パンダ イン・マイ・ライフ

ようこそ panda in my lifeの部屋へ。
音楽と本、そしてちょっとグルメなナチュラルエッセイ

佐方の「検事の死命」

2014-01-26 | book
米崎地検の若手検事、佐方貞人の活躍を描く、柚月裕子の最新作『検事の死命』を読む。2003年9月刊行。

4つの物語からなる。
「心を掬う」。出した郵便が着かない。そんな話を佐方が聞きつけ、郵便局を洗い、郵便局員の不正を暴く。手紙に託されたさまざまな人々の想いを大切にした名編。
「業をおろす」佐方の父の無念を心に秘めた人々。その真実が父の友、お寺の住職が13回忌で明らかにする。家族を敬愛する佐方と家族の絆。
「死命を賭ける「死命」刑事部編」。地方の名士の一族の婿養子が、電車でチカン騒ぎを起こす。揉み消しを図る一族。代議士が地検に圧力をかける。その力を跳ね返す佐方。地検や警察の盟友たちの覚悟。そこには綿密な調査に裏打ちされた人を信じる佐方の眼力があった。
「死命を決する「死命」公判部編」。刑事部から公判部に移った佐方は、敏腕弁護士と法廷で闘う。尋問や、新手の証人の登場など、公判という限られた時間の中で繰り出されるジャブやストレート。そして、カウンターパンチ。

正義とは何か。それを貫く強い使命感。そのとらえ方が違う人々が集まる組織。地検内の内部抗争も。

佐方のさわやかな姿勢に拍手を送りたくなる。
佐方の正義を信ずる家族や職場のスタッフたち。まさにそれが佐方の使命感を支えているのだ。
『最後の証人』『検事の本懐』に続く3作目。この作品は読みやすく、凝縮したエッセンスに満ち溢れている。作者の力が上がったと感じる。快読の1冊だった。

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御宿かわせみ

2014-01-19 | 御宿かわせみ
御宿かわせみシリーズの第1冊目『御宿かわせみ』。昭和49年5月、1974年刊行。
この「かわせみ」は、昭和48年1973年に月刊誌に隔月で連載が開催されたという。33話掲載後に中断し、昭和57年1982年に連載再開し、平成15年2005年11月号で終了した。ロングラン小説で,江戸大川端(おおかわばた)の旅籠、「かわせみ」を舞台にした人情捕物帳。『常盤新平の好きな時代小説』でも推薦された。恥ずかしながら、テレビでも有名な原作をはじめて読む。

「初春の客」 かわせみで一夜を過ごした黒人奴隷イワノフレと混血の女千代菊との悲恋。ロシア船が次々と日本近海に現れる幕末の設定が明らかになる。
「花冷え」 芸者千代菊とぐれものの弟定吉、母お勝
「卯の花」 父のあだ討ちに女中のおくみと京都から来た進藤喜一郎はかわせみに留まる
「秋の蛍」 江戸市中に現れる旅籠盗賊。かわせみに泊まっていた長七とお糸親子。孫の5歳の三代を連れたかわせみの老番頭の喜助の活躍。
「倉の中」  自殺を図ろうとした老女を助けた、るいと女中頭のお吉。質屋の主人、半兵衛の実母かねだった。そんな折、かわせみにおくみという娘が泊まる。半兵衛の内儀とかけおちした喜三郎の許婚だった。
「師走の客」 大百姓の娘32歳のおすががふとした縁で、かわせみに泊まりに来る。見初めた男を捜しているという。そんな折、るいの父が八丁堀の与力だったときの知人、同じ与力の長尾要の家に、家出をした娘雪乃の3歳の子が捨てられていた。
「江戸は雪」 かわせみに泊まった、はとり屋の主人夫婦。娘の縁談を断りに50両の金を持って来たが、無くなったと騒ぐ。そこに泊まっていた佐吉が賭け事で儲かったといって50両を持っていた。

主人公は神林東吾。北町奉行所吟味方与力の神林通之進(とおのしん)を兄に持つ部屋住みの次男坊。兄の妻、香苗は兄の幼馴染の恋女房。
るい。八丁堀の鬼与力を父親に持つ娘。東吾の1つ上の25歳。父は3年前に失脚し2年前に死去。町屋暮らしを半年し、2年前から宿を始めた。
そしてかわせみの老番頭の嘉助と女中頭お吉。二人は庄司家の八丁堀時代からの使用人。 
畝(うね)源三郎。東吾の幼馴染で親友。八丁堀の常廻り同心。

