パンダ イン・マイ・ライフ

ようこそ panda in my lifeの部屋へ。
音楽と本、そしてちょっとグルメなナチュラルエッセイ

瀬尾まいこ⑥ 強運の持ち主

2025-04-06 | book
瀬尾まいこの「強運の持ち主」を読んだ。2006年5月刊行。2004年から2005年にかけて、月刊文芸誌に掲載された4篇を収める。

吉田幸子は、短大を出て、就職したものの3ヶ月で営業職を辞し、占い師になり3年になる。バイトから始めて、今は一人で独立し、ショッピングセンターの2階で店を開いている。名前は、ルイーズ吉田だ。占いに彼女とやってきた、市役所に勤める通彦を相性抜群と知り、彼女と別れさせ、付き合っている。

2月の終わり、ルイーズにもとに小学3年生の少年がやってくる。お父さんととお母さんのどちらを選べばよいのかと。結論が出ないルイーズは、通彦と少年の家を張り込むことにする。ニベア

17歳、高校生の墨田まゆみがやってきた。男性となかよくなりたいという。ルイーズはピンクを揃えたら良いとアドバイスする。しかし、うまくいかない。挨拶をする、髪型を変える、野球の話題を出す。しかし、どれもいまくいかない。その男性は、2年前に母と再婚した義理の父だった。そして3人で映画を見たらとアドバイスするが・・・。ファミリーセンター

11月も終わろうとしている。ルイーズのもとに22歳の関西弁の男子大学生、武田くんがやってくる。就職も決まっているが、ここで占いを勉強させてほしいという。人のおしまいが見えるのだという。ルイーズはそのことを人に伝えてみてはどうかと提案する。そして、武田くんはルイーズに年末までに別れが来るという。
おしまい予言

アシスタントを雇うことにしたルイーズ。師匠のジュリエ青柳から正反対の人がいいといわれたものの、ストレスがたまるばかりだ。竹子は24歳バツイチの一人の子持ちだ。その竹子には恋人がいる。また、市役所づとめの彼、通彦は隣町との合併で仕事を続けるか悩んでいた。強運の持ち主

いずれの作品も、前半のトラブル続きは変わらず、でも、色んな人の手助けで、さわやかな読後感が残る。占い師ルイーズ吉田の続編が出ないか楽しみだ。


コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

瀬尾まいこ② 図書館の神様

2025-03-30 | book
1974年生まれの作家、瀬尾まいこの「図書館の神様」を読んだ。2003年12月刊行。2005年の4月には10刷だ。2002年のデビュー作「卵の緒」に続く2作目となる。

早川清(きよ)は22歳。大学を卒業して、高校の国語の講師をしている。部員一人の文芸部の顧問だ。中高とバレーボール部にいたが、高校3年のときに、自分の忠告が原因と思われる部の同級生の自殺があった。故郷を離れ、地方の大学生活を送り、今は、学校の近くのアパートに住んでいる。

大学2年の時から今まで、2年間不倫関係にあるお菓子作り教室の講師の浅見。、定期的にアパートを訪れる一歳年下の弟、拓実。そして、文芸部部員の3年生の垣内くん。学校、私生活、清のまわりに起きるさまざまなこと。
3月、教員試験が通り、新たな学校へ赴任するため、アパートを引っ越す。その時、3通の手紙が届く。浅見、垣内、そして・・・。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

瀬尾まいこ④ 幸福な食卓

2025-03-23 | book
1974年生まれの作家、瀬尾まいこの「幸福な食卓」を読んだ。2004年11月刊行。03年から04年にかけて月間文芸文芸誌に掲載された「幸福な朝食」「バイブル」「救世主」「プレゼントの効用」の4篇からなる。

中学校教師の父と家にいる母、兄の直と4人ぐらしの佐和子は中学生。しかし、父は自殺未遂、それを苦に母は家を出た。
父は大学受験、母は働き、6歳上の秀才の兄は大学を受験せず、野菜を作る農業団体で働いている。

