パンダ イン・マイ・ライフ

ようこそ panda in my lifeの部屋へ。
音楽と本、そしてちょっとグルメなナチュラルエッセイ

うちの子になりなよ

2016-05-29 | book
古泉智浩の「うちの子になりなよ」を読んだ。新聞書評から。平成25年12月刊行で,その月にいきなり2刷だ。サブタイトルは「ある漫画家の里親入門」。古泉は1969年生まれの漫画家。

前半は,新生児の子育て日記。里親として病院に行くところから,1歳過ぎまで,妻と母親との暮らしぶり。32の章ごとに自身の4コマ漫画で奮闘ぶりが描かれる。
後半は,里親入門。実子のこと,結婚感,不妊治療のこと,里親を決意する経緯,里親たちとの交流,児童施設の子たち,児童相談所のことなど,実の親が育てられない複雑な事情の中で,里親たちも複雑な感情を抱きながら,子どもを育てる。養子とは異なる里親という制度は,親権はないが,養育権があるという。

不妊の夫婦が里親を望むケースも増えているという。需要と供給という経済マターではない,人間同士の複雑な心が,そこにはある。里親ゆえの子育ての喜びと不安を吐露した作品。
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羊と鋼の森

2016-05-15 | book
羊と鋼の森。タイトルから何を想像するか。読みながら,そうかと合点がいった。

自らも長い年月ピアノの弾いてきたという宮下奈都の「羊と鋼の森」を読んだ。2015年9月刊行。1967年生まれ。一世代下の彼女が,就職した若者の心のひだを丁寧に書きあげた。2004年に作家デビュー。この作品で直木賞候補に。

北海道が舞台。高校2年の2学期,17歳の僕,外村くんは,学校のピアノの調律の場面に出会う。江藤楽器の調律師,板鳥宗一郎だった。まさに運命の出会いだった。その後,2年間,調律師になるため,都会の専門学校へ通い,この江藤楽器に就職する。秋野,柳と言った個性的な先輩に教えを乞いながら,キャンセルや担当替えなど,お客とのトラブル,要望など,さまざまな壁にぶつかりながら,一歩,一歩成長していく。外村の疑問に真摯に向き合う江藤楽器のみんながいい。

双子の和音と由仁,引きこもりの男,プロのピアニスト上条,そして弟。ピアノ相手の調律師だが,そこにはピアノを奏でるピアニストがいる。音楽を聞く聴衆がいる。だれのために何のために,88の鍵盤を12の音階を合わせるのか。

それにしても誰がこの音階を考え,決めたのか。音楽と言う不思議な空間を思った。
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みかんの花咲く

2016-05-14 | life
みかんの花が咲いている~。戦後直後の昭和21年に大流行した「みかんの花咲く丘」の冒頭のフレーズだ。

5月の連休が終わり,5月5日は立夏。いよいよ夏本番となります。夏野菜も花をつけ,畑が華やいだ雰囲気になります。ナスは紫,きゅうりやナス,ピーマンは黄色。
そして,我が家には白い花が・・・。みかんの花です。

かれんで,すぐに散りますが,みかんのこどものような小さい実がなっています。これが濃い緑色に変わり,大きくなり,来年には黄色くなります。

いとおしい白い花です。
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トットひとり

2016-05-08 | book
「トットひとり」は黒柳徹子が21015年4月に刊行したエッセイ集。題名のとおり,知人が一人一人そばからいなくなりる寂しさ,そして,これからの人生に向かう心の整理をつけるための過程を描く。

2013年8月,ザ・ベストテンをつくった山田修璽
1981年8月,直木賞作家,脚本家の向田邦子
2009年,96歳で往生した森重久彌
1996年8月 渥美清,沢村貞子
1985年8月 坂本九
2014年 俳優の高橋昌也
1991年 俳優の賀原夏子
2010年 井上ひさし,つかこうへい

それぞれの壮絶な人生を,楽しかった思い出を,寂しさとともに綴っていく。亡き人たちへのレクイエム。よくシーンを覚えているなあと感心するばかり。それにしても,出てくる人名を,その風貌とともに思い浮かべることができる。その下限年齢かなと思う。それぞれ,テレビで大活躍した人たち。今のテレビとは違う位置なのだ。あの当時,テレビは家庭の中に存在していた。テレビ抜きには,日々はなかった。今は,家庭の周辺にいるテレビ。

自分の伯叔父,伯叔母も一人一人この世を去っていく。寂しさばかりが募る。子どものころの楽しい思い出,大人になってからのお付き合い,そんな人の温かみが一つ一つなくなっていく。つらいエッセイ集。
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紫陽花 万華鏡

2016-05-05 | life
露地の紫陽花は,まだまだですが,母の日に先駆けて,鉢植えの紫陽花を我が家にいただきました。直射日光は避け,水やりをきちんとすべしとのことです。

母の日と言えば,カーネーションでしたねえ・・・。ホームセンターに行くと,紫陽花は大きな場所を与えられていました。

時代とともに移りゆく嗜好。昨日からの強風に家の中で,涼やかな姿を見せてくれています。



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御宿かわせみ(27) 横浜慕情

2016-05-04 | 御宿かわせみ
御宿かわせみ27冊目「横浜慕情」
2000年4月 初出オール讀物 平成11年6月号~12年1月号
三婆」
琴江が麻生家に残した貝合わせの貝桶。神林家の麻太郎のもとへ。片方の貝のない花月の話。
霊巌寺の富くじ騒動。3人の姉妹。長女のおつる。61歳,菓子屋の巴屋。
次女のおかめ60歳。小間物問屋の三河屋。
三女のおよね59歳。瀬戸物屋の河内屋。
おつるが自分の買ったくじか,おかめからもらったくじか。2枚のうちの1枚が百両が当たった。
もめる姉妹。結局,およねのものに。瓦版にまでなる。その三河屋に泥棒が入った。
同じような富くじ当たった店に泥棒が。口の悪い3姉妹の富くじ始末。
鬼ごっこ」
長助がおとよという30の娘を連れてかわせみに来る。
7つの時に別れた母親に会いに来たという。
飯倉の紙問屋遠州屋の娘お信は,18の時に伊太郎と駆け落ちしたが,22年前の8年後に別れ,
伊太郎はおとよを,お信は息子の吉之助と妹のおすみを引き取り,遠州屋に帰る。
お信に会いに行ったおとよは,お信のつれない態度にかわせみを出ていく。
しかし,その後でお信がかわせみにおとよを訪ねてくる。
縁のない母子。悲しいすれ違い。
烏頭(うとう)坂今昔」
かわせみの番頭の嘉助が煙管の修理を煙草職人の万三に頼む。万三は子連れの後添えをもらい幸せそうに暮らしていた。
しかし,万三には,17の娘との悲しい別れの過去があった。その娘と駆け落ちをした男との再会。
浦島の妙薬」
花世との約束で横浜行きをする東吾。宗太郎,源太郎,お吉,長助と東海道を歩く。その途中でかわせみの常連,浦島太郎兵衛に聞いた,浦島村に寄り,浦島太郎の墓と玉手箱を見る。その太郎兵衛の弟次郎兵衛は百姓をして土地を守っていた。
その太郎兵衛が神奈川宿の飯綱権現に登り,倒れて急死する。太郎兵衛と土地のことで揉めていた次郎兵衛は,自分が殺したと東吾に話すが,宗太郎は心臓の病が原因と主張する。
横浜慕情」
横浜見物をする東吾たち。そこで東吾が長崎にいたときに知り合った英吉利舟の水夫,ジョン・バックルと会う。バックルは下着姿で首をくくろうとしていた。美人局で騙されて,身ぐるみはがされたらしい。東吾が交渉に行くと,そこ昔,深川にいた東吾を知る女に出会う。
鬼女の息子」
中山道の大宮から40半ばの百姓の彦作がかわせみを訪ねてくる。娘のおくみが3年前に大川端のみなと屋という旅籠に奉公に出たが,その娘を訪ねてきたという。しかし,そういう旅籠はなかった。
その彦作が神田川で死体となって発見された。
その数日後,根岸のひさご屋の女郎が東吾の前で「安達が原の鬼婆」といって絶命する。おくみだった。
江戸へ奉公といって娘を騙し,女郎屋に売っている女衒がいるのではと通之進は東吾に大宮行きを命じる。
大宮で娘たちに江戸の奉公を世話していた幸助は,近くの足立ケ原の出身で,そこには母親のおかねが住んでいた。
有松屋の娘」
江戸で有松染めを扱う有松屋の半兵衛が娘のおきた15歳をかわせみで住み込みで奉公させてほしいと頼みに来る。
おきたは死んだ女房の連れ子だった。
そのおきたは実の父の顔を見に行くと,有松の橋本屋へ出かける。
その間に半兵衛は後妻をもらっていた。
半兵衛がおきたの母おさんとの思い出の煙草入れを,おきたの旅費に当てたことを知ったおきたは,江戸を去る決心をする。人の心のはかなさ。
橋姫づくし
60歳過ぎの女隠居がいなくなる事件が相次ぐ。身代金を要求され,お金と引き換えに帰るという手口。それ嫁姑の中が悪く,隠居が店の実験を握っている家だ。
ただ,日本橋の薬種問屋の紀伊国屋のおとらは,宗太郎の母の実家今大路家へ行くと言って家を出たという。宗太郎が,源三郎が東吾に相談を持ちかける。
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濹東綺譚

