goo blog サービス終了のお知らせ 

パンダ イン・マイ・ライフ

ようこそ panda in my lifeの部屋へ。
音楽と本、そしてちょっとグルメなナチュラルエッセイ

御宿かわせみ(34) 浮かれ黄蝶

2016-12-04 | 御宿かわせみ
浮かれ黄蝶 御宿かわせみ34
平成18年4月 初出オール讀物平成17年2月号~平成17年11月号8月号除く
いよいよ最終号

浮かれ黄蝶
月に3回,習い事で麻生家に通う麻太郎と源太郎。麻太郎はその折に,新内語りの鶴賀喜久大夫の家の前で,娘の15歳のお蝶と出会う。そのお蝶が風呂敷を12,3歳の子に奪われる。奪い返す麻太郎。そんな二人の様子を花世が見ていた。両国橋の回向院へ出かけた麻生花世と小太郎,麻太郎,千春,源太郎と小春は老人から財布を奪う少年たちを見かけ,麻太郎と源太郎は財布を奪い返す。通之進は,源三郎に少年たちを探るように命ずる。少年たちの頭がお蝶だった。

捨てられた娘
雛の節句で麻生家に集まった神林家,畝家の子どもたち。その中に花世の友達16歳の喜久江がいた。200石の旗本小林参市郎の娘だった。花世は,あの家は少しおかしいから,あの家から目を離さないようにしているという。小林家には女中上がりの後妻,おたねに甲太郎10歳,次男嶋次郎がいた。その甲太郎が行方不明になった。さらに甲府勤番を命じられた参市郎も,若党の定之助が途中ではぐれ,参市郎が甲府に着いていないと報告する。花世は東吾に2人に探してほしいと頼みに来る。旗本に起きた刃傷。花世は1人で生きていくと宣言する。

清水屋の人々
るいの茶の湯の師匠,寂々斎楓月の所へ出かけていったるいが,そこで会った向島の鯉料理の店,清水屋の内儀おきよを連れてかわせみにやって来る。このままでは殺されるという。姑のおもととの仲の悪さが有名。おきよの亭主は,おもとの亭主,清兵衛の甥の清七で店を立て直したという。おきよは3人目を身ごもっていた。おもとの乱心,清兵衛は女房と孫を殺害する乱行に及ぶ。やるせない嫁姑の確執。

猫と小判
三田の久保田町の畳職人の庄助15歳は祖母のお杉と2人暮らし。その飼い猫の虎吉が10両の入った灰色の袋を引きずってきた。狸穴の方月館の近くの菓子屋,千成屋の主人喜三郎がお杉に「無理難題を言っていたという。喜三郎の妹が嫁いだ大店の姑,お芳80歳が10両ずつ川や畑に捨てていた。お杉や喜三郎はその金を拾っていた。そのお杉が殺される。喜三郎を白状させる東吾の推理が冴える

わいわい天王の事件
6月16日の朝,芝浦の浜の魚船の中で男が殺されていた。その顔には赤い面がかぶされていた。それは昔,6月の祇園会の時にわいわい天王がかぶっていた猿田彦の面だった。源三郎,長助,仙五郎が必死に探索をしていた。その殺された男は伝吉といい,50過ぎで仕事をしているふうではないが,暮らしには困っている様子もない。かわせみの番頭の嘉助は昔,るいのために6月の長松寺の朝顔市に出かけ,本堂の裏で日本橋廻船問屋西国屋の25歳の若主人,重太郎が殺された事件を思い出す。その時,猿田彦の面をかぶった男がいたという。今の主人,重兵衛や従弟の助九郎も容疑があったが事件当日は江戸にいなかった。るいの亡き父,庄司源右衛門も嘉助も悔しい思いをしたという。その頃,かわせみには東吾が大阪で知り合った大阪の船問屋利倉屋の船乗りの新助がやって来た。利倉屋の娘婿にという話が決まり,親戚筋の江戸の利倉屋に泊まり,江戸で独りで暮らす母親おきぬを引き取りに来たという。おきぬは西国屋の女中をしていたとき,死んだ重太郎と結婚の約束をしていたという。新助は2人の子だった。その新助が伝吉と会っていたという知らせが入り,新吉が下手人ではないかと疑いがかかる。その新助に西国屋から迎えに来たと,新助が泊まっていた利倉屋からかわせみに知らせが入る。東吾が助けに行く。

二人伊三郎
航吉は,大阪から江戸にくるたびにかわせみで東吾に航海術のことを教えてもらっていた。
お石が住む堀江町界隈で,30過ぎの伊三郎が,5歳の頃,角兵衛獅子にさらわれ,自分の家を探していると有名になる。しかし,実は空き巣と置き引きの犯人だった。また,かわせみ泊まった大阪の船主,北方屋甚兵衛の供の1人も伊三郎といった。跡継ぎのない甚兵衛はこの伊三郎を跡継ぎにと考えていた。しかし,航吉とかわせみに来ていた父の岩吉は,この伊三郎に勘吉ではないかと声をかける。

公孫樹の黄ばむ頃
下総の市川の法林院からるいに法要の案内が届く。るいの父源右衛門の母,つまり祖母の兄,名主の千本喜右衛門の38回忌という。千本家には,るいが5歳の時に,母が亡くなった時にしばらく身を寄せていた。その喜右衛門の死後,後妻のおさん,先妻の長女お咲,お咲の婿でおさんの甥の作之助が毒を口にして一緒に死んでいた。るいはその場にいたという。るいは法要の翌日,潰れた千本家の跡に立ち寄る。そこで,木更津へ身を寄せた,お咲の妹おむらと出会う。おむらはとお咲はおさんから継母いいじめを受け,義兄の作之助は遊び人だったという。そして,お咲から,自分に何かあったら,この土地にいてはいけないと言われたという。父の源右衛門は事件後,おむらを送って木更津まで連れて行ってくれたという。なぜ,同心の父はこの事件を見逃したのか。37年前の出来事がよみがえる。御宿かわせみの最終回。