東吾とるい。2人を温かく見守り、手を差し伸べるメンバーがいい。今年1年,これから長い付き合いができる本と、また、めぐり合えた。ありがたいことだ。
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すぐれもの 18 成人の日に髭剃りの話

2014-01-13 | すぐれもの
1月13日は成人の日。大人の仲間入りですね。
そういえば、髭剃りのブラシ(シェービング・ブラシ)が痛み、久々に換えることにしました。今回で3代目になります。ドイツの美理容器具メーカー,ツイーザーマンのアナグマの毛100%2,520円でした。

就職して、しばらくは電気かみそりで髭を剃っていたが、メンズ雑誌で紹介されていた、かみそりで剃る方式に変えた。動機は、大人の香りですかね。剃刀方式で必要なものは、まず、かみそり。そして、石鹸。石鹸を泡立てるための、シェービングマグカップとブラシの4点。

剃刀は就職したときは、確か画期的な2枚刃だったかなあ。メーカーは忘れたけど。今使っているのは、2006年12月9日の日経土曜日の別冊プラスワンの「クリーンヒット」で紹介されていたジレットの5枚刃「フュージョン5+1」です。ちなみにジレットのホームページでは、2枚刃は1971年昭和46年に登場し、3枚刃は1998年平成10年、5枚刃は2006年平成18年に登場しています。平成に入っての技術革新はすばらしものがありますね。確か、父は両切りの1枚刃で、よく頬を切っていました。今は、5枚刃で、電池でぶるぶると震えるのですから。
石鹸は,ひげそり用花王の粉石けん 業務用1500円ぐらいであります。近くの理髪店で買わせてもらっています。インターネット販売でも売れていました。
マグカップはお湯を中に入れ、石鹸が冷めないようにする構造のもの。これは当初から使っている頑丈なものです。理髪店で見たことはないですか。

そして、今回、「シェービングホルダースタンド」なるものも購入しました。

というのも、改めてネットで髭剃り方法を見ると、髭剃りの極意がここかしこと見受けられました。改めて、剃る時期は朝。最初から逆剃りはしない。熱いタオルで髭をやわらかくしてから剃りはじめる。終わりは冷水で顔を引き締める。などなど、結構、初心に帰る記事があり、即実行です。
その中で、シェービングブラシは吊っておくことがありました。実は、いつもマグカップに入れ、上向きにしていたのです。これが毛を痛めていた原因かと思い、ホルダースタンドを早速ネットで検索。しかし、木からステンレス、値段も千円単位から万円単位までありますね。
今回購入したのは、千円台の木製です。剃刀のジレットはそのままでは入らないので、毎日電池をはずす羽目になりましたが、これもいいかなと。スローライフですね。シェーッビングスタンドは,これもドイツのレデッカーのもの。1,650円でした。
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村上春樹の「Love」アンソロジー

2014-01-12 | book
毎年のノーベル賞の季節になると、毎度、騒がれる村上春樹。その翻訳ライブラリー。今回は、「love」恋を題材にした、今が旬の作家の作品を翻訳し、集めた10編。『恋しくて』Ten Selected Love Stories。各作品の最初に作者の紹介、そして最後に翻訳者の村上のコメントがあり、読後の余韻をさらに引き立てる。

「愛し合う二人に代わって」マイリー・メロイ2012年ロサンゼルス
内気なノッポのピアニストのウィリアムと活発で夢見る女の子ブライディーの物語。
2人が住んでいたモンタナ州は、唯一、本人が出席できない代理結婚を認めていた。その役割を2人はしていたのだ。高校時代からブライディーを好きなウィリアム。大学、ミュージカルスターと行く道は違っていた。そして、ブライディーは結婚・離婚と夢破れ、時は過ぎていく。そんな中で、久々に代理結婚の申し込みが2人にある。

「テレサ」デビッド・クレーンズ1994年ユタ州
14歳のアンジェロは、太り気味の男の子だ。同じ学級のテレサが気になって仕様が無い。ある日の放課後、アンジェロは思い切って、テレサの後をついて行く。ドキドキのひと時。

「二人の少年と、一人の少女」トバイアス・ウルフ1989年アメリカ
題名どおり、3角関係の作品。高校から大学という何か「友」という甘酸っぱい言葉が当てはまる季節。ギルバートとレイフは男友達。そして、メアリ・アンとう同世代の女の子とレイフは付き合うようになる。そんな時にレイフは父とカナダに遊びに行くことに。その間交流を深める微妙な立ち位置のギルバートとアン。

「甘い夢を」ペーター・シュテム2011年 スイスチューリヒ
ララは21歳の銀行員、シモンは24歳のオーデオショップ店員。一緒にアパートに暮らして4ヶ月。2人だけの空間の喜びと将来へのちょっぴりとした不安。題名は冒頭に出てくるララが乗ったバスの中で流れていたラジオのカントリー番組の曲「甘い夢を」から。そして、「歌はリーバ・マッケンタイアでした」で、早速youtubeで見た。1955年生まれのアメリカのカントリー歌手だった。長い活動歴。何か、透き通る力強い歌声が、この作品に合う。その曲を聞きながら読み返す一夜の出来事。

「L・デバードとアリエット-愛の物語」ローレン・グロフ2009年フロリダ州
元水泳選手で、詩人であるL・デバードが43歳、相手の車椅子の少女、アリエット・ヒューバー16歳の出会いから、老境までの人生を描く。出会いの1918年の第1次世界大戦、そして翌19年までのスペイン風邪などの世相を織り込み、2人共通の水泳を軸に、出産、車椅子からの自立、息子コンパスの成長、結ばれることの無かった2人の運命と苦悩、そして、詩人としての成功、初老のデバードと息子コンパスの暮らしが書かれる。2人の愛の軌跡。

「薄暗い運命」リュドミラ・ペトルシェフスカヤ1987モスクワ
30代の未婚の女と42歳の男。男には妻子がいた。このどうにもならない関係。たった3ページの物語でずるずるとこのままを引きずる女、彼女、そして彼。

「ジャック・ランダ・ホテル」アリス・マンロー1994年カナダ
ゲイルは、自分と別れ、女と逃げたウィルを追って、カナダからオーストラリアへ行く。そこで、ウィルの手紙の相手に成りすまし、やり取りを続ける。しかし、ウィルはその相手を突き止める。緊張感あふれる作品。

「恋と水素」ジム・シェパード2004年マサチューセッツ
1937年、ドイツからアメリカに向かう巨大飛行船。その乗務員といてナチ党員のマイネルトとグニュッスはいた。彼らは同性愛者だった。空高く舞い上がった飛行船で繰り広げられる嫉妬と痴態がなんともすごい。

「モントリオールの恋人」リチャード・フォード2001年ニューオリンズ
ヘンリーはワシントンで暮らす離婚経験のある弁護士49歳。レインは会計士でカナダのモントリオールで夫と息子がいる。
いわゆる不倫関係だ。いつかは別れの来る2人。ある日、レインの夫が2人が過ごすホテルに来ることから、急展開を見せる。この2人の関係の終わり。緊張感のある文体、おしゃれな会話。やはりちっぽけなのは男の方だなあ。大人の恋愛短編。

「恋するラムザ」村上春樹2013年
ある朝起きたらグレゴール・ラムザという人間になっていた。カフカの「変身」版を書いたという村上。
その家へ鍵を直しに少女がやって来る。その少女は背虫だった。

2013年9月発刊。人気作家だけあって10月には3刷だ。
愛の形はさまざま。一方、人間の感性はどの国、どの文化でも共通項なのだと改めて思う。ユニークなアンソロジー集
表紙の絵は、知っている人も多い、竹久夢二の大正8年の作品「黒船屋」だ。
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家族写真

2014-01-05 | book
荻原浩の『家族写真』を読んだ。2013年5月刊行。新聞書評から。2010から2012年にかけて月刊誌に掲載。
7編の短編から。いずれも男性の目線から、現代の家族風景を考えた。いまどきの家族の風景。

59歳。16年前に妻を亡くしたサラリーマン。3年前、長男は結婚し、家を出ていった。今は娘と暮らす。
その娘が婚約者を連れてきた。娘の結婚をテーマに、定年を前にした父の悲哀と旅立ち新しいにエールを送る。「結婚しようよ」
「磯野波平を探して」。サザエさんの父は54歳、今の俺は53歳。家族をテーマに一人酒場で飲む酒の味。
42歳の内村さん。体系が気になりはじめ、体重との格闘を始める。妻と小1の一人息子が体重計と格闘する。「内村さん一家176kg」
45歳の郁夫は、妻と小学生の息子と三人家族。憧れのマイホーム住宅見学会に出かける。そこで見る優雅な暮らし。でも、少しずつその一家の実態が暴かれる。「住宅見学会」
俺51歳。仕事を転々として生きてきた。そんな俺が、アパートでかっての恋人を真似たマネキンと暮らすようになる。「プラスティック・ファミリー」
ドライブに出かけた家族。リストラされた父は、しりとりを家族に強要する。小気味のよい会話。「しりとりの、り」
カメラマンを目指す弟。都会で恋人と暮らす姉。中学で引きこもりになった妹。そんな三人兄弟姉妹の父は母に先立たれ、写真館を経営していた。そんな父が倒れた。「家族写真」。

人は一人では生きれない。そして、家族は選べない。でもそんな家族だからこそ、自分が生きている証になる。家族がいての自分だと思う。いい作品群だ。
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川上弘美のエッセイ

2014-01-04 | book
川上弘美は1958年昭和33年生まれの小説家。2人の子供がいる芥川賞作家。まさに同世代です。
そのエッセイ『晴れたり曇ったり』を読んだ。2013年7月刊行。子どもの頃の話から大人の生活まで幅広く、本についての生活をまとめた。

2000年代に雑誌や新聞に掲載されたものや文庫解説を掲載。「匂いの記憶」「ぬか床のごきげん」「いつもそばに水が」「お訊ねしますが」「いつもそばに本が2」「晴れたり曇ったり」からなる。これまでの洒脱な人生、本に対する感性のすばらしさ、日々の暮らしの洞察力に脱帽。

たとえば「いつもそばに本を2」で紹介された本。読んでみようと思話せる内容。
こよなく美しい日没 『この世の全部を敵に回して』 白石一文
行ってみようじゃないか 『食の達人たち』 野地秩嘉
伝える 『野の花ホスピスだより』 徳永進
『忘れられる過去』荒川洋治
かすかな声『日本の小説 百年の孤独』高橋源一郎
ひとりの読者として 『身振りとしての抵抗』 鶴見俊輔

そして「晴れたり曇ったり」はミセス2011年1月から2012年3月までの連載

その季節を追い、出来事を綴る。タイトルだけでもおもしろいと思う。
「こぶまき」「かわうそ」「虫くい」「さくら餅そのほか」「スナックとスナップ」「棕櫚(しゅろ)のほうき」「梅雨の日記
「チューブトップ」「カミングアウト」「うきわ」「恋におちました」「冬立つ」これで12か月。おまけに、「だいちゃん」「ただ一つ」「晴れたり曇ったり」

たくさんのエッセイ。子どもの頃のこと、家庭、仕事、世相や政治、周りの風景や食事といった暮らし、季節感、観察力とネタ。ほんとうに引き出しがいっぱいあるものだと感心することしきりでした。
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実践! 田舎力

2014-01-03 | book
食を通した地域おこしのアドバイザー、金丸弘美が平成25年今年8月に出した『実践!田舎力』を読む。副題が「小さくても経済が回る5つの方法」だ。

全国各地で行われている町おこし。そのスタイルはさまざまだが、地域を活性化し、住みやすい町にしようという意識は共通項だろう。金丸は、さまざまな地域で行われている取り組みを取材し、その成功例を紐解く。そこには、地域ならではの工夫とポリシーが見え隠れし、間断なき努力が伴っている。

「1次産業、2次産業、3次産業を融合した6次産業の実践」「ノウハウ継承の人材作り」「記録で残すテキストづくり」「交流と連携でお互いに刺激を」「環境をテーマに街づくり」。これらを柱に日本全国を訪れて、人を知り、紹介する。そこには人が出した知恵と、人が残した足跡がある。成功例にはそこに至る軌跡がある。それを紹介し、人に勇気を与え続ける。

取材をすれば、そんな本は簡単に作れそうだ。でも、なかなか出ない。そうゆう視点は地道な活動から生まれるからだ。ベストセラーらしい。どの地域も喉から手が出るほどほしいのは、こういう人材なのだ。
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常盤新平の女性論、男性論

