パンダ イン・マイ・ライフ

ようこそ panda in my lifeの部屋へ。
音楽と本、そしてちょっとグルメなナチュラルエッセイ

しよっぱい夕陽

2015-05-31 | book
「しよっぱい夕陽」2014年11月刊行。おもしろかった。つらく,ドキドキさせて,ほっこり,そして生きることのエールをもらえるなかなかの1冊。
著者の神田茜は1965年生まれの講談師。最近は文筆活動も盛んとか。

5つの短編からなる。

「エフの壁」
区役所職員の佐藤は,日々マニュアル通りの仕事に疑問を持ちながらも妻と高校生の息子と3人暮らしをしていた。妻は最近,浮気をしていることにも気づいていた。そんな佐藤は偶然,飲み屋で中学の同級生たちと出会う。弁護士,不登校の子を持つ親,亡くなった者もいる。そこで佐藤は自分が同窓会に呼ばれなかったことを知る。憂鬱になり職場を休んでいた佐藤は,むすこの部屋でギターを見つける。
「肉巻きの力」
少年サッカーチームに息子がいる内田は生命保険会社に勤めている。息子のチームの役員をさせられていたが,特に,ドン的存在の花田さんが苦手だった。息子はそんなにうまくもないのに辞めたいといわない。こんな時,花田さんの肉巻きおにぎりをめぐって事件が起きる。息子をやめさせたいと花田さんの蕎麦屋を訪れると,そこには花田さんよりもすごい姑がいた。
「バナナの印」
48歳の土田は冷凍食品の製造会社に勤めていた。1回の浮気が妻にバレ,離婚。一人娘と会いたいと考えていたが反対されている。そこに倉庫部門への配転が決まる。おもしろくない土田に同僚が毛糸を持ってきた。編み物にはまる土田は,娘に会う決意をする。
「もえぎの恋」
媛谷もえぎは48歳。保育園で臨時職員をしている保育士。宮崎で結婚し,離婚。バツイチで落語家の春風亭星也の追っかけをしている。そんなもえぎは,モンスターペアレントやこれからの暮らしに不安をいだきながら暮らしていた。何をしてもうまくいかない。独り暮らしにも疲れ,年を重ね体力も落ちてきた。そんなもえぎに星也から会いたいと手紙が来る。
「かみふぶきの空」
中学教師の野瀬は48歳。教え子だった妻と大学生と高校生の息子がいる。そんな野瀬は3年生の担任になり,帰りに昔の教え子の20歳の女の子に鉄パイプで殴られる。さらに転校生が巻き起こす騒ぎに,いかに女の子たちを勘違いをしていたかを思い知らされる。でも確実に子供たちは成長し,クラスを作っていく。

本の装丁のイラストの5人が主人公だ。
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野苺の季節

2015-05-24 | food
5月21日は24節気の小満でした。草木が芽生え,花が咲き,暖かさが暑さに変わる季節。
そんな折に恒例の野イチゴ取りに家族と出かけました。その年の気候で1・2週ずれるのが通例です。今年は先週と今週で出かけました。

まとまってありました!!


なんと毛虫つきです~。柄付は刺します。


先週は500グラム,今週は400グラムを収穫しました。そして苺ジャムにします。口の中のプチプチ感がたまりません。



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氷姫

2015-05-24 | book
カミラ・レックバリ。スウェーデンの推理小説家。1974年生まれ。昨年の新聞書評で知って,彼女を有名にしたエリカ・パトリックシリーズの第1作「氷り姫」を読んだ。
「氷姫」は2003年に出版。読んだ文庫は2009年8月第1刷だ。30年ぶりぐらいに海外推理小説を読んだ。

スウェーデンの小さな町,フィエルバッカで起きた殺人事件。35歳の同級生の女性,アレクスの自伝を頼まれた作家のエリカは,そのアレクスの死と向き合う。そして,地元警察署い勤める男
刑事,幼馴染のパトリック。この2人を軸に話は展開する。

アレクスの隠された過去。地元缶詰工場のオーナーの養子ヤーン,その兄,ニルスは20年も昔に行方不明になっていた。そして,アル中の画家,アンデシュは,エリカやアレクスと同級生で,
アレクスと付き合っていたという。しかし,そのアンデシュも自殺に見せかけて殺された。次々と明るみになる出来事,衝撃の真実が肉親から語られる。エリカの妹アンナの夫からのDV被害も挿入され,女性作家らしい魅力もある。

