パンダ イン・マイ・ライフ

ようこそ panda in my lifeの部屋へ。
音楽と本、そしてちょっとグルメなナチュラルエッセイ

励み場

2017-03-26 | book
2016「つまをめとらば」で直木賞、青山文平の新刊「励み場」を読んだ。2016年9月刊行。

勘定所に勤め、立身出世を望む夫27歳の笹森信夫と、不妊を理由に離縁され、信夫と結婚した智恵21歳。3年目の江戸であった。
不妊を気に病む智恵は、名主の成宮理兵衛のもらい子であり、名子であることに悩んでいた。戦国時代、敗れた大名の成れの果てが百姓、その家臣が名子(なご)である。
信夫も名子で故郷を離れ、親類縁者もなく、江戸で自分の力だけで出世を望むことに焦りと諦めを抱き始めていた。そんな折、自分を認めてくれる上役から、表彰の名主の選考理由の調査を命じられる。
そこで出会った、名主の久松加平への疑念、智恵と3度離縁の姉の多喜とのわだかまり、多喜の離縁の真相などが、明らかになり、信夫と智恵はともに新しい旅立ちの時を迎えることとなる。信夫と智恵の相互の語りで物語は進む。励み場とは、己の持てる力のすべてを注ぎ込むのに足りる場処のこと。中で触れられる農業の仕組み、経済の流れもおもしろく、現代農業との隔たりも読めた。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

杉村三郎シリーズ 1 誰か

2017-03-20 | book
2003年に出版された宮部みゆきの現代推理小説「誰か」を読んだ。今多コンツェルンの娘婿、杉村三郎の活躍を描く。

コンツェルンの総帥、妻の親、今多嘉親から頼まれたのは、マンションの出入り口で自転車とぶつかって亡くなった、嘉親の休日専門の運転手、梶田の2人娘からの頼みだった。2人は亡き父の歩みの本を出したいという。32歳と22歳の姉妹と会い、アドバイスをする杉村。それは梶田の人生を追うことにつながっていく。結婚間近い姉は4歳のころ、誘拐された過去を持ち、過去を知りたくないと怯える。杉村は、梶田が亡くなったマンションや梶田が若い頃、妻と働いていた玩具工場を訪れる。

自転車で梶田を死なせたのは誰か。なぜ、梶田はそのマンション近くを訪れたのか。姉の怯える事実とは。そんな思いで読み進んでいく。次々に明かされる事実。過去を追うことで、知りたくないことを知ってしまう杉村。

杉村の誠実な人柄が、縦糸になる。29歳の妻、菜穂子との会話が杉村を支える。4歳の娘、桃子のかわいらしい存在もアクセント。杉村と菜穂子の出会いも頼もしく、そして、菜穂子の病気など、逆玉と言われながらも、結婚のため離職し、実家とも疎遠になっても、コンツェルンに勤める杉村のむさしさが、家族という居場所で癒される。それ故に梶田一家の侘しさが際立つのか。

いつもながらに、宮部の小説は読む前の本の厚さを、忘れさせる。人間模様を上手に描くなあ。ハードボイルド小説。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

北の富士流

2017-03-19 | book
北の富士さん。といえば、NHKの相撲解説者。向こう正面に座り、着物姿で、粋に語る元横綱。先場所は病気療養で姿を見せられなかった。今場所、大阪では復帰と聞いている。

北の富士といえば、北玉時代。現役横綱で死去した玉の海。柏鵬時代と輪湖時代に挟まれた時代。

父が相撲好きで、小さいころから、よく家族でテレビ中継を見ていた。夕方でもあり、お風呂の湯を沸かす父の姿と薪の匂い、夕ご飯を作る母親の姿と温かい香りがマッチして思い出せる。そして、解説言えば玉ノ海梅吉さんと神風さんだった。