父は予備校の講師に。兄の恋人、小林ヨシ子。佐和子は中学時代から同級生の大浦くんと付き合い始める。4人それぞれ、自立の道を歩み始める。

そして、運命の佐和子高校2年のクリスマスがやってくる。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

岡本眸全句集

2025-03-16 | book
岡本眸という女性俳人がいる。昭和3年1928年に生まれ、平成30年2018年に90歳で亡くなる。その全句集が2024年5月に刊行された。1万1千円もする。2024年8月に新聞で、有馬朗人の全句集とともに紹介されていた。
その記事の句
崖づたひ日傘たためば身ひとつに
癌育つ身の影折れて月の階
喪主といふ妻の終の座秋袷
ほのぼのと齢忘れてひひなの日

日常を詠った句に興味を覚えた。

2024年9月の新聞で、2024年5月刊行の坂口昌弘の「忘れ得ぬ俳人と秀句」が紹介され、購入した。そこにも岡本眸が紹介されており。その代表句が「梅筵来世必ず子を産むまむ」だった。

「俳句は日記」とう岡本。しかし、俳句は人に評価されるものであることを思えば、日記は作る姿勢を表すものであろう。

その岡本眸の全集を購入した。昭和46年1971年の第一句集から平成18年2006年の第十句集までと平成17年2005年の「一つ音」、エッセイ(「川の見える窓」「栞ひも」から」からなる。巻末に著者解題、年譜、あとがき、初句索引、季語索引がある。
もったいないと思ったものの第1句集から、ひとつずつ朗詠し、季語を調べ、読めない字を電子辞書で調べた。それを鉛筆で書き入れた。
とりあえず、一通り読み終えた。読み返すたびに新しい発見があるのだろう。全句集の読破は初めてのことだ。エッセイも興味深い。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ちっちゃなかみさん

2025-03-09 | book
昭和7年1932年生まれの小説家、脚本家の平岩弓枝の初期の短編時代小説集「ちっちゃなかみさん」を読んだ。
単行本は「女ぶり」として昭和51年1978年初版、昭和62年1987年に文庫化。平成20年2008年改版の初版、令和7年2025年改版19刷だ。まさに半世紀にわたり刊行され続けている。
きっかけは年末年始のラジオの朗読の時間だ。ちっやなかみさんが女優の高島礼子さんの朗読で放送されていた。起承転結のすばらしさ、主人公がどんどん変わるみごとさ、最後の大団円など、読みどころ、聞き所満載だった。図書館で借り、手元において朗読したいと思った。

平岩は2023年令和5年に91歳で亡くなる。1974年昭和49年から30年以上にもわたるの御宿かわせみシリーズ、ドラマ脚本として、肝っ玉かあさんシリーズ1968年昭和43年から72年ありがとう1970年昭和45年から73年、大河ドラマの新・平家物語72年昭和47年などがあるという。テレビはリアルタイムで見ていた世代だ。
昭和34年1959年に鏨師で直木賞。27歳の若さだ。
この短編集は直木賞直後の昭和35年から46年までの10篇を集めている。