厳しい自然の中で,人は生き,そして暮らす。閉ざされた町に生きるが故に起きた悲劇。北欧の空気に触れながら,変わらない人間模様を堪能できる。
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灰色の北壁

2015-05-17 | book
推理小説家,真保裕一の中編3編を集めた表題他の「灰色の北壁」を読んだ。2005年3月刊行。初めて読んだ作家。1991年に江戸川乱歩賞。テレビドラマや映画の脚本もてがける。ストーリーテラーだ。

この作品は2003年から2004年に月刊文芸誌に掲載された3作。いずれも山岳ミステリー。厳しい自然の中,まさに密室ともいうべき山で起きる死。そこに人の営みを絡ませ,最後まで息を抜かせない構成が読む人を引き付ける。導入部では予測もつかない結末に,そうきたかと合点させる。なかなかいけますよ。

黒部の羆
北アルプス黒部の剣岳を舞台に富山県警の山岳警備隊員の過去
灰色の北壁
山岳記事作家が迫るヒマラヤ山脈カスール・ベーラ北壁の初登攀の疑惑
雪の慰霊碑
北笠山の春登山をする一人の男。大学生の息子がこの山で死んだ。その命日に登る父だった。その思いとは。
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御宿かわせみ(16) 八丁堀の湯屋

2015-05-10 | 御宿かわせみ
御宿かわせみ16冊目「八丁堀の湯屋」1991年11月

「ひゆたらり」
東吾が方月館に行かなくなって1年にもならないが,狸穴の名主,松本庄右衛門の倅,伊太郎が師範代として勤めていた。(「千鳥が啼いた」)
東吾は久々に松浦方斎の元を訪ねる。その頃,狸穴の近くに医師が住み着いた。曲直瀬(まなせ)桃庵で薬頭の今大路成徳の血縁と名乗っていた。しかし,長女の浜路は宗太郎の母親,次女の糸路が後妻に入り,宗次郎,宗三郎を生んだ。西麻布の大百姓の荒木家で食中毒が発生した。この辺りを縄張りにしている飯倉の仙五郎の家に投げ文がある。ひゆたらりは悪い人だ。荒木家の女御隠居おとよが殺されると。
「びいどろ正月」
江戸で風邪が大流行り。宗太郎もかわせみ,神林家,麻生家とうがいと手洗いを奨励していた。そんな折,薬種問屋,長崎屋のうがい薬,びいどろの瓶に入った「神聖水」が評判になる。
その長崎屋で間違って口にすると猛毒になる消魔水が一瓶売ったという。びいどろの瓶は硝子職人,雛屋弥助が作っていた。弥助の妹,おせきは長崎屋を手伝っていた。
「黒船稲荷の狐」
門前仲町の呉服問屋,尾張屋半兵衛とおかつの一人娘おしまが昨年養子を迎えた要助が行方不明になった。その要助の許嫁というおいねが小田原から訪ねてくる。尾張屋では要助が返るまでおいねを雇うことにする。そんな折,尾張屋の恒例の大売り出しが始まる。東吾は,長介を小田原へ調べに向かわせる。
「吉野家の女房」
千絵に頼まれていっしょに雛人形を見に行ったるいは吉野家と言う古道具屋で雛箪笥を買う。その箪笥に恋文が入っていた。翌日,吉野家の内儀お多加が雛箪笥を引き取りに来る。その吉野家の主人,儀兵衛と雛人形屋の翁屋の女主人お初が心中する。東吾は,お初とお多加は新宿で宿場女郎をしていたことを突き止める。
「花御堂の決闘」
源三郎が毎夜、遅くまで働き、香の香りをさせて戻ると、浮気を心配して妻の千絵はるいに相談をかける。助は源三郎と亀戸天満宮の光蔵寺に張り込んでいるという。その寺の前にある茶屋の茶汲み女のお栄がいい女で、どうも源三郎に気があるらしい。そのお栄は、昔、東吾が源三郎とともに神道無念流、岡田十松の岡田道場に通っていたときの同門、五井兵馬の仇として東吾を狙っているものがいると源三郎に話す。五井は、盗賊の仲間となり、切腹をして果てていた。その妹、和世の世話を東吾と源三郎は見ていた。
「煙草屋小町」
東吾がかわせみの老番頭の嘉助に煙草を渡す。深川のそば屋長寿庵の岡引、長助も同じ煙草を吸っていた。どうも日本橋の花屋という煙草屋のものらしい。花屋は彦太郎とおはんの若い兄妹が営んでいた。おはんは煙草屋小町といわれるほどの人気者であった。そのおはんに、堀江六軒町の名主の倅、表之助がほれて、東吾は中を取り持ってってほしいと頼まれる。どうも兄の彦太郎が反対しているらしい。その、彦太郎がある夜、刺される。しかし、相手をいわない彦太郎。火事で焼け出された兄妹がどうして店が出せるようになったのか。東吾は不信を抱く。通之進の粋な計らいが光る。
「八丁堀の湯屋」
かわせもの嘉助のひいきの湯屋,松の湯がしばらく休むので,なつかしい八丁堀の湯屋大黒屋へ出かける。その大黒屋で,町奉行配下の同心,松田庄三郎が女湯の湯船で殺されていた。
「春や,まぼろし」
深川猿江町の足袋屋,三河屋喜兵衛67歳は2度目の妻もなくし,おつねとおかつの2人の子がいる。そこに喜兵衛は最初の妻おとよの父親違いの娘お小夜を連れてきた。おとよは30年以上行方不明になっていた。2人の娘はそれがおもしろくない。そのおつねの息子新之助12歳が水死する事件が起きる。新之助はおかつの婿金次郎と仲が悪かった。そのお小夜の出自を調べに行ったおつね夫婦がなかなか帰って来ない。東吾は源三郎に頼まれて長助と府中へ行くことになる。
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未婚30