御宿かわせみ(33) 小判商人

2016-11-03 | 御宿かわせみ
小判商人 御宿かわせみ33
 平成17年4月30日 オール讀物平成16年5月号~平成17年1月号12月号を除く

稲荷横の飴屋
お吉の姪が天涯孤独の14歳のお晴を,かわせみに,お石の後の女中にと連れて来た。千春はすぐにお晴と仲良くなる。千春の琴の稽古に出かけたお晴は,近くのお地蔵様があり,おむらという婆さんがやっている飴屋があった。お晴は,その地蔵様の頭を撫でた子らを竹ぼうきでたたくおむらを見る。そのことを東吾に話す。東吾はおむらに疑いを抱く。我が子を竹ぼうきでたたかれた父親が,お地蔵様を押し倒すとその台座から小判が出てきた。

青江屋の若旦那
かわせみで扱う塗物を卸していた日本橋の青江屋には,長男の27歳の成太郎と弟の23歳の好吉がいた。2人は異母兄弟だった。東吾は,成太郎が店を好吉に譲ると話しているのを聞く。好吉は母親が亡くなり,昨年,赤城村から江戸に出てきていた。その頃,質屋に老舗の若旦那が訪れ,偽物を質入れし,金を借り,姿を晦ます事件が続発する。源三郎は,その若旦那が青江屋の成太郎が似ていると言う。東吾は,事件の頃,成太郎が産み親の看病に,祖父祖母や母と幼いころ暮らした中野村へ行っていたことを突き止める。

明石玉のかんざし
明石で明石玉の職人をしている珠太郎36歳と女房のお光28歳,そして子の珠吉がかわせみに泊まりに来る。るいと東吾が,庄司家の菩提寺に行くと珠太郎一家が墓参りに来ていたことを知る。それは,るいの亡き父が亡き母に贈った珊瑚のかんざしを買った日本橋の珊瑚屋の墓だった。東吾は,珠太郎から江戸を出たわけやそれからお光に会うまでの出来事を聞き,母親への橋渡しを頼まれる。珠太郎は15歳で江戸を飛び出し,20年ぶりの江戸だという。母親を訪ねてきたという。珠太郎は,その珊瑚屋のお浅の息子だった。珊瑚屋にはすでに養子が入っていた。お浅は,かわせみを訪れ,珠太郎を冷たく突き放す。しばらくして珊瑚屋が倒産したとかわせみに知らせが入る。

手妻師千糸大夫
長助が,両国広小路の高座の手妻師千糸大夫の評判をかわせみに持ち込んだ。見たくてしようがないお吉は,口実がない。その姿を見た千春が麻太郎と源太郎に相談する。麻太郎と源太郎は事前に見てみようと2人で両国へ出かける。その高座で暴漢に襲われた千糸大夫を助ける。2人の少年を諭す通之進がさすがだ。また,東吾は幼いころ,八丁堀で一緒だったお秋と出会う。お秋は女浄瑠璃講釈師の菊花亭秋月といい,以前東吾が助け,上方へ行っていた。今は,川越の雑穀問屋武蔵屋の内儀となり,子どもも授かっていた。そのお秋が,師匠の一周忌で江戸に出てきたという。東吾も誘われ,谷中の蓮長寺で千糸大夫と出会う。千糸大夫は,先日のお礼にと東吾に,麻太郎や源太郎,そして,蓮長寺にいる孤児を高座に招待するという。千糸大夫の見事な芸に酔いしれる子供たち。お吉は千春の伴で来ていた。粋な物語満載の一編。

文三の恋人
水売りをして兄を探していた文三は,文吾兵衛の口利きで千駄木村の庭師,彦右衛門に弟子入りしていた。彦右衛門は,神林家や麻生家にも出入りしていた。その彦右衛門の近くに尼寺があり,身寄りのないお幸という30歳の女がいた。文三とお幸はお互いを好きになっていた。だが,お幸は尼になる身。文三は22歳で,彦右衛門は,30歳まで嫁をもらうなと伝えていた。

小判商人
長助の蕎麦屋の裏にある質屋,松本屋に泥棒が入り,捕まえると,盗んだものの中に洋銀があった。高山仙蔵は,不公平な通貨の取引により,日本の金銀が海外に流出させている小判商人を追っていた。その高山家に出入りしている麻太郎と源太郎は,高山家にいて,ある男が高山から洋銀を持ってきてくれと頼まれたと言ってくる。麻太郎と源太郎はその男と品川へ向かう。そこには松本屋の内儀がおり,3人は蔵に閉じ込められてしまう。
密かに小判商人を追う,奉行所,源三郎。軍艦操練所の東吾は海上にいて,沿岸警護の手伝いを頼まれる。少年2人を巻き込んで,海上と陸上から大捕物が繰り広げられる。

初卯まいりの日
正月2日にかわせみに泊まりに来たのは,岩槻藩の人形屋,京玉屋の母子,お梅と子の玉之助23歳,そしてその嫁おきみ18歳だった。4日は亀戸天満宮の初卯まいりの日,小春は長助からもらった絵馬を皆の幸せを願い納めるが,あまりの可愛さにもう一枚を長助にねだる。絵馬の職人の久太郎は祖母おまつと2人暮らし。訪ねた長助,るい一行は,おまつが女を叱り飛ばしているのに出会う。女は京玉屋のお梅だった。久太郎は,今戸の焼き物屋の倅だったが,店は潰れ,絵馬の職人になっていた。お梅は久太郎が3歳の時に離縁されていた。運命に翻弄されながらも,健気に生きていく久太郎。

御宿かわせみ(32) 十三歳の仲人

2016-10-02 | 御宿かわせみ
十三歳の仲人
御宿かわせみ32
平成16年3月 オール讀物平成15年2月号から10月号7月号を除く

十八年目の春
三代も続く仲の悪い平河町の菓子屋,丸屋と老松屋は,18年前の天神さんのご縁日に,丸屋の倅,19歳の新兵衛,老松屋の娘16歳のおそのが行方知れずになった。親の心,子知らずの話。

浅妻船さわぎ
狸穴の方月館に麻布十番で馬秣を扱う飼葉屋政右衛門が訪ねてくる。馬秣の中に,桐の箱が置いてあり,浅妻船之図 英一蝶と書いてあった。これは元禄の頃,将軍綱吉の妾の舟遊びを扱ったもので,当時は発禁ものだった。その浅妻船の偽物をふところの中に入れた経師屋の竹彦が殺された。六本木の店を竹彦に紹介したのは,赤坂の地主,市兵衛で,その妻,お久麻30歳は竹彦の幼馴染,飼葉屋政右衛門の先妻の子だった。お久麻の腹違いの妹お久美は,東吾に姉さんを助けてほしいと頼みに来る。そして,お久麻と,お久麻の昔の情夫,徳三が市兵衛の家で殺される。市兵衛は知り合いの家で一夜を明かしていた。

成田詣での旅
るいの茶の湯の師匠,寂々斎楓月が喜寿を迎え,成田詣でに出掛ける。そのお供にるいとお千絵,深川の料理茶屋辰巳屋新兵衛と女番頭のお篠30歳など17名がいた。旅の途中,お篠を訪ねて,幼馴染の弥七が横浜からやってくる。結婚して欲しいというのだ。それを知り,新兵衛はお篠と祝言を上げる。しかし,その新兵衛が海釣りに出かけ,船が転覆し,死んでしまう。東吾はお篠と弥七を疑う。弥七は横浜の荷揚屋相模屋の手代で一人娘の婿になっていた。お篠は新兵衛の弟のたくらみで辰巳屋を追い出されてしまう。
運命に翻弄されるお篠。

お石の縁談
かわせみの女中お石に縁談が舞い込む。深川門前町の薪炭問屋の奥津屋の若旦那仙太郎だった。六兵衛とおさだ夫婦も熱心に会いに来る。しかし,大店に嫁ぐことに気が向かいない。しかし,奥津屋は火事に会い,六兵衛夫婦は死んでしまう。失意の仙太郎を,堀江町の大工,源太の息子,小源太が励ます。源太は10年前に死んでいた。そのお石は,2人で頑張ろうと仙太郎に言うが,仙太郎は首をくくり死んでしまう。お石の幸せを願う東吾とるい。

代々木野の金魚まつり
東吾は傷心のお石を連れて代々木野へ恩師の法事に出かけた。お石は見事法事の裏方を仕切る。その代々木野に金魚市が立つと聞いて出かけたが,そこで大工の小源の弟子,定吉と絡まれるが,お石は4人の暴漢をやっつけてしまう。その定吉はお石を逆恨みして襲う。お石と小源のなれ初め。

芋嵐の吹く頃
かわせみのお吉が凝っている曲物。薄い板に熱を加えて曲げ丸い容器を作るもの。その曲物屋の神田飯田町の大杉屋を気に入っていた。ある日,東吾が大川に落ちた深川門前町の茶問屋の清水屋の隠居,金右衛門を見つけ,かわせみに連れてくる。川に飛び込み,助けたのは大杉屋の倅,宇都宮に住む18歳の弥吉だった。その金右衛門は,今度は綾瀬川に落ちて死んでしまう。自殺だったという。

猫芸者おたま
佐原で有名な醤油造り家の木島屋の若旦那敬太郎はかわせみに泊まり,回向院のお茶屋で20歳過ぎのおたまという芸者と仲良くなり,別れ金を東吾に託す。そのおたまの弟,正太が横浜で異人を切り付け逃げていた。正太はおたまの妹分のおひろに入れあげ,奉公先の金に手を付け,辞めさせられていた。おたまは逃げ込んだ正太を匿う。

十三歳の仲人
神林通之進の家に大工の小源が出入りしていた。麻太郎は千春を道で見かける。千春はかわせみの女中,お石に縁談があると泣いていた。その話を麻太郎は家に帰り,その話をする。その時,小源は梯子から落ちて怪我をする。麻太郎は麻生宗太郎を連れ,千春はお石を連れて,小源の長屋へ見舞いに行く。一方,お石の縁談が進んでいた。故郷の野老沢(ところざわ)に帰るという。13歳の麻太郎と7歳の千春が取り持つ縁。仲人をお願いされた2人。見守る東吾とるい。そして通之進と香苗も加わる。お石の縁談3部作の最終章。

御宿かわせみ(31) 江戸の精霊流し

2016-09-04 | 御宿かわせみ
御宿かわせみ31 江戸の精霊流し

平成15年5月 オール讀物 平成14年5月号から15年1月号

夜鷹そばや五郎八
夜鷹そばやの五郎八60歳が殺された。売上金はそのままだった。子どもは2人。庄吉は蕎麦屋に弟子入りした20歳。妹のおそでは18歳結婚も決まり,その晩は親子で食事をしていた。それから5日後に御家人,飯岡作左衛門方が全焼し,一家4人が焼死した。それも斬殺されていたという。その飯岡が仮親になっている養子和太郎が材木問屋の清水屋宗兵衛に婿入りしていた。宗兵衛は,誰かに付けられていると源三郎に相談していた。和太郎は評判が悪く,養子縁組を解くと宗兵衛は飯岡作左衛門に相談していた。和太郎は夜鷹の元締め,仙之助の倅だった。

野老沢(ところざわ)の肝っ玉おっ母あ
かわせみの女中お石の姉がおてるがかわせみにお石を訪ねてくる。赤ん坊もいて,亭主の徳三は浅草の野老茶屋で働いているという。ところが徳三は野老茶屋にはいなかった。お石の母親は,後妻で先妻の子が3人,自分の子が5人いた。徳三との夫婦喧嘩が絶えないおてるは,突然,赤ん坊を置いて出て行ってしまった。徳三は困り,おてるの実家を訪ねる。しばらくして,嘉助が徳三の浅草の家を調べると夫婦していなくなっていた。心配になったお石は東吾と野老沢を訪ねると,お石の母親が赤ん坊をあやしていた。やっと子育てが終わったのに,また育てるという。

昼顔の咲く家
深川の有名な料理屋望湖楼の主人宇兵衛が殺された。「メキシコ銀貨」事件でお世話になった高山仙蔵に通い奉公しているおきよは,宇兵衛の亡き長男,吉之助の嫁で幸吉という子供がいた。宇兵衛はその子に会いに来ていたという。次男伊之助は,宇兵衛の実の子ではないという。そして向島の隠居所で伊之助の母親,宇兵衛の妻,おもとが自殺し,伊之助は宇兵衛殺しを自白する。

江戸の精霊流し
かわせみの女中,おきみ,おみよが次々と家の都合で辞めていく。仕方なく,気に入らない口入屋の桂庵から,おつま25歳を雇う。そのおつまが先に奉公していた深川の料亭,吉川の主人,伊兵衛59歳が,おつまを後添えに欲しいと長助に頼む。お盆に暇になったかわせみでは,奉公人に次々と休みを与える。おつまは親兄弟の墓参りに故郷へ帰るようにとおるいは勧める。しかし,おつまは帰らず,江戸で男と会っていた。

亥の子(いのこ)まつり
長助と同じ長屋に住むおいのは50歳の1人暮らしの老女だった。双盤鉦というおおきな鉦を鳴らして念仏を唱える品川の願行寺へ出かけ,双盤念仏の最中に死んだ。おいのは心臓を病んでいた。長助は病死を疑う。おいの息子,次男20歳の伊吉は水戸の宮大工。長男の25歳の貞吉は先妻の子で叩き大工だった。貞吉がおいのに勧めた薬が原因だという噂が立つ。貞吉と伊吉の兄弟話。

北前船から来た男
釣り好きな麻太郎,源太郎を連れて東吾は舟釣りに出かける。船頭は長助の知り合いの寅吉の甥の20歳の卯之吉だった。卯之吉は3年前に3年間,北前船の水主をしていた。その卯之吉が若侍をつけているのを麻太郎と源太郎は見かける。卯之吉の母親と姉は侍に斬られて亡くなっていた。麻太郎と源太郎の捕り物話。

猫絵師勝太郎
長寿庵の長助の家で飼われていた猫が子どもを産んだ。その中の1匹をかわせみで飼うことになった。その長助が評判の猫の錦絵の話を東吾たちにする。その翌日,12月13日の夜,茶会の帰りに,るいは,くくり袴の男に後をつけられる。かわせみの猫がいなくなり,るいはその猫を描く,くくり袴の絵師と出会う。その絵師,浅田勝太郎は,文吾兵衛のところに世話になっていた。勝太郎は,東北の藩の下級武士の出で,15歳の時,江戸へ出て,将軍家の御用絵師,狩野雅信の弟子になって15年経ち,弟子をとり,狩野派の絵を伝えても良いと言われ,東北に帰っていたが,また,江戸に出てきていた。将軍の御用絵師の弟子が,なぜ,猫を描くのか。るいはその思いを聞くことになる。

梨の花の咲く頃
正月のかわせみに開業当時,女中をしていたお梅が行徳からかわせみに挨拶に来ていた。そのお梅は東吾に相談を持ちかける。実家の市川で梨畑農家をしているお梅の従妹,おせんの許嫁,30歳の友三は,20歳の時に植木屋になると江戸に出てきていたが,おせんに文を届け,危ないことに巻き込まれているという。友三は植木屋の植辰を辞め,柳橋の座頭,幸之市のもとで下働きをしていた。その幸之市が殺され,友三が下手人としてしょっ引かられる。幸之市は金貸しをしていたが,家の中には5両あまりの金しか残っていなかった。友三や小女のおとみの手元には金は無かった。

御宿かわせみ(30) 鬼女の花摘み

2016-08-28 | 御宿かわせみ
鬼女の花摘み 御宿かわせみ30 2002年9月 オール讀物 平成13年7月号~14年4月号

鬼女の花摘み
一善飯屋で働くお新は21歳で,小さなおさちと市松の姉弟を抱えていた。そこに辰三が転がり込む。東吾は麻太郎と源太郎の2人を連れて,長寿庵へ花火を見に行く。その途中でお腹を空かせた姉弟を見た麻太郎と源太郎は餅を買い与える。その花火大会で,辰三が市松のお腹を蹴るのを見た。長寿庵の長助に姉弟の様子を見てくれと頼む東吾。それからも麻太郎と源太郎は,花世も巻き込み姉弟を見舞うが。辰三が市松を川へ投げ込み死なせてしまう。親子の関係にどこまで踏み込めるのか。児童虐待を織り込んだ一編。

浅草寺の絵馬
上方からのお客を迎えたかわせみ。米問屋播磨屋助左衛門,綿問屋高砂屋孝太郎など7人。るいとお吉は浅草寺で高砂屋孝太郎を見かける。播磨屋は,手代の仙三郎の縁談を世話していた。仙三郎は江戸の生まれで,捨て子だった。浅草寺の捨て子話がもたらす2人の人生

吉松殺し
神田の鍛冶町と鋳町の間の争いから鍛冶町の鋳物師芳三の息子10歳の吉松が死んだ。その下手人は見つからない。その内に鍛冶町の履物都問屋綿屋五郎兵衛の娘おすぎ25歳が神田祭で実家に帰っていて殺された。鋳町に14歳の悪ガキ辰吉がいた。辰吉の父,文吉はおすぎの亭主だった。しかし,本当の母親お町は柳橋の一杯飲み屋の吾妻の女主人に収まっていた。

白鷺城の月
姫路藩が西洋型の帆船の建造に取り組んだ。東吾は軍艦操練所の谷川彦之進と姫路城に入る。しかし,その彦之進が怪我をし,東吾も姫路に滞留することになる。その寄宿所青木家のの娘幸代と隣の久松の光次郎が夫婦になり,東吾を迎えた小林武兵衛の家に養子に入っていた。その幸代が夜な夜な,夫がいないときに寝所の近くにだれかがいると東吾に訴える。その姫路にるい,宗太郎,長助が現れる。なんと東吾が大けがをしたと連絡が入り,通之進が心配しているというのだ。その武兵衛が殺される。

初春夢づくし
るいの母方の親戚の津軽藩の娘,25歳の佐代が父の病の看病に来たとかわせみのるいを訪ねる。その時,千絵が芝居に誘われたとるいを誘う。るいと千春,千絵と千代,佐代が芝居に行く。後日,佐代が中村小三左にたびたび会いに来ているという。心配なるいは,東吾に相談を持ちかけ,東吾は長助,源三郎と一芝居打つことにする。

招き猫
千春の冒険談。本所の田螺稲荷へ参りたいと思った千春はるいに内緒で,麻太郎,源太郎と御参りに行く。その場で招き猫を売っている貧乏そうな身なりの15.6の女と,身なりの整った3歳ぐらいの男の子を見かける。どうも娘が男の子を連れてきたらしい。男の子は太郎吉といい,材木商,大月屋の子だった。少女と男の子は母親違いの兄弟だった。3人は太郎吉を無事に大月屋へ送り届ける。

蓑虫の歌
江戸の火事を防いで手柄を立てた纏持ちの25歳の伊佐三と,伊佐三を守った20歳の鳶人足の定吉も褒賞を受けた。定吉の母親は父親が火事場で死んで,男と駆け落ちをしていた。その頃因幡屋にかかわる火事が続出する。その因幡屋に裸の伊佐三の姿を見たというものがいた。定吉と母親との再会との悲しい過去と現実。伊佐三の始末。

御宿かわせみ(29) 初春弁財天

2016-07-03 | 御宿かわせみ

初春弁才舟 御宿かわせみ29 2001年11月,オール讀物平成12年11月号13年6月

宮戸川の夕景」
宮戸川に半裸体の女の死骸が上がる。その頃,料亭で旦那衆が行う賭博の現場に,細川家奥女中の名乗る女が現れ,500両もの掛け金を奪う。祖その時,賭場に東吾の同僚の武石敬太郎がいて,奥女中に金を渡したというのだ。その武石が江戸川で死体となって浮かぶ。しかし,その死体は東吾が知る武石ではなかった。東吾は武石の周囲を探る。武石の妻は貧乏旗本,佐久間元大夫の娘,お国で,麻生家の近くに家があった。東吾は宗太郎から,佐久間家の養子,新三郎は賭け事が好きで,女好き,また,武石敬太郎の病気は仮病だという噂だと聞く。そして,同じような奥女中が金を巻き上げる事件が起きる。その料亭は蔵前の誰が袖で起きた。そこの女中のお澄は武石の妹だったが事件後,行方が分からない。
お国がもたらすどろどろの人間模様。

初春弁才船」
新酒を上方から江戸へ運ぶ新酒番船。しかし,1艘だけ港に入ってこない。その船頭の岩吉の息子,航吉が東吾に西洋の船の勉強を教えてくれとかわせみにやってくる。岩吉は無事だったと連絡が入る。そして,また,新酒の季節がやってくる 。岩吉と航吉が乗った船を待ち遠しく思うかわせみの皆々。弁才船という日本船の話や航路など,当時の興味深い話も挿入され,初春らしい作品。

辰巳屋おしゅん」
梅の花の咲く頃に,洲崎の水茶屋の辰巳屋のおしゅんという芸者が人気だという話に盛り上がった東吾,源三郎,長助。その頃,荘吉16歳が10歳の金太を川に落し,死なせるという事件が起きる。荘吉の父庄七は大工だったが,荘吉の姉を身売りし,西国大名の囲い者になったことから羽振りがよく,この事件を金で解決した。東吾は,金太の姉がおしゅんで金太の姉におりん14歳がいた。庄七はおしゅんに入れあげていた。そのおりんが殺された。おしゅんは庄七と荘吉を殺す。おしゅんはおりんと金太の母親だった。

丑の刻まいり
麻布飯倉の熊野権現の境内で丑の刻まいりが行われていた。その丑の刻まいりをしていたと姑おとよに疑われ,家を追い出されたと,かわせみの女中お石の幼馴染おうのがかわせみを訪ねてくる。麻布飯倉の小間物屋田毎屋に女中奉公に上がり,養子の弥之助の嫁になった。5歳と3歳の子がいるという。かわせみには弥之助に頼まれたと飯倉の桶屋の仙五郎も訪ねてくる。その弥之助夫婦は田毎屋を出る決心をする。そんなときに,おとよが丑の刻まいりをして,熊野権現の裏で殺される。仙五郎は東吾に相談する。先に丑の刻まいりをしていた女が犯人ではないかと東吾は推測する。

桃の花咲く寺
横浜の商人,岡田屋吉右衛門はかわせみの常客。その吉右衛門は叔母に会いに青山の権田原に行く。その近くの春光寺に桃の花が咲いていた。その寺を旗本の用人,吉井恭三郎が訪れ菩提寺に決めたいという。その3日目の夕刻に吉井が寺に押し込み,500両もの金を盗んだ。東吾は源三郎に頼まれ,この一件を解決する。

メキシコ銀貨
大川の河口で,東吾の帰りを待ちながら,海に浮かぶ帆船を見る麻太郎と源太郎。そこへ東吾がやってくる。その時,大男が男に風呂敷包みを奪われ,手に入れた3人が見たのは70両の小判と一分銀が3枚。そしてメキシコ銀貨が1枚だった。幕末の日本は開国し,外国人は日本の金銀に目を付ける。洋銀を一分銀に替え,それを小判に両替する。この商人を小判商人といった。しかし,これは良質な日本の金銀を外国に奪われることだった。その大男は甲州街道の入り口,千駄ヶ谷で死体となって見つかる。必死の探索もむなしく,小判商人は見つからなかった。