2014-01-02 | book
常盤新平の夫婦論、『ベストパートナー(夫婦という他人)』を読んだ。1996年(平成8年)刊行。1931年(昭和6年)生まれ65歳のときの作品。
現在の妻と知り合って21年目、夫婦になって15年。50歳を超えて離婚と再婚を経験した。子供も2人授かった。
今の妻はキャリアウーマン。自分は翻訳家で自宅にいる。常盤が65歳、妻が56歳という9つの年齢差。
別れた妻に対する罪悪感。家のローンも抱えながら、妻を職場に送り出す暮らし。他人からおじいちゃんとも呼ばれるほどの年齢差の娘との生活。

暮らしと付き合いは違う。妻も娘も人格も異なるから他人といえば他人。そんな他人が一つ所にいる理由は何か。
けっして、満足ばかりでないマ毎日のなかで、ある一定の間隔で暮らすごくいを常盤新平は説く。

やはりそうかと思うことしきり。結婚も離婚もすごいエネルギーがいるのだ。常盤新平の女性論、男性論。
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常盤新平の好きな時代小説

2014-01-01 | book
『私の好きな時代小説』は、2008年平成20年発刊の紹介本。常盤は2013年今年1月に81歳でこの世を去ったから77歳の晩年の作品。

昔から読んでいた時代小説だが、本格的に読み出したのは30台後半の頃という。紹介する14編を、作品のストーリーはもちろん、作家のねらい、時代背景などをもとに魅力を解き明かす。翻訳と時代小説のつながりを、共通の主人公の探偵性、そして時代小説のわかりやすく癖のない文体にあるという。すっと読めて内容もしっかりと入っている文章は、翻訳やエッセイ、小説の参考にしているとも。

14編は、捕り物、市井物、剣豪物、股旅物などにわたる。
平岩弓枝の『御宿かわせみ』 32冊、新シリーズ2冊。昭和48年1973~1975年、1982~2005年、2007年~
岡本綺堂『半七捕物長』6冊 大正6年1917年~26年 1934年~37年
隆 慶一郎『吉原御免状』1冊 昭和59年1984年~1985年
大仏次郎『赤穂浪士』2冊 昭和2年1927年~28年
長谷川 伸 『股旅新八景』1冊 昭和9年1934~35年
山本周五郎『小説 日本婦道記』1冊 昭和17年1942年~46年
池波正太郎『鬼平犯科帳』24冊 昭和43年1968年~90年
藤沢周平『三屋清左衛門残日録』1冊 昭和60年1985年~89年
柴田錬三郎『眠狂四郎独歩行』2冊 昭和36年1961年
吉川栄治『宮本武蔵』8冊 昭和10年1935年~39年
池波正太郎『黒白』2冊 昭和56年1981年~82年
伊藤圭一『秘剣やませみ』1冊 昭和62年1987年~90年
中山義秀『新剣豪伝』1冊 昭和29年1954年~55年
藤沢周平『獄医立花登手控え』4冊 昭和54年1979年~83年

池波と藤沢は2編あるので、12人の作家を紹介している。古くは大正、戦前のものもある。一番新しいものでも昭和62年1987年だから30年近く前か。これらは常盤が、いずれも何回となく手に取り、感慨に浸った作品群だ。

時代小説は、とにかく気が休まる。読み始めると止まらなくなる。この時間の過ごし方が性に合っているという。
語られる時代、語った時代は今ではないが、そこに息づく人々はまさに今に通ずるという。なぜなら人の情はすべて移ろってはいないからだと。

そういえば、常盤が、落ち着いて読める、年末年始に読む旅行に出たときに旅館で読むのは、時代小説だという。お勧めは、池波の『鬼平』『剣客商売』『梅安』と藤沢の『残日録』『海鳴り』『日月抄』『蝉時雨』『獄医の立花登シリーズ』という。いずれも、わたしが,ここ10年、繰り返し読んだものばかりで、うれしかった。

今年はどんな本との出会いがあるのか。
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あけましておめでとうございます。

2014-01-01 | life
甲午の年が来ました。どんな1年になりますことか。
家族,仕事,健康,社会,本,音楽などなど,終わってみれば・・・かもしれませんが,いい年にしたいものです。

庭に咲いた昭和の栄。これからしばらくピンクの大輪で楽しませてくれます。
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