ちっちゃなかみさん 昭和40
向島の豆腐料理で有名な笹屋の一人娘、お京は二十歳になる。よい婿をと両親は問うが、豆腐屋の信吉と添いたいという。調べてみると、11歳の加代と弟の治助と暮らしているという。二人は信吉の姉の子だった。
邪魔っけ 昭和39
豆腐やのおこうは25歳。父と妹のおせん、弟の常吉二十歳。末妹は15.のおかよと暮らすしっかりものだ。同じ町内の長太郎は、仕出しやの若旦那だったが、つぶれてはんぺんやの丁稚をしている。
小さい頃から妹弟の世話をしながら豆腐やを手伝ってきた。しかし、妹弟は、次々と問題を起こす。そんな時に、長太郎がおこうに結婚してくれという。
比佐とよめさん 昭和40
比佐は27歳、弟の正太郎を一人前にして、所帯を持たせ、家業の質屋を継がせることを夢見て、励んできた。その正太郎も21歳になった。嫁にもらいたい人がいると比佐に切り出す。比佐は、相談しに、正太郎の通う長唄の師匠、由起を訪ねる。由起は、比佐と同い年だった。
親なし子なし 昭和44
呉服商の後妻、志乃33は、前夫の息子、一太郎16に手を焼いていた。昔、同じ長屋に住んでいた、母一人、子一人の幸吉が仕立ての仕事ができたと店にやってきた。幸吉は、市太郎より4つ上だった。母親は、男の出入りが、絶えなかった。
なんでも八文 昭和46
つきごめ屋の四代目、幸太郎は信濃からの奉公人。店の一人娘のみつと結婚した。その幸太郎の妹、しっかりもののゆいは兄のつきごめ屋の手伝いをしている。22になる。縁談が次々とあるが、ゆいに頼りきりのみつが難癖をつけてまとまらまい。料理屋八りきの若旦那、新吉がゆいを見初めたが、断っていた。その八りきの店子が火元となった。新吉は、対応に追われ、八りきも傾く。
かみなり 昭和41
長崎奉行所のポルトガル通訳、米屋の倅、来助は60歳近い。長男、新太郎の許嫁、梢が外国人に手込めにされたことで、家庭内がギクシャクし始める。次男、栄次郎、長女おはつも家を出ていってしまう。妻のおくめも。そして、玄関に混血の女の子が捨てられていた。
猩々乱(しょうじょうみだれ) 昭和36
宮増流鼓打の当主、小左衛門が乱心した。内弟子から養子に入った小太郎は、上覧能に、猩々乱が、入っているのを知る。小太郎は、伝授を受けていなかった。
遺り櫛(のこりぐし) 昭和35
河内の里の中井家に京の呉服屋、折江が注文の品を持って訪ねてくる。そこには、当主の姉が住んでいた。禁裏の不正を探るため、役人の元へ嫁いでいた。
赤絵獅子 昭和37
鍋島藩有田焼。その陶技は非公開にされていた。その総仕上げを担う赤絵。赤絵屋の小柳家。跡目相続を終えた万作は、小柳家と取引のある窯業の職人、治助から会いたいと手紙をもらう。治助の掛け守りの梅の字について話したいというのだ。万作は捨て子だった。
女ぶり 昭和44
亀治は、神田の舞踏の師匠。19の年に大奥に上がり、25で子を宿し、家に帰ってきた。娘のおあいは17になった。縁談が次々と来るが、父親の事に触れられ、その都度、亀治は口を閉ざし、縁談を断っていた。

年代順に並べると以下のとおり。
遣り櫛35、猩々乱36、赤絵獅子37、邪魔っけ39、ちっちゃなかみさん40、お比佐とよめさん40、かみなり41、女ぶり44、親なし子なし44、何でも八文46
赤絵獅子37と邪魔っけ39に大きな変化がある。硬い「漢文調の時代小説が、人情ものに大きく変化している。解説によるとこの頃、結婚や出産、師の長谷川伸の死など、大きな人生の転機があったとある。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

瀬尾まいこ③ 天国はまだ遠く

2025-03-02 | book
瀬尾まいこの平成16年2004年刊行の「天国はまだ遠く」を読んだ。文庫版のあとがきによると、自身が教員だった時代に丹波の中学校に赴任した経験で書いたものとある。
鳥取や京都よりも北の日本海が見える村にやってきた。目的は私眠薬で自殺すること。大学を出て保険会社の営業職になったが、仕事に職場に行き詰まり、木屋谷の民たむらを紹介される。民宿の主人は30歳の男性で一人でやっていた。自殺は失敗に終わり田村に誘われ、、海釣り、星空観察、ニワトリ小屋掃除、飲み会を体験するうちに、大事なものはたくさんあったような気がするのに、今となってはすべてが取るに足らないものに思えた。幼い頃は一生懸命まじめにやりさえすれば大人は評価してくれる。でも高校生にもなるとちゃんと現実を教えてくれる。いくら努力しても下手なものは下手。時間をかけようが手間をかけようが関係ない。
暮らし始めて何をするのか見つからないまま、時間が過ぎていく。ここにいてはいけない。休むのはおしまいだ。なにかしなくちゃ。11月の21日間の再生の物語。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

