浮かれ黄蝶 御宿かわせみ34
平成18年4月 初出オール讀物平成17年2月号~平成17年11月号8月号除く
いよいよ最終号
浮かれ黄蝶
月に3回,習い事で麻生家に通う麻太郎と源太郎。麻太郎はその折に,新内語りの鶴賀喜久大夫の家の前で,娘の15歳のお蝶と出会う。そのお蝶が風呂敷を12,3歳の子に奪われる。奪い返す麻太郎。そんな二人の様子を花世が見ていた。両国橋の回向院へ出かけた麻生花世と小太郎,麻太郎,千春,源太郎と小春は老人から財布を奪う少年たちを見かけ,麻太郎と源太郎は財布を奪い返す。通之進は,源三郎に少年たちを探るように命ずる。少年たちの頭がお蝶だった。
捨てられた娘
雛の節句で麻生家に集まった神林家,畝家の子どもたち。その中に花世の友達16歳の喜久江がいた。200石の旗本小林参市郎の娘だった。花世は,あの家は少しおかしいから,あの家から目を離さないようにしているという。小林家には女中上がりの後妻,おたねに甲太郎10歳,次男嶋次郎がいた。その甲太郎が行方不明になった。さらに甲府勤番を命じられた参市郎も,若党の定之助が途中ではぐれ,参市郎が甲府に着いていないと報告する。花世は東吾に2人に探してほしいと頼みに来る。旗本に起きた刃傷。花世は1人で生きていくと宣言する。
清水屋の人々
るいの茶の湯の師匠,寂々斎楓月の所へ出かけていったるいが,そこで会った向島の鯉料理の店,清水屋の内儀おきよを連れてかわせみにやって来る。このままでは殺されるという。姑のおもととの仲の悪さが有名。おきよの亭主は,おもとの亭主,清兵衛の甥の清七で店を立て直したという。おきよは3人目を身ごもっていた。おもとの乱心,清兵衛は女房と孫を殺害する乱行に及ぶ。やるせない嫁姑の確執。
猫と小判
三田の久保田町の畳職人の庄助15歳は祖母のお杉と2人暮らし。その飼い猫の虎吉が10両の入った灰色の袋を引きずってきた。狸穴の方月館の近くの菓子屋,千成屋の主人喜三郎がお杉に「無理難題を言っていたという。喜三郎の妹が嫁いだ大店の姑,お芳80歳が10両ずつ川や畑に捨てていた。お杉や喜三郎はその金を拾っていた。そのお杉が殺される。喜三郎を白状させる東吾の推理が冴える
わいわい天王の事件
6月16日の朝,芝浦の浜の魚船の中で男が殺されていた。その顔には赤い面がかぶされていた。それは昔,6月の祇園会の時にわいわい天王がかぶっていた猿田彦の面だった。源三郎,長助,仙五郎が必死に探索をしていた。その殺された男は伝吉といい,50過ぎで仕事をしているふうではないが,暮らしには困っている様子もない。かわせみの番頭の嘉助は昔,るいのために6月の長松寺の朝顔市に出かけ,本堂の裏で日本橋廻船問屋西国屋の25歳の若主人,重太郎が殺された事件を思い出す。その時,猿田彦の面をかぶった男がいたという。今の主人,重兵衛や従弟の助九郎も容疑があったが事件当日は江戸にいなかった。るいの亡き父,庄司源右衛門も嘉助も悔しい思いをしたという。その頃,かわせみには東吾が大阪で知り合った大阪の船問屋利倉屋の船乗りの新助がやって来た。利倉屋の娘婿にという話が決まり,親戚筋の江戸の利倉屋に泊まり,江戸で独りで暮らす母親おきぬを引き取りに来たという。おきぬは西国屋の女中をしていたとき,死んだ重太郎と結婚の約束をしていたという。新助は2人の子だった。その新助が伝吉と会っていたという知らせが入り,新吉が下手人ではないかと疑いがかかる。その新助に西国屋から迎えに来たと,新助が泊まっていた利倉屋からかわせみに知らせが入る。東吾が助けに行く。
二人伊三郎
航吉は,大阪から江戸にくるたびにかわせみで東吾に航海術のことを教えてもらっていた。
お石が住む堀江町界隈で,30過ぎの伊三郎が,5歳の頃,角兵衛獅子にさらわれ,自分の家を探していると有名になる。しかし,実は空き巣と置き引きの犯人だった。また,かわせみ泊まった大阪の船主,北方屋甚兵衛の供の1人も伊三郎といった。跡継ぎのない甚兵衛はこの伊三郎を跡継ぎにと考えていた。しかし,航吉とかわせみに来ていた父の岩吉は,この伊三郎に勘吉ではないかと声をかける。
公孫樹の黄ばむ頃
下総の市川の法林院からるいに法要の案内が届く。るいの父源右衛門の母,つまり祖母の兄,名主の千本喜右衛門の38回忌という。千本家には,るいが5歳の時に,母が亡くなった時にしばらく身を寄せていた。その喜右衛門の死後,後妻のおさん,先妻の長女お咲,お咲の婿でおさんの甥の作之助が毒を口にして一緒に死んでいた。るいはその場にいたという。るいは法要の翌日,潰れた千本家の跡に立ち寄る。そこで,木更津へ身を寄せた,お咲の妹おむらと出会う。おむらはとお咲はおさんから継母いいじめを受け,義兄の作之助は遊び人だったという。そして,お咲から,自分に何かあったら,この土地にいてはいけないと言われたという。父の源右衛門は事件後,おむらを送って木更津まで連れて行ってくれたという。なぜ,同心の父はこの事件を見逃したのか。37年前の出来事がよみがえる。御宿かわせみの最終回。