猫一匹
霊岸島の炭屋,遠州屋の隠居,筋金入りのやかましや,おこと婆さんは大の猫好き。その猫が両国の見世物小屋へ入り込み,孔雀に殺され,その猫を助けに入らせられた遠州屋の主人,東兵衛の女房のおすみが大けがを負った。孔雀は殺され,香具師の玄三は江戸おかまいとなった大阪の天満の物産問屋,池田屋の番頭,市兵衛は香具師の仕返しを心配する。その東兵衛が吉原からの朝帰りに殺される。犯人は分からずじまいだった。後日談も。

御宿かわせみ(28) 佐助の牡丹

2016-06-05 | 御宿かわせみ
御宿かわせみ28冊「佐助の牡丹」
2001年3月 オール讀物 平成12年2月号~10月号

江戸の植木市
薬研堀の不動尊で開かれる植木市。そこで東吾は,海産物問屋の松前屋五郎兵衛が水仙の鉢を買うのを見る。その五郎兵衛が亡くなり,身内のいない松前屋は,財産が親戚の餌食となる。7人いた子に先立たれた五郎兵衛には,女中に産ませた子がいたらしい。
その頃るいは,千絵から教えてもらった子供用の箸を買いに,富岡八幡宮近くの小松屋を訪れる。その箸は松太郎という職人が作っていた。まだ,若い松太郎は母親が死んだばかりだった。その松太郎の長屋へ訪れた東吾は,家の中に,松前屋五郎兵衛が買った水仙によく似た鉢植えを見つける。

梅屋の兄弟
るいと東吾は,庄司家の菩提寺に参る。そこで言い争いをする兄弟を見る。宝奇丹で有名な室町の梅屋養生軒と,五霊丹有名な分家の白山下の梅屋だった。梅屋は後妻の息子の次男万衛門が本家を継ぎ,長男寿太郎が分家していた。万衛門には先妻の姉のお比佐と後妻の息子19歳の倅万太郎とが,寿太郎には21歳の健太郎と娘のお咲がいる。お比佐と健太郎は親に内緒で好き合っていた。しかし,寿太郎はその結婚に反対していた。お比佐は大川の舟で毒を飲んで亡くなる。そして,健太郎が後を追う。寿太郎は出家して西国巡礼の旅に出る。その訳とは。

佐助の牡丹
深川の富岡八幡宮の牡丹市。その品評会へ出かけたるいは一位になったのは向島の久蔵の白貴人だったが,鑑定人の花屋団蔵に自分のだという佐助がいた。かわせみでその話を聞いた東吾は,牡丹市を訪ねる。佐助は自分の鉢の根に自分の名を書いた紙を入れていた。佐助の息子,佐太郎のかどわかしを東吾と小文吾が見事解決する。

江戸の蚊帳売り
東吾とすいは千春を連れてお吉,長助と永代寺の灌仏会に出かける。そこで,浅草の料理屋,三国屋武右衛門がおきよという芸者と詣でていた。そこにおきよの亭主,吉三郎がやってきていさかいを起こす。その武右衛門と18年連れ添い,年頃の娘がいた内儀のおさとは,亭主の武右衛門の浮気を理由に100両の持参金を返せというが,逆に武右衛門に離婚されてしまう。川崎から来た,おさとの弟の仙太郎は,かわせみへ泊まり,町奉行所へ訴える。おさとはおきよを殺し,自分も身を投げる。やりきれない女の一生。

三日月紋の印籠
千絵が,るいにかわせみに泊まらせてくれと頼みに来た。旗本,榊原主馬の用人から頼まれた八王子同心の娘お妙と子の13歳の徳太郎。徳太郎は主馬の子だった。正妻は主馬が卒中で倒れ,右之助8歳を跡目にと考えるが,披露の時の家宝の印籠が見えない。徳太郎が持っているのではないかと疑う奥方。徳太郎は昔,主馬の命で,右之助の相手にと半年間,榊原家に奉公に上がっていた。

水売り文三
両国橋で水売りをする文三は20歳。東吾は文三の近くで胡弓を弾く物乞いの老女に水を分けてやるのを見かける。文三は10年前に出羽国上の山から江戸へ出た兄を探しに,5年前から江戸へ出ていた。その頃,かわせみに古河の米問屋の田島屋の娘婿,文次郎25歳が泊まっていた。文次郎は出羽国の山の上の出身だった。兄弟の再会と,弟を思う兄の心根と兄を思う弟の心根がいい。ほろっとさせる作品。

あちゃという娘
東吾が宗太郎と出かけた法要の会場は柳橋の料理屋巴川だった。そこには70歳の隠居彦兵衛がいた。気鬱の病にかかった彦兵衛は,女中頭おみのの娘20歳のあちゃのてきぱきした態度でみるみるうちによくなる。あちゃには,薬研堀の菓子屋の桔梗屋の息子伊太郎と3年間の付き合いがあった。あちゃの評判は上がり,縁談もうまくいくと思われたが,伊太郎は大黒屋の娘の夫婦になってしまった。東吾はあちゃを慰める。東吾は,軍艦操練所の教官となる。講武所教授方との併任を解かれた。

冬の桜
宗太郎が弟の宗三郎の相談に乗ってくれと東吾にいう。四谷の妙行寺に来てくれという。宗三郎が往診の帰りに,赤ん坊を背負った女に抱き着かれる。名前も住まいも知らないという。その寺へ出刃包丁を持った男が乱入してくる。窮地を救い役人に引き渡した東吾だったが,輸送の途中で,男と女は子どもを残し,死んでしまう。女が死ぬ間際に残した「ふゆの,さくらが」を手掛かりに,谷中の領宝寺を突き止める。仏壇屋の甲州屋の惨劇。

御宿かわせみ(27) 横浜慕情

2016-05-04 | 御宿かわせみ
御宿かわせみ27冊目「横浜慕情」
2000年4月 初出オール讀物 平成11年6月号~12年1月号
三婆」
琴江が麻生家に残した貝合わせの貝桶。神林家の麻太郎のもとへ。片方の貝のない花月の話。
霊巌寺の富くじ騒動。3人の姉妹。長女のおつる。61歳,菓子屋の巴屋。
次女のおかめ60歳。小間物問屋の三河屋。
三女のおよね59歳。瀬戸物屋の河内屋。
おつるが自分の買ったくじか,おかめからもらったくじか。2枚のうちの1枚が百両が当たった。
もめる姉妹。結局,およねのものに。瓦版にまでなる。その三河屋に泥棒が入った。
同じような富くじ当たった店に泥棒が。口の悪い3姉妹の富くじ始末。
鬼ごっこ」
長助がおとよという30の娘を連れてかわせみに来る。
7つの時に別れた母親に会いに来たという。
飯倉の紙問屋遠州屋の娘お信は,18の時に伊太郎と駆け落ちしたが,22年前の8年後に別れ,
伊太郎はおとよを,お信は息子の吉之助と妹のおすみを引き取り,遠州屋に帰る。
お信に会いに行ったおとよは,お信のつれない態度にかわせみを出ていく。
しかし,その後でお信がかわせみにおとよを訪ねてくる。
縁のない母子。悲しいすれ違い。
烏頭(うとう)坂今昔」
かわせみの番頭の嘉助が煙管の修理を煙草職人の万三に頼む。万三は子連れの後添えをもらい幸せそうに暮らしていた。
しかし,万三には,17の娘との悲しい別れの過去があった。その娘と駆け落ちをした男との再会。
浦島の妙薬」
花世との約束で横浜行きをする東吾。宗太郎,源太郎,お吉,長助と東海道を歩く。その途中でかわせみの常連,浦島太郎兵衛に聞いた,浦島村に寄り,浦島太郎の墓と玉手箱を見る。その太郎兵衛の弟次郎兵衛は百姓をして土地を守っていた。
その太郎兵衛が神奈川宿の飯綱権現に登り,倒れて急死する。太郎兵衛と土地のことで揉めていた次郎兵衛は,自分が殺したと東吾に話すが,宗太郎は心臓の病が原因と主張する。
横浜慕情」
横浜見物をする東吾たち。そこで東吾が長崎にいたときに知り合った英吉利舟の水夫,ジョン・バックルと会う。バックルは下着姿で首をくくろうとしていた。美人局で騙されて,身ぐるみはがされたらしい。東吾が交渉に行くと,そこ昔,深川にいた東吾を知る女に出会う。
鬼女の息子」
中山道の大宮から40半ばの百姓の彦作がかわせみを訪ねてくる。娘のおくみが3年前に大川端のみなと屋という旅籠に奉公に出たが,その娘を訪ねてきたという。しかし,そういう旅籠はなかった。
その彦作が神田川で死体となって発見された。
その数日後,根岸のひさご屋の女郎が東吾の前で「安達が原の鬼婆」といって絶命する。おくみだった。
江戸へ奉公といって娘を騙し,女郎屋に売っている女衒がいるのではと通之進は東吾に大宮行きを命じる。
大宮で娘たちに江戸の奉公を世話していた幸助は,近くの足立ケ原の出身で,そこには母親のおかねが住んでいた。
有松屋の娘」
江戸で有松染めを扱う有松屋の半兵衛が娘のおきた15歳をかわせみで住み込みで奉公させてほしいと頼みに来る。
おきたは死んだ女房の連れ子だった。
そのおきたは実の父の顔を見に行くと,有松の橋本屋へ出かける。
その間に半兵衛は後妻をもらっていた。
半兵衛がおきたの母おさんとの思い出の煙草入れを,おきたの旅費に当てたことを知ったおきたは,江戸を去る決心をする。人の心のはかなさ。
橋姫づくし
60歳過ぎの女隠居がいなくなる事件が相次ぐ。身代金を要求され,お金と引き換えに帰るという手口。それ嫁姑の中が悪く,隠居が店の実験を握っている家だ。
ただ,日本橋の薬種問屋の紀伊国屋のおとらは,宗太郎の母の実家今大路家へ行くと言って家を出たという。宗太郎が,源三郎が東吾に相談を持ちかける。

御宿かわせみ(26) 長助の女房

2016-04-03 | 御宿かわせみ
御宿かわせみ26冊目「長助の女房」1999年8月 オール讀物 平成10年8月~11年5月

老いの坂道
町奉行所の定廻り同心の新田彦左衛門は養子大一郎が、同じ吟味方同心の娘を嫁に迎えた。その結婚式風景。
引退しても現職が忘れられない彦左衛門と大一郎のいさかい。結婚式で一緒になった町火消人足改役の同心の原久蔵も隠居した。
その原は琴の師匠を囲っていたが、いさかいを起こし凶行に及ぶ。隠居後の2つの道。
東吾が大一郎夫婦に説く、どの役にもそれなりの役目があるとするシーンが印象的。
江戸の湯船
深川で船で風呂を提供する湯船の船頭、50過ぎの権助が殺される。
そして、船頭の七之助と岡場所のお俊が殺される。
お俊は、幼馴染の大工、弥吉が10年貯めたお金で身を引き受け、2日後に弥吉と祝言をあげるとこにになっていた。
弥吉には30ぐらいmの姉、おらんがいた。おらんは深川の芸者だった。
嫉妬の深さ。
千手観音の謎
香苗が重陽の節句に使おうと準備した神林家の家宝の千手観音像を壊した。東吾は香苗から相談を受け、重陽の節句に宗太郎の知り合いに別の観音像を借りることにした。
節句に呼ばれた小太郎が、この千住観音像の背中から穴を見つけ、煙草のようなものを見つける。
借りてきた像と神林家の像の謎が解き明かされる。
長助の女房
深川の蕎麦屋長寿庵の長助が,奉行所から褒賞を受ける。神林家,麻生家,畝家からそれぞれお祝いの品が届けられる。
長助の女房おえいは,町で見かけた男が気になる。それは魚屋の清五郎の女房,おときの別れた男,おときの子,清太郎の実の父親の辰吉だった。
辰吉は木場人足で事件を起こし,江戸おかまいとなっていたはずだった。
嫌な予感がしたおえいは,魚屋を訪れる。おえいの活躍。颯爽とした通之進の活躍。
嫁入り舟
麻太郎と千春の姿を見守る東吾。意を決して通之進と香苗に真実を伝えようとするが・・・。
その頃,東吾の講武所で教える高岡兵太郎の父,同心の兵左衛門が亡くなる。
兵左衛門は,兵太郎が生まれるとき,実家の今井家から手伝いに来ていた従妹のお先との間に子供お涼ができた。
兵左衛門は,昨年,妻が亡くなり,お涼を引き取る。お涼は嫁入り先が決まっていた。
兵太郎とお涼の微妙な感情の間に東吾は忠告をする。
しかし,それは将来,麻太郎と千春の姿でもあった。
人魚の宝珠
館林から商売で江戸に来る米問屋の伊兵衛はかわせみに泊まって,親類の娘おすみの離縁話の仲裁に入っていた。
菓子屋の和泉屋へ嫁に来たが2年経っても子ができずにいた。
一旦,かわせみまで連れて帰ったが,なんとか和泉屋へ返したつもりが,おすみは帰っていないという。
おすみは姑と仲が悪かったという。悲しい結末。
玉川の鵜飼」
るいは千絵に誘われ,玉川へ鵜飼を見に行くことになる。
その道中の旅籠で知り合った堀の内の名主の倅,藤之助と母親のおつね,嫁のおいつ。
鵜飼の夜に,いっしょに江戸から出かけた蔵前の大口屋の養子伊左衛門の内儀,お秀がいなくなる。その時,おいつが藤之助もいないといってきた。
翌朝,玉川にお秀の死体があがる。
お秀といい仲の藤之助が疑われる。
唐獅子の産着
神田で大店の3歳の子がさらわれ,10両と引き換えに無事帰る事件が続発する。
犯人は3人の亭主に死に別れ,8人の子がいるお咲で,子どもを使ってやり遂げていた。
しかし,1人,まだ帰らない子がいた。

御宿かわせみ(25) 宝船まつり

2016-03-20 | 御宿かわせみ
御宿かわせみ25冊目「宝船まつり」1999年3月オール讀物平成9年12月号~10年7月号

冬鳥の恋」
お歳暮に神林の家を訪れたるいは,麻太郎のあいさつを受ける。お吉が聞きつけた噂が,神林家では,麻太郎が通之進とそっくりということから通之進の隠し子ではないかと言う話と,いずれは千春と麻太郎を娶わせ,神林家をつがせるというものであった。
かわせみがなりたつようにいろいろ気を使う同業の藤屋の女隠居おせんが隠居所を建てたとるいは知り,お祝いを持って行く。
おせんは実家の高輪の観月楼の次男宇之助を藤屋の養子として迎え,養女として入ったおすみを藤屋の養女にと考えていた。
その二人はそれぞれ結婚を予定していた。その二人が抜き差しならぬならぬ仲と知った東吾とるいは説得にあたるが。
西行法師の短冊
かわせみに商売に来る小間物屋の弥吉は手先が器用でお吉が贔屓にしていた。
そんな折に,かわせみの近くに質屋の千種屋の若女隠居のお辰が越してくる。
弥吉は偽の短冊を100両でお辰に売ったという。
宝船祭り
正月のかわせみに小田原の名主の倅の嫁おきの30過ぎが泊まりに来る。
東吾は,亀戸村の祭,道祖神祭,宝船祭に東吾は,源三郎と花世を連れていく。
その祭りで2歳の子がいなくなった。
亀戸の名主の娘だったおきのは,8つの時に2歳の弟吉之助をこの祭りで人さらいにさらわれていた。
神明ノ原の血闘」
同心仲間が盗賊の手先に。世も末の物語。京極藩から追放された仁村大助が登場
大力お石」
女中奉公人が変わり,所沢からお石が来た。大女で力も強い。悪がきをしかったお吉が罠にかかる。助けるお石。涙と笑いの痛快編。
女師匠」
お照は深川の料理屋ます梅の娘,お鹿は父は船頭,母はます梅の女中。お吉にわざと当たり,小遣いをくすねる。性悪な2人の娘を,寺子屋の師匠の杉江は見捨てない。
杉江は長寿庵で2人を諭す。東吾は長寿庵へ寄り,蕎麦湯を頼む。丁度その時,杉江が通りかかり,お照が蕎麦湯の桶を杉江に投げつける。火傷を負う杉江はそれでも2人をかばう。
「長崎から来た女」
軍艦操練所の訓練生今崎真二郎28歳が品川の東海禅寺で心中をした。東吾は長崎で今崎と顔見知りになった。
相手は長崎の千波屋のお新。顔は日に焼け,やつれていた。東吾はこの心中に疑問を持つ。
東吾が長崎に文をやる。千波屋の女主人、お景がやってくる。英吉利船に乗せてもらい江戸にやってくる。
お新を妹同様に可愛がっていた。そのお新がつきあっていた男を知っているという。
長崎の女は情が深くて激しい。話
大山まいり
相州の大山寺に詣でた長助。その大山寺に宗太郎の恩師、唐人の徐敬徳、徐大人も参っていたが、行方不明となり、
大崎村の目黒川で死体となって発見される。
東吾は、徐大人が死んで一番得をするのは弟の徐健記だというが証拠がない。
その徐大人が、長助一行に手がかりとなる木刀を渡していた、宗太郎の推理が光る。