2015-05-06 | book
未婚30
1983年生まれの白岩 玄(しらいわ げん)は,京都生まれ。「野ぶたをプロデュース」がテレビ化され,有名に。
アラサーの結婚を題材にした「結婚問題」。2014年9月刊行を読んだ。表題と今回書き下ろしの「葉子の離婚」の2作からなる。

「結婚問題」
30歳を前にした小さな出版社の編集者の望月里奈は,30歳の小説家,佑人と結婚を目前にしていた。家事を一切請け負う佑人,仕事にも行き詰まりを感じている里奈は,母から披露宴はしないのかと言われ踏ん切りがつかないでいた。里奈は,バツイチの遊人,葉子に相談。佑人は,京都で暮らす母親の元を訪ねる。
マリッジブルーになる里奈は,カメラマンの多賀谷の登場と告白に動揺する。佑人も最近書けない悩みがあり,不安定な収入を里奈の母に指摘されてしまう。2人に訪れる別れの危機。しかし,共に暮らしたいという思いが,再び2人を引き付ける。

「葉子の離婚」
里奈の友人,葉子は里奈と同じ30歳。2年前に離婚し,元夫と買ったマンションに1人で住んでいる。
病に倒れた父。看病に明け暮れる母。妹は2人の子育てで忙しい。父の入院費の工面で揉める家族。里奈と同じように葉子も実母としっくりいっていない。
そんな時,小学校4年の時,事故で片腕を失った5歳下の弟,樹はアメリカに渡り,映画づくりをしていた。その樹が葉子のマンションに転がり込んでくる。そして,元夫の再婚。最高に落ち込む葉子。「傷は消えない。ずっと残る。何もかも元通りになるわけじゃない」。樹の言葉に葉子は一歩を踏み出す決意をする。

人はいろいろ悩みを抱え生きている。そして人に支えられて生きている。アラサーの著者が送るエール。人生,一歩先はわからない。でも,踏み出さないと始まらない。そしてやり直しはきかない。
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無名

2015-05-05 | book
沢木耕太郎は1947年生まれのノンフィクション作家。その彼が父親の死と向かい合う日々を描いた「無名」(2003年)刊行を読んだ。