平成18年4月 初出オール讀物平成17年2月号~平成17年11月号8月号除く
いよいよ最終号
浮かれ黄蝶
月に3回,習い事で麻生家に通う麻太郎と源太郎。麻太郎はその折に,新内語りの鶴賀喜久大夫の家の前で,娘の15歳のお蝶と出会う。そのお蝶が風呂敷を12,3歳の子に奪われる。奪い返す麻太郎。そんな二人の様子を花世が見ていた。両国橋の回向院へ出かけた麻生花世と小太郎,麻太郎,千春,源太郎と小春は老人から財布を奪う少年たちを見かけ,麻太郎と源太郎は財布を奪い返す。通之進は,源三郎に少年たちを探るように命ずる。少年たちの頭がお蝶だった。
捨てられた娘
雛の節句で麻生家に集まった神林家,畝家の子どもたち。その中に花世の友達16歳の喜久江がいた。200石の旗本小林参市郎の娘だった。花世は,あの家は少しおかしいから,あの家から目を離さないようにしているという。小林家には女中上がりの後妻,おたねに甲太郎10歳,次男嶋次郎がいた。その甲太郎が行方不明になった。さらに甲府勤番を命じられた参市郎も,若党の定之助が途中ではぐれ,参市郎が甲府に着いていないと報告する。花世は東吾に2人に探してほしいと頼みに来る。旗本に起きた刃傷。花世は1人で生きていくと宣言する。
清水屋の人々
るいの茶の湯の師匠,寂々斎楓月の所へ出かけていったるいが,そこで会った向島の鯉料理の店,清水屋の内儀おきよを連れてかわせみにやって来る。このままでは殺されるという。姑のおもととの仲の悪さが有名。おきよの亭主は,おもとの亭主,清兵衛の甥の清七で店を立て直したという。おきよは3人目を身ごもっていた。おもとの乱心,清兵衛は女房と孫を殺害する乱行に及ぶ。やるせない嫁姑の確執。
猫と小判
三田の久保田町の畳職人の庄助15歳は祖母のお杉と2人暮らし。その飼い猫の虎吉が10両の入った灰色の袋を引きずってきた。狸穴の方月館の近くの菓子屋,千成屋の主人喜三郎がお杉に「無理難題を言っていたという。喜三郎の妹が嫁いだ大店の姑,お芳80歳が10両ずつ川や畑に捨てていた。お杉や喜三郎はその金を拾っていた。そのお杉が殺される。喜三郎を白状させる東吾の推理が冴える
わいわい天王の事件
6月16日の朝,芝浦の浜の魚船の中で男が殺されていた。その顔には赤い面がかぶされていた。それは昔,6月の祇園会の時にわいわい天王がかぶっていた猿田彦の面だった。源三郎,長助,仙五郎が必死に探索をしていた。その殺された男は伝吉といい,50過ぎで仕事をしているふうではないが,暮らしには困っている様子もない。かわせみの番頭の嘉助は昔,るいのために6月の長松寺の朝顔市に出かけ,本堂の裏で日本橋廻船問屋西国屋の25歳の若主人,重太郎が殺された事件を思い出す。その時,猿田彦の面をかぶった男がいたという。今の主人,重兵衛や従弟の助九郎も容疑があったが事件当日は江戸にいなかった。るいの亡き父,庄司源右衛門も嘉助も悔しい思いをしたという。その頃,かわせみには東吾が大阪で知り合った大阪の船問屋利倉屋の船乗りの新助がやって来た。利倉屋の娘婿にという話が決まり,親戚筋の江戸の利倉屋に泊まり,江戸で独りで暮らす母親おきぬを引き取りに来たという。おきぬは西国屋の女中をしていたとき,死んだ重太郎と結婚の約束をしていたという。新助は2人の子だった。その新助が伝吉と会っていたという知らせが入り,新吉が下手人ではないかと疑いがかかる。その新助に西国屋から迎えに来たと,新助が泊まっていた利倉屋からかわせみに知らせが入る。東吾が助けに行く。
二人伊三郎
航吉は,大阪から江戸にくるたびにかわせみで東吾に航海術のことを教えてもらっていた。
お石が住む堀江町界隈で,30過ぎの伊三郎が,5歳の頃,角兵衛獅子にさらわれ,自分の家を探していると有名になる。しかし,実は空き巣と置き引きの犯人だった。また,かわせみ泊まった大阪の船主,北方屋甚兵衛の供の1人も伊三郎といった。跡継ぎのない甚兵衛はこの伊三郎を跡継ぎにと考えていた。しかし,航吉とかわせみに来ていた父の岩吉は,この伊三郎に勘吉ではないかと声をかける。
公孫樹の黄ばむ頃
下総の市川の法林院からるいに法要の案内が届く。るいの父源右衛門の母,つまり祖母の兄,名主の千本喜右衛門の38回忌という。千本家には,るいが5歳の時に,母が亡くなった時にしばらく身を寄せていた。その喜右衛門の死後,後妻のおさん,先妻の長女お咲,お咲の婿でおさんの甥の作之助が毒を口にして一緒に死んでいた。るいはその場にいたという。るいは法要の翌日,潰れた千本家の跡に立ち寄る。そこで,木更津へ身を寄せた,お咲の妹おむらと出会う。おむらはとお咲はおさんから継母いいじめを受け,義兄の作之助は遊び人だったという。そして,お咲から,自分に何かあったら,この土地にいてはいけないと言われたという。父の源右衛門は事件後,おむらを送って木更津まで連れて行ってくれたという。なぜ,同心の父はこの事件を見逃したのか。37年前の出来事がよみがえる。御宿かわせみの最終回。