そんな横綱、北の富士のこれまでの歩みを、直木賞作家、北の富士の2年年上の村松友視が書いた「北の富士流」を読んだ。2016年7月刊行。

昭和17年1942年に北海道に生まれた北の富士は、中学卒業とともに生まれた。当時、出羽海部屋の横綱千代の山に声をかけられ、1957年昭和32年に入門する。1963年昭和38年に十両昇進。1964年39年に1月新入幕。3月に小結。1966年昭和41年に2歳年下の玉乃島(玉の海)と関脇に。そして7月に同時大関昇進。1967年昭和42年に千代の山の九重部屋独立で、出羽海部屋から移る。ここで出羽一門から高砂一門への移籍を経験する。1969年昭和44年柏戸引退、1970年昭和45年に玉の海と同時横綱。1971年昭和46年には貴乃花に敗れた大鵬の引退。そして、同年、27歳で横綱玉の海の死。1974年昭和49年に引退。18年の土俵人生。そして、井筒部屋を起こし、親方として、千代の富士、北勝海の2人の横綱を育てた。1998年平成10年に相撲協会を引退し、NHKの専属、大相撲解説者としての歩みを始める。横綱が解説者とは前代未聞だそうだ。

夜の帝王、プレイボーイと異名をとった北の富士さんの人生を、村松は、人間味満開の男道と評する。苦難と栄光、そして、運命に翻弄されても、飄々と生きていく。その生きざまを友人や家族とのインタビューを通し、人間、北の富士を明らかにしていく。それは奇しくも同時代を生きてきた著者の生きざまとオーバーラップすることになる。
七十半ばとなった北の富士さん。昭和から平成の相撲界の生き証人。その温かく、厳しい力士たちへの視線を感じる。

清国、大受、北天佑など、今でも顔を思い出せる力士たちの名前が、次々と出てくる。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

春に散る

2017-03-12 | book
沢木耕太郎が、全国紙に、平成27年4月1日から、504回、平成28年8月31日まで連載されていたボクシング小説、「春に散る」を読んだ。それも切り抜きでである。

かつて20台に共同生活を送り、ボクシングに打ち込んだ4人の男性。しかし、世界チャンプ音の夢破れ、今は60台となり、それぞれの人生を歩んでいた。仁、次郎、サセケン、そして、キッド。しかし、皆、仁は心臓の病。次郎は出所。サセケンは故郷で、ボクシングジムの夢破れ、家族とも距離を置き暮らす。キッドは最愛の妻が先立ち、住まいを追われている。仁がアメリカから帰り、1軒の家を借り、かつての仲間を呼び寄せたことから、4人の新しい生活が始まる。翔吾という若いプロボクサーとの出会いを通し、ますます4人の暮らしは充実度を増す。彼らが若い頃に学んだ真拳ジムの2代目社長の令子、不動産屋の事務員、佳奈子。
翔吾は、4人の教えを守り、メキメキ実力を上げていく。真拳ジムに所属し、世界選手権を闘うまでに成長する。しかし・・・。

切り抜いて、読まずに置いていた。それが今年1月に単行本になった記事を読んで、読んだ見ようかと思いついた。おもしろい。新聞小説だけあって。毎回、緊張の連続で、ドキドキもん。

初老の男たちの生きざまを見よ。そして、ボクシングシーンの緊張感を感じろ。

人、出来事、とにかく出会いの連続。そして、個性的な登場人物がストリーを引き立てる。中田春彌の挿絵が劇画調で、緊張感がさらに増す。やはり、挿絵は大切だね。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

藤沢周平のこころ

2017-03-05 | 藤沢周平
大好きな藤沢周平が、亡くなったのが、平成9年、1997年1月26日。没後20年ということで、文芸春秋が、「藤沢周平のこころ」というムック本を出した。平成28年12月26日発刊だ。
いつもながらこの手のやり口には弱い。ついつい買わなければという強迫症に陥るのだ。
また、周平の世界に浸ることのできる幸せ。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

沈丁花咲く

2017-03-04 | life
これは、先週の土曜日、ちょうど一週間前の写真。今も、甘酸っぱい香りがきつく漂う。

また、この香りと出会えた。春が近づいている喜びがある。秋のさみしさ、冬の厳しさ。それを乗り越えて迎えるが故に一層の喜び。

3月は別れの季節。チャリ通勤の途中で香る沈丁花も乙なもの。来年は還暦、そして、退職。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする