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パンダ イン・マイ・ライフ

ようこそ panda in my lifeの部屋へ。
音楽と本、そしてちょっとグルメなナチュラルエッセイ

正義のセ 1

2013-07-28 | book
若き女性検事、竹村凛々子(りりこ)の成長を描く『正義のセ 1』。エッセイシスト、小説家の阿川佐和子の作品。今年2月刊行。2011年に月刊誌に連載されていた。
タレント業もこなす阿川は、1953年生まれで、父親は作家の阿川弘之である。実は、阿川の作品は初めて読んだ。ほんとうに見知らぬ作家がまだまだいる。未知の世界は、怖くもあり、楽しみでもある。

新聞書評で、事件性を強く感じたのだが、ほのぼのとした家族愛、男性社会の中で、たくましく生きる凛々子。見守る上司や同僚、そして、とにかく温かい家族。まさにホームドラマだ。読んでいて、ほっとする。そういえば、キムタク主演で、検事ドラマがあったな。少し見ていたので、検事の世界には違和感なく入れた。

50年も続く、東京月島の竹村豆腐店。小学生の凛々子が、近所の強盗殺人事件と遭遇する。転校生を巡り孤立する凛々子。世の中の理不尽さと出会う。検事を目指すきっかけになるエピソード「妹の散歩」。6つ下の妹、温(ハル)子。父の浩市、母芳子、おばあさんの菊江と家族も揃う。いよいよはじまりはじまり。冒頭の豆腐屋の描写は、早朝の締まった空気、蒸気や水の透明さなど、豆腐のできあがりがうまい具合に描かれる。全編を通し、この温かさがなんともいえない。

検事として登場する凛々子。25歳の春。さいたま地検に配属され、交通事故の事案を任される。「夜明けの家族会議」。遺族が、犯人の若き社会人をかばう。
最後の3章は「どうせ私はダメダメの、ダメ女ですよ」。検事4年目を迎えた横浜地検で暴力団の若き組員を取り調べる。辣油が凛々子を救う。どれも人情あふれる一品。
若者だから、恋愛や仕事、友人関係、家族の悩みも登場。まだ、続編も出ている。家族を含め、皆の成長が楽しみ。

松山ケンイチの「敗者」

2013-07-21 | book
新聞書評から、松山ケンイチの「敗者」を読んだ。2013年2月発刊。松山といえば、不評といわれていた昨年2012年のNHK大河ドラマ「平清盛」の清盛役。
2011.3.11の東北大地震から始まるこの本は、2012年10月までの1年2ヶ月にわたる清盛としての撮影記録である。そして、高校2年のときに、生まれ育った青森を出て、オーディションのため上京、俳優デビューから、結婚、子供の誕生。これまでの生き様も記している。撮影の中で、彼の人生観、役者としてのこだわりが明らかになる。

妙なプライドを捨てよ、そして、まわりにあるたくさんのヒントを吸収せよ。真似よ。
いやな人も少なからず自分に影響を与えている。それが、自分を形成するのに必要な出来事なのだ。
ヤク作りや体調維持の試行錯誤
スタッフへの感謝
気分転換のため現実に戻る公園での家族と過ごすひと時
朝から気合を入れる「牛丼」

清盛という波乱万丈の一生を演じる過程で、成長する松山の姿。悩みぬいても充実の1年だったのではないか。

失敗や挫折は時に人を落ち込ませる。しかし、決して時が最終点ではない。成功や強さを手に入れる過程なのだ。それを知らないと失敗や挫折は落ち込むだけのしろものになってしまう。
希望は今、幸せは今、笑顔は不変ではない。夢中になって生き尽くすことで笑顔が生まれる。
岸が見えなくてもとにかく泳ぎ抜くこと。不安でどうしようもなくても止まらずに進む事だけを考えよ。
清盛はまさに「敗者」なのだが、その生きている間は、貴族政治への決別し、武士と言う時代を切り開く役割を担った。
成功は最初から約束されているものではない。あの手この手を探っていくこと、もがいて生きていく。人生、夫、父、地方出身者として常にそうありたいと。
震災を経験し、妻と子という家族を持った27歳のケンイチはそう思う。

平家は源氏に滅ぼされたが、清盛は決して敗者ではないと思う。自分の信念、思うところで生き抜くところに、挫折や笑顔がある。何も起こさないところには何も生えない。清盛の生き様とケンイチの生き様が重なり合い、生き抜くことの大切さを感じさせてくれる。

いちばん長い夜に

2013-07-15 | book
芭子と綾香シリーズの3作目、『いちばん長い夜に』は最終章。2013年1月刊行。掲載7年目での終了。6つの作品から。

老舗の和菓子やの家族のいがみ合い巻き込まれる芭子。「犬も歩けば」
綾香のパン屋に、パンの耳を買いに来る男性がいる。銀杏拾いに興じて、頼まれたゴミ屋敷の掃除。綾香にもたらされた縁談。「銀杏日和」
綾香の代わりに、子供の行方を捜しに東北へ行く芭子。その日におきた東北大震災。実際の乃南の体験をもとにした「その日にかぎって」
震災の日に出合った男性と、タクシーに乗り、東京へ。緊張感あふれる時間。「いちばん長い夜」
震災の一夜をともにした男性は弁護士の南だった。過去をすべてを話す芭子。東北へ支援に向かう綾香を怒らせた風評被害。パン屋をやめる綾香。巡査の高木も東北へ。「その扉を開けて」
震災支援ボランティアで知り合ったパン屋に勤めることになった綾香。南との交際に向け少しずつ歩みを始めた芭子。三人で谷中のアパートで繰り広げられる心の叫び。震災1年目の夜。「こころの振り子」

いつもハラハラの2人。つらい過去の中で、日々の暮らしは続いて行く。でも、人との関わりはいろんな意味で2人をいやがうえにも巻き込み、エピソードをもたらす。

乃南は、四季折々の草木や食事を織り込みながら、何気ない2人の暮らしを彩り、ゆったりした文体の中にも、緊張感をちりばめる。そして、2人の成長を確実に伝えてくる。これ以上の成長は、もう2人一緒にシチュエイションはいらないのだろう。筆を置く理由もそこにある。2人の生き方をもうしばらく見ていたかったのだが。確かに、生まれるのも1人、死ぬときも1人。綾香の言葉に、成長、加齢は、いずれ人に別れをもたらすという不条理を感じた。しかし、それがゆえに人は日々を生き続けるということも。



すれ違う背中を

2013-07-14 | book
過去の罪を償いひっそりと東京の下町で暮らす小森谷芭子と江口綾香のコンビが織り成す人生模様。乃南アサ作品の第2弾が、『すれ違う背中を』だ。2010年4月刊行。4つの作品から成る。

綾香がくじで当てた大阪USJの旅。そこでであった綾香の高校時代の同級生。彼も離婚し、子供を手放していた。故郷には戻るなと彼は綾香に言う。「梅雨の晴れ間に」
ペットショップで、ペット服の編み物をしだした芭子は、次第にそのおもしろさに引かれていく。そんな日常の中で、近所の教師一家を襲うストーカー事件。「毛糸玉買って」
綾香が連れてきた男性。3人で会う日が続く。そんな時、近くの駐在所の巡査、高木は芭子に会わないほうがいいと忠告する。「かぜの人」
芭子と綾香がたまに行く土佐料理の「おりょう」。そこで働く女性に振り回される2人。「コスモスのゆくえ」

前科を恐れ、ひっそりと暮らす二人。それぞれ、生きる目的をはっきりと持ち始めた。これから、世間を2人はどう巻き込んでいくのか。家族と切り離されて、1人で生きる二人は、「幸せ」を、どうつかんでいくのか。

20台をふいにした30歳の芭子と、夫の暴力に悩み傷つき、生まれたばかりの子を手放した40過ぎた綾香に「平穏」とう日々は訪れるのか。続編が楽しみだ。


テレビ体操

2013-07-13 | health
実は、今年の4月からテレビ体操にはまった。というのも、ラジオ体操をしていて、これが正しいのかどうか不安にかられたのが真相。やはり目で見て、動きを確認したいと。
これに輪をかけて、先月、ラジオ体操講習会に出かけた。講師の西川佳克さんに会いに行くというものいいかなと思った。この写真は、その時にもらったパンフ。絵で覚えるとはなっているが、やはり、目の前の動きと説明には、とうていかなわない。
いろいろ勉強になった。足首の動きをはじめ、それぞれの動きの意味。力の入れ方。第2は強弱があり、次への動きが前の動きの終わりに入る。などなど。
テレビ体操は、NHK教育、いわゆるEテレで朝、6時25分から10分間。ラジオ体操より5分早いが、太極拳のようなみんなの体操もおもしろい。




宮部の江戸人情もの「桜ほうさら」

2013-07-07 | book
「桜ほうさら」は、宮部みゆきの時代小説。2013年3月刊行。2009年から2012年の約3年半の連載を受けて出された。江戸情緒あふれる、人情絵巻といった、いつもの宮部のいい雰囲気を満喫できる。

ほうさらは、ささらほうさらという、いろんなことがあって大変と言う意。22歳の古橋笙之介が主人公。武士の家に生まれ、父の不祥事で家は存続の危機を迎えている。母と兄に馴染めず、悶々と過ごす日々の中、父の死の謎を探るため江戸へ出ることになる。

宮部の江戸模様は、長屋の人々、暮らしがいきいきと描かれるので楽しみ。「桜ほうさら」も懸命に日々を生きる市井の人々が「笙さん」を支える。

写本で生計をたてる笙之介。長屋の花見をモチーフに本作のイントロ「富勘長屋」
暗号を用いた「符丁」の文書で悩むある藩の重役、長堀金五郎を助ける「三八野愛郷録」
商家の娘がいなくなった。そこに流れるさまざまな人の思い。「拐かし」
父を追い込んだのは誰なのか。全編を通じて、この作品の根底に父の死の謎がある。「桜ほうさら」

体に痣のある商家の娘、和香が笙之介の交流で徐々に心を開くのも、よいアクセント。江戸留守居役坂崎重秀(東谷)や料亭川扇の梨枝、浪人武部先生など、大人のキャラも魅力的だ。
起こし絵、符丁、代書など、字や文書の世界をベースに組み立てられる若い2人の成長。
ほっこり、ゆったりと流れる宮部ワールドに浸るのもよし。三木謙次の暖かい挿絵も気に入りました。