瀬尾まいこ① 卵の緒

2025-02-23 | book
1974年生まれ昭和49年生まれの作家、瀬尾まいこさんの作家デビュー作「卵の緒」を読んだ。2001年平成13年に本作で文学賞受賞。2002年に、「7’s blood」と併録で刊行。
卵の緒
小学5年生の育生が主人公。母親と二人暮らし。近くに祖父母もいる。母親は努め先の浅井さんと付き合っている。育生の学校生活や出生の秘密が、ふんだんな親子の会話の中で明らかになる。
7’blood
高校生の七子は母親の違う小5の七生と暮らし始める。父親は亡くなり、七生の母親は刑務所に入っている。七子の母親が入院し、二人きりの生活が始まる。
小気味よい会話、ほろっとする情感、
ぎすぎすした現代、読後の清涼感はいい。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

瀬尾まいこ⑱ 夜明けのすべて

2025-02-16 | book
1974年生まれの瀬尾まいこの「夜明けのすべて」を読んだ。2020年10月。

社員6人の小さな会社、栗田金属。建築資材や金物をホームセンターや商店に卸している。そこに就職して3年目の藤沢美紗28歳と2年目の山添孝俊25歳。藤沢は毎月起こるPMS(月経前症候群)、山添はパニック障害のため、大学を卒業して就職した会社を辞めていた。
その二人が、なんとなくお互いの病気に気づき始める。山添の髪切りやお守り事件、事務所の片付け、クイーンのサントラ鑑賞、藤沢の盲腸入院など、さまざまな出来事を通し、二人は近づいていく。
病気を抱えて、生きづらさを感じている人はきっと多いに違いない。焦らないで、ゆっくりでいいよと、彼らを温かく見守ることができるのか。
20代の若者たち。働かなければ収入がない。仕事がなければすることはない。本人は病気のことを周りの人には知られたくない気持ちがあるだろう、今はもとより、将来への不安や焦りを抱えているだろう。
この本で、病気を知ることもできた。また、病気のつらさ・不安も随所にちりばめられている。普通とは何だろうか。読後の思いだ。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

かえるくん、東京を救う

2025-02-09 | book
村上春樹の「かえるくん、東京を救う」を読んだ。これも新年にラジオ朗読で放送されていた。図書館で調べると文芸春秋社の「はじめての文学」シリーズ全12巻の中の村上春樹の中に所収されている。17の短編の一つだ。図書館ではYAというヤングアダルトのコーナーにあった。これは主に中高生のためのコーナーだ。

信用金庫に勤めて16年、独り暮らしの片桐のアパートに、身長2メートル以上のカエルが現れる。ミミズと戦い、東京を地震から救うので手伝ってほしいというのだ。

村上のあとがき(かえるくんのいる場所)によると、このシリーズは、若い人々が読むための短編小説集が編纂方針らしい。村上も、これまでの作品から自選したという。巻末に、それぞれの作品にコメントが寄せられている。

春樹ファンならこういう切り口も満足いただけるのではないか。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

瀬尾まいこ⑩ おしまいのデート

2025-02-02 | book
1974年生まれの瀨尾まいこの「おしまいのデート」をよんだ。表題作他四編の短編集だ。2003年、2005年に月刊誌に掲載された。2011年1月第一刷。

中学生の彗子は、小4の時に両親が離婚。父が再婚したため、父の父、おじいちゃんと月に一回、会う。その母も小学生の男の子を持つ男性と再婚することになり、おじいちゃんとさいごのデートをする。おしまいのデート。
高校卒業し、スーパーに勤めた三好。高校時代に喧嘩かきっかけで、高校教師の上じいに毎月玉子丼をおごってもらっていた。卒業後は、退職した上じいに玉子丼をおごっていた。二十歳になった三好は、上じいに天丼をおごろうといつもの店で待つ。ランクアップ丼
高校二年生の広田は野球部。2月のある日、同じクラスの宝田からデートに誘われる。宝田は、男子だった。ファーストラブ。
32歳のOLの私は、バツイチ。通勤途中の公園で捨て犬を見つける。そこにいつも置いてある中華料理。大学生の内村君が持ってきたものだった。ドッグシェア。
保育士の祥子は、担任のカンちゃんのパパ、妻を亡くした脩平と恋仲になる。三人の初デートを考える祥子。デートまでの道のり

新年のラジオの朗読で「デートまでの道のり」が再放送されていた。瀬尾作品は初めてだ。
軽妙な語り。読みやすく、分かりやすい文章。いずれもほっとできる秀作ぞろいだ。人気作家の理由がわかる。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする