パンダ イン・マイ・ライフ

ようこそ panda in my lifeの部屋へ。
音楽と本、そしてちょっとグルメなナチュラルエッセイ

寺院消滅

2015-08-30 | book
2015年5月に刊行された鵜飼秀徳の著「寺院消滅」を読んだ。新聞書評から。

日本全国が都市化,過疎化,高齢少子核家族化の波に飲み込まれ,地域社会や家族の構造が変化を遂げている。そんな中,お寺もその流れを受けている。住職の高齢化や跡継ぎ不足,檀家の高齢化・減少やお墓の地方から都市への移転による経営危機がある。地方消滅と言う言葉が独り歩きしているように,無住寺院が増え,将来,3割から4割のお寺が消滅するという。

著者は,各地の寺院を訪れ,インタビューを行うことで危機的な状況をルポルタージュし,仏教有名宗派のアンケート結果を交え,寺院存続の実態を明らかにする。
そして,仏教伝来以来,人の暮らしに根付いた仏教が,江戸時代の檀家制度の確立と,明治の廃仏毀釈,先の大戦でとった仏教界の態度,戦後の農地解放という経済的打撃など,歴史的要素にもてあそばれる様子を明らかにするとともに,葬式仏教にならざるを得なかった今の暮らしとお寺の関係にも触れる。

全国の寺院は必要か,その存続のために,無策の宗派も少しずつ変わろうとしている。著者は,僧侶が人々により添えるかが,鍵だという。

人はいずれ誰も死を迎える。今,生きているから悩み,苦しむ。仏教はそもそも救済宗教なのだ。葬式のための仏教はいらないのではないか。人を受け入れ,人を訪れ,ともに悩み,心を開放する。そんな営みの拠点になってほしい。
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続・一日一生

2015-08-23 | book
比叡山の僧侶,酒井雄哉(ゆうさい)の「一日一生」の続編,「続・一日一生」を読んだ。2014年3月刊行。酒井大阿闍梨は,刊行の半年前,2013年9月23日に享年87歳で逝去された。

生老病死という人の運命を語る1冊。
その中からコラム風に掲載されたものを抜き書きする。


人と人
人としぜんの縁を たいせつにしながら
じぶんを昇華する方へもっていく
しかし それをみきわめるために
力がはいると みちをはずれる

人はきめられた 人のみちをあるくことが
しぜんであり いちばんよい


人は生まれついたらすぐ
一生の間の歩く道は決められている
すべて初体験の道ばかり
昨日も今日も明日も
死ぬまで歩かねばならない自分の道がある

その長い人生の道のりには
成功もあれば失敗も多い

人目を気にしたり落ちこんだり
それは卑屈未練というもの

他人がふみ込めない自分の中の道の中だ
堂々と一直線に前を向いて歩けばよい


人は追いつめられたとき
なにかにすがりつきたいとおもう

そこで大事なことは
安易に すぐに楽になるすべがあっても
よく目をひらき 耳をそばだてて
状況の判断をあやまってはならぬ

ほんものを摑むか 泥を摑むか
平素のこころのつかいかたが
このとき
かならず物をいう


たとえばのはなし
木には木のしごとがあり
草は草のやくめがある
どんなに背のびしても
草は木にはなれないであろう

木のままで 草のままで
おたがいが助けあうこと

それは人間社会でもおなじことだと思う

世の中で生きるということ
それは ひとりの力ではとてもむりだ
お互いの立場をよく理解し
みとめあいながら生きてゆけば
毎日がたのしく あかるく暮らせるはずだ



水の流れをみるとよい
いそぐときは早く
のんびりできるときは悠々と
溜りにはいってもあわてない
そして ときがたてば
さっと出てゆく自然体こそ学びたいもの
人をきずつけず自分も生きてゆける
剣の極意にも似たゆきかたかもしれない


人は目的があって道を歩く
それは すべていきるためであり
死ぬまで どこかを歩かなければならない
しかし 歩かなくてもよい道が一つある
それは 人が心でつくる理の道である

人はそれぞれの生きる立場で
宿命とさだられた道
これこそ仏がつくった その人の道である
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酒井大阿闍梨の「一日一生」

2015-08-16 | book
比叡山の僧侶,酒井雄哉(ゆうさい)の「一日一生」を読んだ。2008年10月刊行。2009年4月の半年で13刷というベストセラー。
1926年生まれの酒井は,小さい頃は父は定職もなく,苦しい時代を過ごし,青年期は戦争で特攻隊にいた。戦後も定職に馴染まず,結婚した妻も2か月で自死し,たどり着いたのが比叡山だっ
たという。

