日々 是 変化ナリ ~ DAYS OF STRUGGLE ~
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読後評:憎悪の世紀 なぜ20世紀は世界的殺戮の場となったのか(下)
BOOKS
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2010年11月03日
上下2冊、計1000ページもの大著の(下)
著者は、今年読んだ本で最も面白かった「マネーの進化史」の作者ニーアル・ファーガソン(ハーバード大学歴史学教授)
(上)からして、極めて残虐な記述がえんえんと続いたのだが、(下)に入ると第二次世界大戦に突入、恐怖のホロコーストに突入。
さらには第大日本帝国の蛮行も描かれ、ますます読むのが辛くなる。
さて、「マネーの進化史」や(上)の時のように(下)で特に刺さった部分を以下メモ。
イギリス首相(チェンバレン)は残念ながら誤った時期を選んでしまった。
その意味では、チャーチルは半ば正しかった。
1939年の戦争は、本当に「不必要な戦争」だった。
だが、1939年の戦争を避けるために必要だったのは、1938年に開戦することだった。
ナチスのプロパガンダは、超法規的な暴力を意図的に助長した。
たとえばヒトラーは、宣伝賞に出した1941年7月の通達で、「敵がどんなヤツであるのかをドイツ小公民に知らしめるため、ロシア人がドイツ人捕虜を残虐に扱う場面をニュース番組にもりこまなければならない」と強調した。
ヒトラーはさらに「性器を切り落としたり、捕虜のズボンに手榴弾を装着したりする残忍な行為」も挿入するように具体的に指示した。
それは、ヒトラーの狙ったとおりの効果を上げ、「人種間の戦争」は大殺戮に至った。
バルバロッサ作戦を開始してから最初の数週間で、ドイツは合わせて60万人もの捕虜を処刑し、最初の冬が終わるまでに200万人あまりを殺害したと見られる。
ドイツ人が外国の盟友や強力者を頼りにすればするほど、ドイツ帝国は必然的に多民族で構成されるようになった。
大量虐殺を実行した政権は、言うまでもなくナチス以外にもある。
犠牲者の人数は、スターリン政権下のソ連が政治的な理由でより多くの者を粛清している。
ソ連の収容所で展開された残虐さと、ナチス政権が行った強制収容所のさまざまな凶悪な実態ーとくに下級刑使のむごたらしいサディズムーとの間には、明らかに類似点が認められる。
中国の毛沢東のもとで粛清された人数は、さらに多い。
だがユダヤ人やその他の不幸な少数民族を「生きるに値しない声明」とみなして絶滅させようとしたナチスのやり口には、質的な違いがある。
手を下したのが教育水準の高いものたち、少なくとも1933年までは世界で最も進んだ教育制度を享受した人びとだという事実があるからだ。
しかも見逃せないのは、ほぼ民主的な手段で権力の座についた1人の男の指導下でなされたという点だ。
そのため、ナチスの殺人機械は、経済的かつ科学的に、そして上品さを装って機能した。
きわめて現代的だった。
まことに奇妙なことだが、アメリカ経済が大恐慌から立ち直ったのは、少なからずほかの国の都市を壊滅させるという犠牲の上に成り立っているのだった。
連合国軍の航空機が高い高度で飛べるようになるにつれて、また「パスファインダー」などの技術で飛行ルートが一定化するにつれて、爆撃機の乗組員の、自分とは無関係だという意識はさらに高まった。
その点に、数千フィートもの上空から女性や子供を焼き尽くす事、ガス室に大量の人を送り込むことの心理的な違いがある。
眼下で地獄に放り込まれる民間人を直視せずに、都市を破壊できるのだから。
連合軍の空爆は、ナチスの細かく分類されながらあいまいな基準で選別された人複文と大差ないほど、無差別なものだった。
1945年1月、ソ連軍の第一弾がアウシュビッツの門に到達した。
(中略)
だが、ソ連による「解放」というスターリンの発想には、はなはだしい矛盾があった。
グラーグ収容所を生み出した体制にとって、いかなる意味においてもほんとうに解放することに関心はなかった。
ドレスデンで死活していて生き延びたユダヤ人言語学者のヴィクトール・クレンペラーは、全体主義が使うことばに極めて敏感になっていたため、自分を解放してくれた者と、それまで自分を束縛していた者との不気味な類似性に気付いた。
クレンペラーは、ソ連占領当局が出す「一本調子」のラジオ放送と「政治色の強い」新聞紙面が、それまでの体制のものと共通点が多いことに、いやでも注目させられた。
「世界戦争」は従来、世界の帝國同士が対決する形で進んできた。
主戦場は、ユーラシア大陸の両端だった。
だが、それとは対照的に、第三世界の戦争は、新たな遠隔地で間接的に戦われる。
フツ族とツチ族は社会のなかでほとんど差別されていなかった。ともに同じ言語をしゃべり、同じ村で共存していた。
さらに見過ごされがちなのが、双方の部族はお互い結婚によって混交が進んでいた。
(中略)
つまり「みな殺し現象」は、一方的に虐げられていた部族が蜂起したという図式ではなく、隣人同士あるいは親族のなかでも起こったのだった。
と、最新の虐殺が起こったルワンダなどにもふれつつ、1000ページが終了。
上記に並べただけでも、明らかに多くの示唆を受けれたという点で、ご興味の方には一読をお勧めしたい。
ただし、超強力に壮絶な読書になるのは間違いないが。。。。
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