パンダ イン・マイ・ライフ

ようこそ panda in my lifeの部屋へ。
音楽と本、そしてちょっとグルメなナチュラルエッセイ

今だから「方丈記」 1 市古「岩波」

2019-07-28 | book
「方丈記」。京都に生まれ、暮らした鴨長明(かもの ながあきら)の1212年、58歳の時に書いた古典。枕草子、徒然草と並ぶ3大随筆。長明は1155~1216。数え年で62歳で亡くなる。

岩波文庫の「新訂 方丈記」は、平成元年(1989)5月発刊。平成29年(2017)4月に44刷だ。校注は、中世日本文学者の市古貞次(いちこ ていじ)。明治44年(1911)生まれ、平成16年(2004)年に亡くなっている。

本文の下に脚注を施し、語句の説明をしている。補注もあるが、言葉の意味ではなく、関連する文章などの事項だ。後半に底本とした大福光寺所蔵の方丈記が載っている。現代語訳はない。
巻末の解説は「長明の略伝」と「方丈記について」である。市古は方丈記を5段に分けて解説している。

岩波は、原文を読ます。原文は、声に出しても黙読しても、現代語訳では味わえない、響きや意味合いがある。現代語訳は、押し付けのような感じがして好きではない。もちろん脚注だけでは、理解できない言葉があるので、古語辞典はもとより、他の本を参考に、意味を本に書き入れている。これがよい。鎌倉時代の空気に触れているような気がしてくる。

定年退職の直後、平成30年(2018)4月2日に購入した。晩年、命の尽きるのを見据えながら、天変地異や世相で世の無常を説き、自らの生きざま、人生観を赤裸々に綴る。こういう風に生きているのだと時に強がり、時に寂しがる。人間長明の人生哲学がある。
さすがに教科書で習う中学生や高校生では、この心境、わからねえだろうなあ。今だから染み入る方丈記だ。
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再婚 吉村 昭 56

2019-07-21 | 吉村 昭
吉村昭の短編集、「再婚」平成7年刊行。8つの短編からなる
「老眼鏡」(平成7年)。結婚を前にした後輩の時田に儀式を済ませたいと相談を受け、昔の下宿主の梅川のおばさんを紹介する成瀬。
「男の家出」(昭和61年)。夫婦生活に疲れた義兄は、家出をする。その義兄が急死。その遺体をめぐる女とのやり取りを綴る。
「再婚」(昭和62年)。常見は3年前に妻を病気で亡くす。58歳になり、友人の勧めで見合いをする。昔、好意を寄せていた会社の同僚、裕子と会うが・・・。
「貸金庫」(昭和62年)。心筋梗塞で亡くなった53歳の兄には27歳の愛人がいた。弟の信彦はその愛人からある頼みごとを託される。
「湖のみえる風景」(昭和55年)。箱根のホテル経営者峯子は50歳。27歳の時に夫を亡くし、息子の耕一と暮らしている。そこに起こった無理心中事件。
「青い絵」(昭和50年)。2年前に亡くなった弟の3男潤が3度目の家出をした。その原因が、潤が書いた水彩画にあるらしい。その絵は「家族」。
「月夜の炎」(昭和57年)。空襲警報が発令、そこに敵機が墜落する。
「夜の饗宴」(昭和37年)。駅前のネオン広告戦争に巻き込まれる下請け社員の広野の末路は・・・。社会派短編。

昭和60年代の短編は、著者の投影かと思わせる兄弟や妻の死を通して、心の揺れを描いた秀作である。

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コルトM1847羽衣

2019-07-15 | book
月村了衛の「コルトM1847羽衣」を読んだ。2018年1月刊行。週刊誌に2016年8月から2017年5月まで連載。月村は1963年生まれ。2010年小説家デビュー。

江戸の侠客の娘として生まれた羽衣お炎22歳。豪商四海屋幸兵衛を助けた縁で、アメリカ人直々に教えられ、アメリカの銃、コルトM1847ウォーカーを扱う。装弾6。44口径。大型パーカッション式リボルバーだ。

お炎11歳の時、花火見物の夜に出会ったのが薩摩藩江戸屋敷お留守居役の3男、青峰信三郎だった。信三郎13歳。その後、二人の交流が続くも、信三郎が、藩の御用で出かけ、行方知れずになった。四海屋によると信三郎が佐渡の金山にいるらしい
島には島民や金山人足をはじめ始め、奉行所を巻き込んだオドロ様を崇める怪しげな宗教が蔓延っていた。オドロ様や信者には、頭頂部から左の頬にかけて彫り込まれた赤い大きな傷があった。
お炎は軽業師おみん。四海屋に雇われた渡世人の玄人集。玄人集の頭の与四松、仲間に引き入れた佐渡奉行所の高田壱市右衛門。多くの手助けを得て、信三郎の救出に向かう。そこは地底の奥深い場所だった。

立ちはだかる脱藩した薩摩藩士13名。金山奉行と結託しているオドロ様の宮司蟬麻呂。その正体は。お炎は信三郎と会えるのか。
地下での乱闘。金を積んだ御用船での決闘など、週刊誌掲載らしいいくつもの山場が押し寄せ、飽きさせない。

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プラモの世界(6)松山城

2019-07-14 | life
松山城天守は重要文化財。愛媛県松山市にある現存12天守の一つ。童友社のジョイジョイコレクションを組み立てた。

平山城の比高において最も高い位置にある現存天守(標高約160メートル)。勝山(標高132メートル)という城山の頂上に位置する。ロープウェイでの上り下りも魅力だ。

南(県庁側)から見た。全体の様子


門が3つ。手前が一ノ門南櫓。右へニノ門南櫓。一ノ門南櫓の奥、ニノ門南櫓の左が三之門南櫓。




西から見る。大天守と小天守。空中でつなぐ筋金門。手前左に北隅櫓、右に南隅櫓。2つの櫓をつなぐ十間廊下。


北から


玄関と天守を空中でつなぐ多聞櫓。


東から


北西から。時計回りに、小天守と左の筋金門、南隅櫓、十間廊下、北隅櫓、玄関多聞、大天守

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湖畔の愛

2019-07-07 | book
町田康(こう)の「湖畔の愛」を読んだ。2018年3月刊行。1962年大阪生まれ。2000年芥川賞作家。

大阪弁で湖畔のホテルで沸き起こるナンセンスを繰り出す。新聞書評では吉本新喜劇を想定したというからごもっとも。

九海湖ホテルが舞台の3編。月間文芸誌に2013年5月、2014年6月、2017年9月に掲載された。男性支配人の新町と女性従業員の圧岡は全編に登場する。

スカ爺こと須加治一郎が、意味不明言語をしゃべる客を対応し、ホテルの経営危機を救う「湖畔」。

幸福なカップルの苦悩。船越恵子35歳は、建築デザイナーの吉良と恋仲であったが、好きになればなるほど雨を降らせるという。待ち合わせの九海湖ホテルも雨が激しくなり、孤立状態に陥る。そこに居合わせた雑誌の取材グループ。「雨女」。

経営破たんし、経営陣も一新された九海湖ホテル。そこに大学の演劇研究会が訪れる。目的は、美女の気島が、社長の御曹司の岡崎と、旅館の跡取りの大野のどちらを恋人に選ぶかを決めるためだった。気島は才能に惚れる気質がある。「湖畔の愛」。営利追及の新幹部、綿部マネージャーが登場。そこにヤクザも登場し。

ハチャメチャナンセンス。こんな小説もありか。吉本のあの人の役ならいいかと思わせるのも一興。
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