パンダ イン・マイ・ライフ

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音楽と本、そしてちょっとグルメなナチュラルエッセイ

漂流 吉村 昭 53

2019-04-14 | 吉村 昭
海難事故の多かった江戸時代に、24歳から37歳まで、13年間の長きを無人島で生き抜いた土佐の国の長平を中心にした「漂流」。
昭和51年(1973)刊。文庫は昭和55年に1刷、431ページにも及ぶ大作。平成20年には44刷を数えた。

天明5年(1785)に土佐の船が漂着した鳥島は、土佐から660km、江戸から600kmも離れた伊豆諸島の無人島。絶滅の危機に瀕しているアホウドリの生息地として今でも有名だ。
4人で流れ着くも3人は死んでしまう。2年後に大阪の難破船の11人、5年後に薩摩の難破船で6人が流れ着く。

草木も湧き水もない島でどうしてくらすことができたのか。鳥の肉や貝、海草、ときたま魚肉を食し、雨水をアホウドリの卵の殻で受け、飢えをしのぐ。
一隻も姿を見せない島暮らし。ある者は病に倒れ、仲間同士で喧嘩も。

夏にいなくなるアホウドリを干し肉として貯え、生き延びる。一方、流木を頼りに、碇を釘に変え、船を作り、長平を含む生き延びた14人は島を脱出する。八丈島の近くの青ヶ島に着き、八丈島から江戸へ。

塩の香りまでするような濃厚で、リアリティのある文章がなぜできるのか。まるで映像を見ているようだ。

気の狂いそうな無人島暮らしでも失わない前向きな姿勢、体力、精神力、そして知恵。まさに人間賛歌の一編、感動の巨編である。


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