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パンダ イン・マイ・ライフ

ようこそ panda in my lifeの部屋へ。
音楽と本、そしてちょっとグルメなナチュラルエッセイ

いきのびる魔法

2013-03-31 | book
今その生き方が注目されている漫画家、西原恵理子が絵本を書いた。『いきのびる魔法』だ。2013年1月発刊。副題が「いじめられている君へ」だ。

日本は年間、3万人前後が自ら命を絶つ国である。世界の紛争地でもそんなに毎年死ぬ所はない。交通事故にしても然りだ。その中でも日本は若者の割合が先進国の中でも高いという。

ある意味閉鎖された学校という空間に身を置くしかない、選択肢のない子供にとって、その限られた時間を、とにかく過ごすしかないのだ。その中で繰り広げられるいじめや体罰。ふざけあい、能力を伸ばすための手段などと見過ごされ、正当化されている現実がある。

西原は、学校は、そこまでして、つらい思いまでして行くところではないという。うそをついて逃げてもかまわないという。そしてとにかく16歳までは生きてほしいと願う。16歳になれば、通信制やフリースクール、高認試験があり、働けるという。つまり、選択肢があると諭す。そして、自分で歩ける道が開ける。生きていればなんとかなると叫ぶ。生きてて良かったと思える人生が待っていると結ぶ。今はわからなくても、とにかく生き延びてほしい。学校から逃げてもいいのだ。そのためのうそは悪いことではなく、魔法なのだと。


学校とは何か。生きるとは何か。


佐渡の三人

2013-03-24 | book
長嶋有のエッセイ『佐渡の三人』を読んだ。新聞書評から。2012年9月刊行。納骨に佐渡に行く家族を温かく観察する道子。同名(2007年1月)と「戒名」(2009年3月)「スリーナインで大往生」(2011年11月)「旅人」(2012年6月)の4作からなる。
長嶋は1972年生まれの40歳。2001年に小説デビュー。2002年に芥川賞と順調な作家生活。俳句や漫画書評でも活躍中。

祖父の弟のおくさん「おばちゃん」」、祖父、祖母と三人の納骨に佐渡へ渡る一家。死者それぞれに関わる家族の立ち位置。納骨の風景。観察力もするどく、時々括弧書きで自問自答が入る。
たしかに普段の生活に異次元の世界がいきなり挿入される人の死。しばらくぶりに(いやはじめて)会う親族。それぞれの微妙な距離感、会話。そして、異なる死者への感慨。そして、納骨までの儀式が終わるとまた、いつもの世界へ帰る人々。この凝縮されたひと時には、決して悪人は出てこないし、暴力やアクションもない。
移ろい行く時は、いつしか、人を過去の存在にしていく。止まってはいない。誰も家族だと定義したものはいないのに、葬式に揃う親族とは不思議な存在だ。いつしかそのひと時にいきなり現れ、いきなりバラバラに去っていく。そして、いつしか自分もその輪からいなくなっていく。いつしか思い出の中の親族は善人しかいなくなる不思議な存在。




確証

2013-03-20 | book
一言「おもしろかった」。今野敏(こんの・びん)の『確証』を読む。2012年7月刊行。新聞書評から。

47歳、盗犯係一筋の警視庁捜査第3課の萩尾秀一と、女デカ武田秋穂のコンビが、宝石泥棒を追うことで殺人事件に引き込まれる。地道な萩尾の捜査は、人間の性をあぶりだす。人間はいつでも犯罪者になれる。手を染めるか染めないかだ。親と子、人と人の逃れられない呪縛がこの事件を引き起こす。

クライマックスは、殺人事件を追う、捜査第1課と萩尾チームとの捜査本部での葛藤シーン。組織間の対立の中、あくまでも犯人の気持ちで進む萩尾と、自分のシナリオに固執する1課の菅井。1課は冤罪もいとわない。感性の先に確証は出てくる。だから、足で稼ぐしかない、組織や個人の勝ち負けではない、犯人逮捕できるかどうかだと萩尾は痛快に言い放つ。組織がもたらす緊張感の中、娘ほど若い秋穂のきらりと光る言動に戸惑いながらも、萩尾は相棒を信じ、守る。息の合う2人が成長する姿も微笑ましい。

所詮、人は組織の中で生きている。あくまでも普通の人を描きながら、人を見る目は温かい。今野は1955年というから昭和30年、北海道生まれ。少し年上だけど、同じ世代だ。これまでに100冊以上の小説を手がける。『確証』は月刊誌に1年間連載されていた。

