パンダ イン・マイ・ライフ

ようこそ panda in my lifeの部屋へ。
音楽と本、そしてちょっとグルメなナチュラルエッセイ

孤狼の血

2015-12-27 | book
柚木裕子の「孤狼の血」を読んだ。2014年から2015年にかけて月刊文芸誌に連載されていたものを2015年8月に刊行。今期の直木賞候補となる。

柚木の作品はこれまでも「臨床真理」,佐方貞人シリーズの「検事の本懐」「最後の証人」と読んできた。いずれも事件を取り上げ,正義に迫る。

今回の作品は,広島県のある街を舞台に起きた抗争事件を舞台に,ベテラン刑事の大上章吾,ガミさんと新米デカの日岡秀一の出会いと1か月間にわたる濃密な時間を書きあげた。

次々と起こる事件,一触即発の迫りくる緊張感。そこに横たわる組や警察の人間模様。どす黒い闇の中で,組織と組織の間に生きるガミさんの苦悩。そして日岡の成長。表紙のライターの意味,プロローグとエピローグの粋な関係が,読者に読中のモヤモヤ感をすっきりさせてくれる。411ページをいっきに読んだ。
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一路(下)

2015-12-23 | book
浅田次郎の「一路」の下巻。中山道下諏訪から江戸までの出来事。

左京大夫の大風邪,前を歩く輿入れの加賀百万石の姫をめぐる騒動と一路との出会いと別れ,大風邪による遅延を知らせる安中の板倉主計守の家臣の活躍,本陣・脇本陣をめぐる騒動,田名部ゆかりのなぞの世捨て人,ひぐらしの浅の登場と戸田渡しの活躍など,はらはらどきどきの出来事が押し寄せる。

上巻に続き,道中を共にする叔父の将監の悪巧み,その手先となる側用人の伊東喜惣次の人知れぬ悩み,田名部で留守を守る将監一派の国家老由比帯刀が追いつめる一路の父と昵懇であった勘定方国分七左衛門,父七左衛門を心配する娘で一路の許嫁の薫。また,寺の住職の空澄,易者の朧庵や髪結い新三などの一路を応援する個性派が,道中にからんで面白い仕立てとなっている。
上巻とともに表紙に行程と登場人物が描かれていて,読みながらおさらいや確認ができる趣向がいい。

一気に読み進められる下巻。ロードムービーならぬロード小説。おもしろい活劇。スカッとさわやかに,かつほろ苦い人勢模様が楽しめる。文庫本になっても人気とか。
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一路(上)

2015-12-20 | book
新聞書評で売れている文庫として紹介されていた,浅田次郎,1951年生まれの直木賞作家の時代小説「一路(いちろ))を読んだ。江戸時代,参勤交代を命じられた美濃の国の旗本,蒔坂左京大夫が江戸へ向かう中山道の道中記だ。2015年にテレビ化もされた。2013年2月刊行。

左京大夫の廃嫡を狙う,叔父の将監と国家老由比帯刀,側用人の伊東喜惣次らの悪役と,父の急死によって,始めて国入りをした若き,道中御供頭の小野寺一路,添役の栗山信吾などの若者や,道中先触れを行けいれた佐久間勘十郎や与川崩れを乗り越えた西の丸組頭の矢島兵助などの左京大夫に忠信を誓うものたち,そこに寺の住職の空澄,易者の朧庵や髪結い新三などの一路を応援する個性派が,道中にからんで面白い仕立てとなっている。
表紙に行程と登場人物が描かれていて,読みながらおさらいや確認ができる趣向がいい。

80人で臨む道中。まずは上巻。一路はさまざまな出会いや人に助けられ,無事,出立するが,次々に起こる難事。難所もそこかしこにあり,緊張感が全体を覆う。しかし,家中の皆に助けられ,無事,下諏訪までたどり着く。そこに一路や栗山信吾の父の不審死の謎も出てきて,飽きさせない。左京大夫がうつけかどうかも興味あるところ。さて,後半は・・・。
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つまをめとらば

2015-12-13 | book
1948年生まれの時代小説家,青山文平が文芸誌に掲載した6作の短編を集めた「つまをめとらば」,2015年7月刊行を読んだ。

男と女の数奇な運命を,時代小説の中に描く。

「ひともうらやむ」
人もうらやむ美形の藩医の娘と結婚した本家筋の友人。しかし,妻の浮気を疑い,妻と駆け込み寺に籠城する。自ら友人を自害に追い込み,気鬱の病になり藩を去ることになる。釣り師の特技を生かそうと妻と江戸へ。妻の奔走で活路を見出す
「つゆかせぎ」
妻に見初められ俳諧をたしなむものの,妻に先立たれ,失意のうちに,年貢の交渉に出かけることになる。そこで,一夜をともにした女性の生き方。子作りのためにここにきたというのだ。
「乳付(ちつけ)」
侍の家に嫁ぎ,男子を産んだものの,乳が出ず,自分より若い乳母に嫉妬する。しかし,その乳母の女性も悩んだ過去があった。
「ひと夏」
部屋住みの次男坊が出仕できることになった。しかし,赴任地は,周りを他藩に囲まれた藩領で,これまでもいろいろトラブルを起こしていた。そこで起きた狼藉をうまく収めたことから運が開ける。
「逢対(あいたい)」
旗本だが無役の泰郎28歳は算学で生計を立て,煮売り家の里24歳と恋に落ちた。里は早く子供が欲しいい,結婚は望んでいないという。なんとかして出仕したい泰郎は,友とともにそのお願いに藩の有力者に日参することになる。ある日,有力者から会いたいと泰郎に申し出がある。その申し出に出仕を友人に譲ることにする。
「つまをめとらば」
幼馴染の独り身の老武士が,2人で暮らすことになる。妻のいない暮らしに,お互い居心地の良さに暮らしながらも,昔,心中をした2人の旧知の女が味噌を売りに来たことから,2人の心にさざ波が起きる。

幸せとは何か。人の運命は分からない。渡る世間は鬼ばかりだ。漢字の多さにびっくりしながらも,短編が紡ぎだす人生模様を楽しめた。
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御宿かわせみ(22) 清姫おりょう

2015-12-06 | 御宿かわせみ
御宿かわせみ22冊 「清姫おりょう」1996年10月 オール讀物平成7年10月号~8年6月号

横浜から出てきた男」
庄司家の菩提寺で会った横浜の糸問屋川崎屋利兵衛は,かわせみに泊り客だった。幼い頃に別れた姉おみのを探しに日本橋穀物問屋柏屋を訪ねる。
利兵衛とおみのは柏屋の先代の妾の子だった。
柏屋は利兵衛を丁重にもてなし,姉まで見つけてくれた。長助は,柏屋の身代があまりおもわしくないと聞きつけてくる。

蝦蟇の油売り」
長助のところへ蕎麦を届ける秩父の百姓喜助42歳が殺された。江戸に知り合いもいない喜助がなぜ殺されたのか。
娘のおふくが江戸へ出てくる。東吾に隣村の彦市が5年前に村を出ていったと東吾に話す。

穴八幡の虫封じ」
源三郎に女の子千代が生まれた。東吾は千代に虫封じのお守りをもらいに長助と穴八幡へ行くと,そこに深川の芸者,22か3の女盛りの駒吉もいた。
駒吉は生みの親,育ての親の姉妹の面倒をみていた。駒吉はこの母親のせいで破談になり,娘を養女に出していた。
ままならぬ母子の定め。東吾は筑紫国柳川にいる東吾の血を引くと思われる男児のことを思う。

阿蘭陀正月」
阿蘭陀正月を祝う医者の催しが品川で行われ,東吾は宗太郎と蘭方医や大店の店主と食事をともにする。
その場に出された鮟鱇の肝に河豚の肝が入っていた。依田貴一郎が死んだ。男の妬みの深さ。

月と狸」
狸穴の仙五郎が東吾を訪ねてきた。青山の刀屋備前屋の倅芳太郎を連れてくる。京へ修行に行って1年後,父藤兵衛が倒れ,まもなく,火事で藤兵衛,妻お元,姉のお加世が亡くなった。
お加世の婿番頭の新兵衛は無事だった。新兵衛は妹のもとに身を寄せていた。

春の雪」
王子権現に天璋院の代参がある。東吾の講武所の行軍がある。東吾は下見に行って,素焼きのかわらけを投げている武士と出会う。13代将軍家定の生母本寿院のお年寄りの甥加納政之助だという。
そして,お百度参りをしている娘を見かける。
5年前,加納政之助が投げた石礫が目が当たり,自害した娘がいた。天璋院の代参の行列に礫が投げられる。そして,自害した政之助の姿があった。

清姫おりょう」
雨宿りした東吾。その家は材木問屋田原屋の女主人46歳が殺されていた。
痴情の線をあたっていたが,相手が見当たらない。
また,宿で大金が取られる事件が起きる。女祈祷師,清姫稲荷のおりょうが怪しい。その清姫稲荷と田原屋は近くだった。

猿若町の殺人」
猿若町の旦那衆の素人芝居が評判で麻生宗太郎が招待される。宗太郎は東吾に七重,花世を連れて行ってくれと頼む。
その芝居で三河屋の徳之助が殺される。その芝居に出た春日屋のおきぬがかわせみに東吾を訪ねてくる。
おきぬの父,春日屋長兵衛に疑いがかかっているという。東吾の見事な推理が冴える。
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