そこで,1980年,54歳で千日回峰行(せんにちかいほうぎょう)という厳しい修行に臨み,大行満大阿闍梨(だいぎょうまんだいあじゃり)という名称をもらう。約7年間で比叡山中の峰や谷を1000日巡り,礼拝をし続ける厳しいものだそうだ。歩く距離も1日に30キロから60キロという。走行距離は地球一周,9万キロにも及ぶという。1987年も行い,過去3しかいない2回満行者となった。

そんな酒井大阿闍梨の言葉の数々。父や母,祖父母の温かさに包まれ,貧乏でも人のぬくもりに包まれた幼少の頃。修行のときも,自然の大切さやその移ろい,動物とのふれあいに感動し,自
分を見つめることが出来たという。

人生は1日で完成する。新たな一日はまた,始まり。そして眠りにつく。目が覚め,息を吸い,自然の光や木々,動物に出会えた喜びをかみしめる。自然もまた,1日を精一杯生きている。苦
しいことも1日たてば終わり。温かい言葉の数々に,与えられた命を一日一日,精一杯いきることしかないと思えてくる。

その酒井大阿闍梨も2013年9月に87歳で仏のもとへ旅立たれたという。
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その女アレックス

2015-08-09 | book
今年一番の話題,あの「その女アレックス」を読んだ。フランスの推理小説家,ピエール・ルメートルの2011年の作品。日本では2014年9月発行。翌10月に2刷。とにかく展開が速い。そして登場人物がすべて個性的。3部構成にはきちんと意味がある。

フランスのパリを舞台に,アレックスという30歳の女性が誘拐されるところから物語は始まる。ありきたりの救出劇かと思いきや,そうではない。

パリ警視庁犯罪捜査部班長のカミーユ,50歳で妻を誘拐の上,殺された傷心の身。そして,その部下の金持ちでおしゃれなルイ,しみったれの倹約家アルマン,。上司でカミーユと同年のグエン。まるで三銃士のような個性的な面々がチームワークで,犯人探しに挑む。

やっと隔離されたところに行くと,すでにアレックスはその場から立ち去っていた。ここで1部終了。2部は・・・。3部は・・・。アレックスは2年半で6人の人を殺していた。次々に明らかになる事実。本当の悪人は誰か。徐々にアレックスの人生が暴かれ,身を挺して明らかにした真犯人とは・・・。

1部と2分は,カミーユとアレックスのコメントで入れ替わる。そして3部は,真犯人を追いつめるパリ警視庁の面々の息づまる尋問シーンが続く。硫酸が,共通のキーワード。

次々と現れる事実に引き込まれ,あっと言う間に,大団円に突入する。一部の監禁シーンは,檻に入れられ,吊り下げられたアレックスとねずみの息づまるシーンが続き,第2部では次々と殺人を犯すアレックスの残忍なシーンが続く。緊張の連続と犯人探しと言う迷路に浸る快感である。読者が決して口外しないストーリー,結末。そこには推理小説の醍醐味を共有したいというファンならではの配慮があるからなのだ。
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布袋草咲く

2015-08-08 | life
今年の夏は,特に暑く,雨も降らない。日本は温帯から亜熱帯になったようだ。熱中症で搬送される数も過去最高とか。そんな中,今年も我が家の布袋草が咲きました。
昨日咲いたのが右側の花で,もうしぼんでしまいました。

涼しげな水面に浮く,緑の葉と薄紫の花がすばらしい。清涼感たっぷりです。ホッとします。
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読まされ図書室

2015-08-02 | book
女優の小林聡美が書いた「読まされ図書室」2014年12月刊行を読んだ。新聞の書評から。
題名の通り,知人から紹介された本を小林が読み,紹介するという趣向だ。井上陽水,よしもとばなな,群ようこなど15人が選んだ15冊。それぞれ独創的な選択だ。

実際,人から紹介された本はこれまでもあるが,実際,読み終えたことは1冊もないのが実態。小林の辛抱強さに驚きだ。
本との出会いは,偶然だ。実際,藤沢周平などは,高名となり,若い頃に読んだときは,あまりに暗くて,悲しい話に嫌気がさしたが,ある程度の年齢になると,ツボにはまり,全集まで買い揃えたほどだ。そういう意味ではこの企画は,小林の本好きが講じたものなのだろう。それとこれまで築き上げた人間関係の賜りものなのかもしれない。
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