2016-05-03 | book
永井荷風の「濹東綺譚(ぼくとうきたん)」を読んだ。永井荷風は,明治生まれ,昭和34年に80歳で亡くなる。この作品は,昭和12年(1937),荷風が58歳の時の新聞小説に掲載され,好評を博したという。中国の漢文学に造詣が深い荷風らしい命名で,隅田川の東を濹東とし,美しい優れた・話という意味で綺・譚」とした。

東京向島の玉の井にある遊里に住む20代の雪子との出会いと別れ。主人公のわたくし,大江匡は60過ぎの設定だ。季節は6月の末から9月の彼岸の頃までの暑い季節。当時の東京の地名,風情,習慣,世相が詳しくつまびらかに書かれている。その観察力と感受性には驚くばかり。登場人物は基本はお雪さんとわたくししか出ないが,世の中から一歩引いて身を置く作家のわたくしが,雪子を温かく見守る視線が貫かれる。中に,小説の推敲を重ねるわたくしの語りもあり,作品に花を添える。

官僚の家に生まれ,反骨の作家としての永井荷風の破天荒な人生は,もちろん専門家ではない自分にとっては論ずることもできないが,昭和7年には5.15事件,この昭和12年には中国で盧溝橋事件が起き,国内の不安と大陸でのきな臭さが一段と増すなかで,年離れた男女の日々が世の中に受け入れられたのも永井荷風の意地だったかもしれない。

なぜ,今永井荷風なのか。以前読んだ山田太一のエッセイ集,「夕暮れの時間に」に荷風の随筆が紹介されていた。独身を通した荷風の理由が書かれていたものだった。それを図書館で借りて読んだことから興味を持った。それは西瓜(すいか)というエッセイで,岩波文庫の「荷風随筆集の(下)」にあった。この「濹東綺譚」は新潮文庫版で読んだ。平成26年7月で84刷である。
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おっかなの晩

2016-05-01 | book
折口真喜子の「おっかなの晩‐船宿若狭屋あやかし話-」を読んだ。2015年11月刊行。
折口は2009年に文芸誌新人賞受賞,2012年に単行本デビュー。
江戸,箱崎の船宿,若狭屋の若女将,三十路のお涼の不思議な経験を綴る時代劇ミステリー。副題のあやかしとは海の妖怪のことだそうだ。転じて不思議なこと,怪しいことをいう。

狐憑きといわれ人気が落ちていた遊女清里が力強く生きていく「狐憑き」。

田舎から出てきた留吉が,江戸のお寺で修業する,幼馴染の善蔵に会いにくる「おっかなの晩」。

薬師問屋へ嫁いだお信の息子,正次郎を,若狭屋の船頭,佐七が船に乗せるが,ふとした隙に船からいなくなってしまう「海へ」。

酒問屋の若旦那と幇間が若狭屋を訪れる。そこで幇間が語る怪談話の行く末。「夏の夜咄」。

お涼が母親の田舎へ行く。そこで出会った老婆との出来事。「鰐口とどんぐり」。

役者崩れの中蔵の復活劇。「嫉妬」

お涼の小さい頃の体験。死にかけたお涼を救ったのは。「江戸の夢」

武家の子供,竹丸は,死んだ兄に会わせてほしいとお涼を訪ねてくる。「三途の川」

熊本在住という折口が,紡ぎだす怪しげな怪談話。8つの短編からなる,ほのぼのとした人情味あふれる作品群。
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