89歳の父が病に倒れる。10歳年下の母,結婚し子どものいない姉の長女,父母と暮らす姉の次女と看病する。その過程が淡々と丁寧に描かれる。いつかはだれも死を迎える家族の軌跡。
病院から自宅での看病に変え,胃ろうもなくす。葬儀は高齢が故に,ごく身内で行う。家族は家族の死をどう受け入れるのか。父の人生とは。誰も生活があり,その日々の中で死が感じられるのか。驚いたのは父の死というものに鈍感な自分を発見した時,そして,多くの子供が父の人生を知らずに父の死を迎えることになる。多くの名言が自分の時と同化する。

父の死を迎え,父の俳句を自費出版する。父の死とは。

淡々とした語りに,父への愛情が感じられる。結局,父の人生と子の人生は相いれる部分と関係のない部分とに分かれ,相いれる部分も同じ感性ではない。あくまでも他人に過ぎないのだ。
しかし,共に暮らした日々は残る子どもに受け継がれる。それも自分の記憶として。せつないけどどうしようもない現実,そして時間は残酷にも過ぎていく。

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死ぬまでに行きたい世界の絶景 日本編

2015-05-04 | book
景色が心を揺さぶる。写真ではなく,実景を見てみたいと思う。それが,心の支えとなることうけあいなのだ。

47都道府県,60か所の絶景を紹介した「死ぬまでに行きたい世界の絶景 日本編」。2014年7月刊行。詩歩Shihoの作品。旬の写真と行き方,旅の工程案,グルメやついでの立ち寄り場所なども紹介されている。

購入して,見て楽しむ,旅を想像して楽しむ,実際に行って楽しむ。いい思い出は忘れないし,心を温かくしてくれます。
ちなみに表紙の景色は北海道の同北部,名寄(なよる)市のひまわりです。
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満願

2015-05-03 | book
米澤穂信は1978年生まれの推理作家。初めて作品を読んだ。短編集「満願」だ。2014年3月刊行。2010年から2013年にかけえて月刊文芸誌に掲載された6編からなる。特に,「「ミステリが読みたい!」(早川書房)、「このミステリーがすごい!」(宝島社)、「週刊文春ミステリーベスト10」(文芸春秋)の国内部門でそれぞれ1位に選ばれ、ランキング3冠を達成した」と話題になった。サイコホラーミステリ-ともいうべきジャンルで,凝縮された文体と予想もつかない結末にどんどん引き寄せられていく。アクションではなく,精神的に追い詰められていく感覚を体験することが出来る。

「夜警」
部下の警察官が犯行現場に向かい,銃を発砲したが,相手の短刀で刺されて死ぬ。その背景が明らかになる。銃を使うほどに事件だったのか。部下を2人死なせた上司。
「死人宿」
別れた女性が旅館の仲居として働いているという。そこを訪れた男は,女性が,その旅館で見つけた遺書の持ち主を探してほしいと頼まれる。
「柘榴」
両親の離婚話に揺れる中学生の姉妹。姉妹とともに暮らそうとする母親。しかし,親権は父親に。姉妹が仕組んだストーリー。そこにある本当の狙いは。
「万灯」
バングラデシュでガス油田の開発に取り組む商社マン。何とか現地の協力を得ようと奔走するが理解してもらえない。そこに同じ目的で現れたフランスの商社マンは日本人だった。殺人を隠す
ために重ねる殺人。しかし,そこに思わぬ結末が待っていた。
「関守」
伊豆半島の峠で起こる不可解な交通事故死。ライターの男は取材に訪れ,さびれたドライブインを訪れる。そこは,1人の老婆が切り盛りしていた。死んだ人たちを老婆から聞きながらやがて
,真実が明かされる。
「満願」
司法試験の勉強をしていた男は,夫婦2人の畳屋の2階に暮らすことになる。経営が傾く畳屋。そして,妻が金融業者を殺してしまう。弁護士となった男は妻の弁護をすることになる。そして,刑を終えた妻が弁護士に会いに来るという。妻に秘められた思いとは何か。

どの作品もキーになる物が出てきて,鮮やかに作品を彩る。おどろおどろしさを満喫できる。松本清張の初期の作品群につながる緊迫感あり。
米澤は2001年に文壇デビュー。まだ,30代。これからの活躍が楽しみだ。
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