文學界新人賞「隙間」

2013-03-17 | book
昨年11月の新聞の文芸欄から第115回文學界新人賞作品を読む。1986年、26歳の守山 忍(かみやましのぶ)さんの「隙間」。
仲の良い姉妹、淑子、花江。そして、花江の夫脩二の3人が一つ屋根の下で暮らすひと夏の出来事。妊婦の花江と未婚の淑子。夫婦関係の冷えを感じる脩二。この3人の緊張関係が、庭や襖から姉妹を覗き見る脩二と、見られていることを知りながら暮らす姉妹の生態をもたらす。
夏の暑さがもたらす蒸すほどに暑苦しい空気、3人のどろどろとした粘っこい感覚とともに交わされる空虚な会話。感性のするどさが、ひとつの舞台を作り上げている。

桜と沈丁花

2013-03-10 | life
この気温の落差はなんだろう。ここ4日は20度にもなるポカポカ陽気だ。おかげで、サクランボの木は花盛り。沈丁花も香りをそこはかと香しい。



明日の東北大震災を前に、この日曜日は、午前中の雨を境に21度から2度に急直下だ。しかし、午後は青空が広がり、桜の白い花びらも青空に溶け込むよう。






人は移ろっても、花は咲き続け、人に瞬時の幸せをもたらす。

共喰い

2013-03-10 | book
平成24年の芥川賞、田中慎弥の「共喰い」を読む。文芸誌『すばる』2011年10月号に掲載。単行本は2012年1月刊行。
受賞時のインタビューでの奇抜な行動が話題になったが、この小説も選評者の石原慎太郎いわく「えげつない出し物が続く作品」と評したと言う。

主人公の高校生がいつも考える同級生との営み、父と別れた生みの片腕の母親の鮮魚店、父と暮らす女性の存在。暴力が全編のテーマで、次々とシーンが展開していく。どす黒い暗闇にうごめく人々。緊張感あふれる作風だ。今年の夏に映画化も。
田中は1972年生まれで、40歳になるが一度も職に就いたことがなく、とにかく本を読んで過ごしたと言う。下関在住である。20歳のころから小説を手がけ、2005年、平成17年に新潮新人賞をとり、今回の芥川賞で5つ目となる。

督促OL

2013-03-03 | book
新聞書評から『督促OLの修行日記』を読んだ。2012年9月発刊。翌10月には5刷という人気ぶり。

借金返済の電話を業務とするコールセンタに勤めるOLの榎本まみの本。借りたものを返す。その際、その便宜として利息を払う。そのことを前提で、承知で、借りる。つまり、貸す、借りるは契約だ。つまり返すのは約束として当たり前の世界。それを返さない人がいたときに会社はどうするか。約束を守らない人を、どう説得し、行動させるか。それも電話1本で。

すごすぎる暴露本かと、思いきや、それは違う。次々と心の病に倒れ、やめていく同僚を、こんなことにしたくない、仕事をどう理解し、自分のものとするか。涙ぐましい努力を積み重ね、そのスキルを公表した。いまどきの女の子のがんばりはすごい。感銘を受けた。

もちろん、そのスキルアップの要素は、なるほどとひざをたたくほど、小気味いい。
1時間に60本の電話。コールだけではなく、お手紙も業務。
心をくすぐり、回収できるポイントは恐怖心、義務感、罪悪感の3つ。1番目は昔、多用し、法律で厳しくなった。2番目は正攻法。、でもそれはだれもわかっていること。そうなれば、3つ目。とにかく約束を取り付ける。言質をとる。これが悪かったなと思わせるこつ。
叱られる、罵倒される毎日。その中で、考えさせることが、防御のこつ。「いつお支払いいただけますか」「いくらなら可能ですか。。この投げかけで相手はつまる。これは、会費の支払いをしぶる同僚にも効果的だとも。
いきなりどなられると固まるのは本能。その金縛りをとく鍵は、下半身。足を踏みつける、つねる。これでOK.
先輩から盗んだスキル、とにかく誤ることからはじめる会話。個人の能力にあったお客様交換。会話の最後にかならず、優しい言葉でしめくくる
怒鳴ることを楽しみに変えるコツ。ストレスマネジメント。悪口をコレクションした悪口辞典をつくる
とにかくゆっくりしゃべる。おどおどしていたら相手もつけこみやすい。早口で2回しゃべる時間の短縮にもなる。
いきなりにそなえる付箋貼り。対応メモをいつも目の前に。
ただの「申し訳ございません」を多用するな。意逃れにしか聞こえない。その前に具体的な言葉をつけることで新密度が増す。
謝罪2、お礼1が黄金比。謝罪は3回連続が限度。叱られ、怒鳴られ、罵倒される相手にお礼が言えるのか。お礼をいうためのイメージトレーニング。気持ちを込めるために実母が瀕死の状態だと思え。
自分の対応をモニタリングで確認する。言葉遣いの巧みさと声のトーンを変えることで対応アップ。電話は声が100パーセント。

一人の女の子の生き様がここにある。強いの一言。

弥生の梅

2013-03-02 | life
3月に入りました。庭の梅の木が咲きました。
いいですね。香りといい、その姿といい。

いよいよ春が来たなという感じです。

北海道や東北では大雪とのこと。今日は少し雪混じりでした。