1時間歩けるようになったし,力の入れ具合もようやく習得できたようだ。

そんな季節の移ろいの中で,ここ数日,家の周りで良い香りがしている。金木犀だ。うちの金木犀も咲いた。今年はスズメ瓜が,かわいらしい実をつけている。


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御宿かわせみ(19) かくれんぼ

2015-10-11 | 御宿かわせみ
御宿かわせみ19冊目 「かくれんぼ」1994年7月

マンドラゴラ奇聞」
横浜異人館で商売をしている横浜屋弥助というものがかわせみに泊まる。その弥助を探しに宗太郎がやって来る。人を狂わせる危険な人参を持っているという。
その弥助が殺される。持っていた荷を探しに東吾と宗太郎は横浜へ行く。ブラザ商会のイギリス人に襲いかかる唐人がいた。
花世の冒険」
宗太郎と七重に長男の小太郎が生まれる。注目の長男に比べて,少し寂しい花世は,一人でかわせみへ向かう。その頃,小さな子が誘拐される事件が起きる。
その事件を迷子になった花世が解決する痛快編。
本所深川の盛り場や岡場所の元締め,永代の文吾兵衛,倅の小文吾に助けられる花世の女親分が見もの。
残月」
深川の木綿問屋相模屋の娘,おきたは近江屋へ嫁いだが4歳の娘,おうのを残し,廻船問屋の隠居,五郎左を殺し,20年の刑を終えて,島流しから帰ってくる。
実家の相模屋は火事で家族もいなくなっていた。源三郎は父が関わっていたため,かわせみへ泊まらせてくれと頼む。
源三郎は,おきたの動機に不審を抱き,東吾は過去を調べ始める。子を想う母の執念。別れの波止場で娘をよろしくお頼み申しますと東吾にいうおきた。
かくれんぼ」
品川の滝川大蔵の茶会。知人の麻生源左衛門や香苗・七重姉妹が務め,るいと千絵が手伝いに行く。
東吾は源三郎の息子源太郎と花世を連れて行く。
そこで源太郎と花世がかくれんぼをしていて事件に巻き込まれる。滝川家の隣の廻船問屋播磨屋の夫婦殺害事件のてんまつ。
薬研掘の猫」
かわせみが鼠の被害で困っている時,柳橋の売れっ子,小てるの三毛猫が行方不明になり,探してくれと番屋に届け出る。
貸本屋の隠居彦四郎が,その猫を連れていたと情報が入るが,箱根に静養に行ってしまう。貸本屋の夫婦,おたね源七郎が店をたたむという。
江戸の節分」
月を迎える江戸の風情が楽しめる。
準備に忙しいかわせみに1人の隠居が亡き夫の供養をするために浜松から江戸にやって来る。
その頃,講がはやり,集めた大金が持ち逃げされていた。どうもこの隠居が持ち逃げした犯人と目を付けるかわせみの皆。
その隠居が大川に身を投げるのをるいが助ける。親と子の情が正月気分を盛り上げる。花世と文吾兵衛親分の登場もいい。
福の湯」
深川の福の湯の女将,お寿は,50歳で独り身。体休めにとかわせみに泊まりに来る。
そんな時に,木更津の米屋信濃屋の隠居夫婦,与兵衛とおとりが故郷の信州へ行く途中に江戸見物とかわせみに泊まる。
中のよさそうな夫婦を見て,お寿は羨ましがる。
そんな隠居夫婦を訪ねて,倅の新助がかわせみにやって来る。
親に乱暴をふるう新助を,諭す東吾。人はなにがしか不安や心配,悩みを抱えて生きている。
一ツ目弁財天の殺人」
本所一ツ目橋の弁財天は目の神様。そこに参りに来ていた名主の娘,おみちが殺された。
そのおみちが心を通わせていた鍼師の弥三郎が放火の犯人として捕まる。
瓦町の岡っ引きの鬼甚が手柄を立てるが,弥三郎の知り合いの永代の元締め,文吾兵衛が,犯人ではないと東吾に相談に来る。
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黒い迷宮

2015-10-04 | book
2015年4月に刊行された「黒い迷宮」,イギリスタイムズ紙のアジア編集長・東京支社長のリチャード・パリ―が,2000年7月に,日本で起きた六本木のホステス,元英国航空の客室乗務員,21歳のルーシー・ブラックマンの殺人事件を追ったルポルタージュだ。

日本に来て59日,21歳のルーシー・ブラックマンが疾走し,翌年2月に犯人が捕まり,2007年に地裁判決,08年に高裁,2010年12月に最高裁で確定。10年にもわたる事件の経過。

ルーシーの生い立ち,就職,そして来日事情。ルーシーの両親のこと。ホステスという日本の風俗,警察,家族などさまざまな考証。多くの女性と関係を持った犯人の生い立ち,出自の歴史。外国の家族の混乱と苦悩,そこに群がる人々。マスコミ,警察,政治。裁判。いろんな視点からこの事件を,多岐にわたる取材で構成する。ある意味,文化論とまでいえる。

特異で稀に見る犯罪としか言いようがないが,偶然,その人と出会い,巻き込まれた若き外国人女性。そして,その犯人のすごさ。しかし,今でも猟奇的な殺人事件は起きている。

「15年目の真実」と副題はあるが,原題のpeople Who Eat Darkness,つまり,闇を食う人々がふさわしいと思う。事件に巻き込まれ,嫌がおうにも混乱の渦に投げ込まれる人々。それは突然に,しかも残酷だ。
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