パンダ イン・マイ・ライフ

ようこそ panda in my lifeの部屋へ。
音楽と本、そしてちょっとグルメなナチュラルエッセイ

おひとりさまの最期

2016-03-27 | book
上野千鶴子の「おひとりさまの最期」(2015年11月刊行)を読んだ。著者は1948生まれ。約10歳年上の独り身の女性が,2007年に出版した「おひとりさまの老後」から8年後に,その完結編ともいえるこの「最後」を書いた。男女共同参画やジェンダー論の研究で有名な社会学者が,介護と医療,さまざまな仕組みの現実を踏まえながら,高齢社会に突入した日本の死へのステップを論じる。

病院で死ぬことがポピュラーになったのは,ほんの40年前。高度医療の進展による余命の高齢化,高齢少子社会の到来と晩婚やシングルの増加は,いやがおうにも家族の形態を変え,意識を変容させる。そこに住み慣れた家で最期を迎えることができないのか,いけないのか。家は唯一の安らぎの場,在宅ひとり死は困難なのか。

その第1の壁は家族だという。家族のいないのは苦ではなく楽なのだとも。そして強い意思。
いずれは迎える介護。そこに関わる家族形態の違い,横たわる福祉制度,スタッフ環境の地域差。
迷惑をかけたくないと住み慣れた家を出ていく高齢者。どう関わっていくか悩む家族。

いずれ老いを迎える人々が,今の社会でどう暮らしていくのか。上野の投じた小石の波紋は大きい。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

自分を見つめる もうひとりの自分

2016-03-21 | book
1936年生まれ昭和21年生まれの作家,80歳の柳田邦男が2016年1月に発刊した「自分を見つめる もうひとりの自分」を読んだ。自らの次男を25歳で自死した柳田は,災害や事故,難病による死を見つめるノンフィクション作家。心のハンドブックともいえる本だ。

人は理由もなく,病気や怪我や事故に遭う。なぜ自分が,なぜ自分ばかりがと思う。また,残された自分を責める。そんなとき,私たちは,どうやって生きる意味を見出すことができるのか。

人生は物語だという。うれしいこと,良いこともあれば辛いこと,悲しいこともある。だから,今は第何章だと思うようにしている。自分は生かされている。だから生きる。いつか良いことが来る。今の辛いこと,悲しいことばかりに気をとられないことだと。

33の見開きで完結するショートエッセイ集。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

御宿かわせみ(25) 宝船まつり

2016-03-20 | 御宿かわせみ
御宿かわせみ25冊目「宝船まつり」1999年3月オール讀物平成9年12月号~10年7月号

冬鳥の恋」
お歳暮に神林の家を訪れたるいは,麻太郎のあいさつを受ける。お吉が聞きつけた噂が,神林家では,麻太郎が通之進とそっくりということから通之進の隠し子ではないかと言う話と,いずれは千春と麻太郎を娶わせ,神林家をつがせるというものであった。
かわせみがなりたつようにいろいろ気を使う同業の藤屋の女隠居おせんが隠居所を建てたとるいは知り,お祝いを持って行く。
おせんは実家の高輪の観月楼の次男宇之助を藤屋の養子として迎え,養女として入ったおすみを藤屋の養女にと考えていた。
その二人はそれぞれ結婚を予定していた。その二人が抜き差しならぬならぬ仲と知った東吾とるいは説得にあたるが。
西行法師の短冊
かわせみに商売に来る小間物屋の弥吉は手先が器用でお吉が贔屓にしていた。
そんな折に,かわせみの近くに質屋の千種屋の若女隠居のお辰が越してくる。
弥吉は偽の短冊を100両でお辰に売ったという。
宝船祭り
正月のかわせみに小田原の名主の倅の嫁おきの30過ぎが泊まりに来る。
東吾は,亀戸村の祭,道祖神祭,宝船祭に東吾は,源三郎と花世を連れていく。
その祭りで2歳の子がいなくなった。
亀戸の名主の娘だったおきのは,8つの時に2歳の弟吉之助をこの祭りで人さらいにさらわれていた。
神明ノ原の血闘」
同心仲間が盗賊の手先に。世も末の物語。京極藩から追放された仁村大助が登場
大力お石」
女中奉公人が変わり,所沢からお石が来た。大女で力も強い。悪がきをしかったお吉が罠にかかる。助けるお石。涙と笑いの痛快編。
女師匠」
お照は深川の料理屋ます梅の娘,お鹿は父は船頭,母はます梅の女中。お吉にわざと当たり,小遣いをくすねる。性悪な2人の娘を,寺子屋の師匠の杉江は見捨てない。
杉江は長寿庵で2人を諭す。東吾は長寿庵へ寄り,蕎麦湯を頼む。丁度その時,杉江が通りかかり,お照が蕎麦湯の桶を杉江に投げつける。火傷を負う杉江はそれでも2人をかばう。
「長崎から来た女」
軍艦操練所の訓練生今崎真二郎28歳が品川の東海禅寺で心中をした。東吾は長崎で今崎と顔見知りになった。
相手は長崎の千波屋のお新。顔は日に焼け,やつれていた。東吾はこの心中に疑問を持つ。
東吾が長崎に文をやる。千波屋の女主人、お景がやってくる。英吉利船に乗せてもらい江戸にやってくる。
お新を妹同様に可愛がっていた。そのお新がつきあっていた男を知っているという。
長崎の女は情が深くて激しい。話
大山まいり
相州の大山寺に詣でた長助。その大山寺に宗太郎の恩師、唐人の徐敬徳、徐大人も参っていたが、行方不明となり、
大崎村の目黒川で死体となって発見される。
東吾は、徐大人が死んで一番得をするのは弟の徐健記だというが証拠がない。
その徐大人が、長助一行に手がかりとなる木刀を渡していた、宗太郎の推理が光る。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

かたづの!

2016-03-13 | book
中島京子の時代小説,「かたづの!」を読んだ。関ヶ原や江戸幕府開幕時代を背景に,東北の八戸南部氏に生まれた姫,祢々,のちの清心尼が主人公。2014年8月刊行。月刊文芸誌に2013年1月から14年2月まで掲載された。
夫や息子が亡くなり,若くして八戸氏第21代当主となった祢々は,叔父の南部宗家,利直と敵対しながらも家を守る女当主だ。南部宗家へ嫁ぐ長女にも自害され,次女に迎えた婿も南部宗家へ召され,ますます孤立感を深める。そして,八戸から南の遠野への移封。南部宗家を討つとの家来を説得し,無事,遠野を居にするも,八戸派と在来の家臣との諍いに巻き込まれる。そのうち南部利直も死んでいく。
次々と襲う苦難に立ち向かう主人公を救うのが,羚羊(かもしか)だ。語り手でもある。
この羚羊は角が1本しかなく,これが題名の「かたづの」だ。死んでも角が救う。また,河童も八戸から遠野へついてきて,助ける。
史実に基づいたフィクションという。緊張の連続の中,角や河童がいい味を出す。伝承やファンタジーに彩られた作品で,中島の才能があふれる。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

沈丁花満開

2016-03-06 | life
今年の沈丁花は,そろそろ散ろうとしている。薄紫の花が満開だ。

きつい香りが伝わってくる。

しかし,高校時代には3月の中旬,終業式の頃か,春休みにこの香りに遭遇したと思う。それが今や3月初旬にまで遡るようになった。

温暖化の影響かな。


コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

「だから,生きる。」

2016-03-06 | book
元シャランQのボーカル,モーニング娘。の生みの親,プロダクションの社長でもある,つんくの「だから,生きる。」を読んだ。2015年9月刊行。
2014年,45歳で咽頭がんの手術をし,声を失う。そして,2015年4月に母校の大学の入学式をプロデュース。

売れてからの30代半ばでの結婚,3人の子どもの誕生,そして,闘病。家族とともに,喜びと不安に正面から向き合う闘病記。
しかし,体が発するサインを見逃すなというくだりはドキッとさせる。医者を信用するなとも。
ジョンとヨーコの生き方,夫として,父として,子育てを通し,どんどん変わっていく姿が「ロック」だよね。
家族のため,ファンのため,社員のため,生き抜く力はすごい。食道発声法にもチャレンジしている。
病はいきなりやってくる。家族を巻き込み,会社に迷惑をかけ,そして,一番しんどいのは自分。こんなに強く生きられるかな。前に進めるかな。
つんくは,これで終わりではなく,始まりなのだという。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする