ねこ庭の独り言

ちいさな猫庭で、風にそよぐ雑草の繰り言

『最後の殿様』 -2 ( おふじさん )

2021-06-15 22:07:18 | 徒然の記

 松平婦知子さんを、ネットで調べますと興味深い事実が分かりました。情報をまとめた人物は、恐らく左翼系の人物であろうと推測しました。理由は二つです。

 1. 側室制度を否定的に捉え、義親侯が生涯コンプレックスを抱いたと説明している。

 2. 松平婦知子さんの名前を、糟屋婦志子さんと間違って書いている。

 侯の自伝を読めば、コンプレックスどころか、生母への誇りを語っています。コンプレックスがあるのなら、自伝の中でここまで堂々と披露するでしょうか。ただし、松平婦知子さんの出自は、間違いない事実のようです。

 「婦志子は、徳川家定夫人・天璋院の御用人、糟谷十兵衛の4女である。」

 将軍のご令室なら、正しくは御台所と言うべきでしょうが、情報の作成者は礼儀も払いません。平気で、大切な名前も間違えます。たとえ糟屋家の4女であっても、春嶽侯のお子を宿したことで松平姓となったのに、それをわざわざ糟屋婦志子としか書かないところに、この人物の偏見が感じ取れます。

 余計な回り道をし、つまらないネットの情報を取り上げているのは、反日左翼学者の情報操作の実例を、息子たちに伝えたいからです。過去には過去の価値基準があっても、現在の価値観で評価し、「遅れている」、「間違っている」と、批判の対象にします。こういう思考しかできないから、「男女平等」や「女性の社会進出」などと、軽薄な意見で、日本の伝統と文化を破壊します。

 侯の著書のテーマは、側室問題ではありませんが、昨日までの「有識者会議」への鬱憤が消えないためか、つい横道へ深入りします。ここでもう一度、著書の30ページに戻りましょう。

 「勤勉と誠実の表現として、俗に "  朝から晩まで   " というが、」「母は、 "  朝から朝まで   " 僕らを見守っていた。」「夜は何度も見回りにくる。」「夜着が外れていると、かけてくれる。」「姉たちは日本髪で、箱枕をして寝る。」「枕を外していると、取り上げて、謝らねば返さない。」

 「日本髪は箱枕がないと崩れるから、姉たちは謝る。」「寝相が悪いと、朝まで紐で括られる。」「厳しく躾けられると、やがては正しい姿勢で寝るようになる。」「いつでもどこでも正しく座って、膝を崩すことは許されない。」

 殿様は自由気ままに、わがままに育てられていると思っていましたが、将軍家につながる大名家ともなれば、幼い頃から修行の日々でした。

 「食事の時、おふじさんは自分の部屋で食べる。」「母子でも、主人と召使いの別がはっきりしていた。」「母は箸の持ち方、あげおろし、食事の順序をこと細かく注意する。」「食事は一汁二菜、香のものを入れて三菜である。」

 大切なところなので、丁寧に転記します。

 「食事の際は、左の飯椀の蓋を、左手で取って左へ置く。」「右の蓋は、右手で取り、右へ置く。」「箸は両手で揃え、右手で綺麗に持つ。」「ご飯を一口食べ、汁を飲み実を食べる。」

 「後は菜を自由に食べるが、菜から菜に渡ってはいけない。」「ご飯を先に食べるのは、米が主食で、」「農民への感謝の気持ちである。」

 この下りを読んだ時、私は仁徳天皇の読まれた歌を思い出しました。

  高き屋に 上りてみれば 煙立つ

   民のかまどは にぎはいにけり

 高い山に登り下を見ると、多くの煙が立ち上っている。民は豊かで、天下は安泰だなと安心された、天皇の歌だと習いました。将軍家に連なる殿様が、食事のたびに農民に感謝されているのだと語られますと、仁徳天皇の御製への信憑性がさらに高まります。

 天皇が即位された時、人家のかまどから炊煙が立ち上がっていないことに気づき、その困窮ぶりに胸を痛められ、租税を3年間免除し、天皇ご自身もその間は、宮殿の屋根の茅の葺き替えをしないで過ごされたと、小学生の頃教わりました。まだ日教組が猛威を奮わない時の、田舎の学校でしたから、先生も子供たちにそんな話をしてくれていました。

 侯の著作を読んでいますと、反日左翼に毒されない昔のことを、思い出させられます。「古くても新しい書」とは、氏のような本を言うのでしようか。図書館の廃棄本とはいえ、私には煌めく宝石のような一冊です。読後には有価物として出さず、本棚に残し、息子たちへの贈り物に加えます。

 次回も、おふじさんの話を続けますので、どうか皆さんも「ねこ庭」へお立ち寄りください。お待ちしております。

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2 コメント

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Unknown (あやか )
2021-06-16 18:55:05
松平義親侯爵の御名前はお聞きしたことはあります。

しかし、その御生母の婦知子様のことは、はじめてお聞きしました。

側室というお立場でしたが、世継ぎを出産し育てられ、
立派なかただと思いました。
その事については、自負心と矜持をもっておられたと思いますが、御自分の実子から『お母様』と呼んでもらえないことに
つきましては、内心では悲しみを感じておられたと思います。
しかし、その悲しみを隠して、側室の立場として謙遜な態度を取っておられたことには、涙を誘います。

義親侯爵も、そういう事には理不尽さを感じておられたことでしょう。
もちろん、私も、率直に申しまして、そういう家庭状況には奇矯な印象を感じます。

ただし、それは現在の価値観で批判してはならないことは、私でさえも、わかります。
ただ、婦知子さまの、御真意と「控えめな『母性愛』」を推し量るべきでしょう。

その徳川義親侯爵の御著書は、歴史的資料としても、個人の人生の告白としても、良書だと思います。
永久保存・愛蔵の価値ある書物ですね。
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二つの重要法案pelz (onecat01)
2021-06-16 23:03:08
 あやかさん。

 国会が終わりました。解散を覚悟で、内閣不信任案を出すのかと思っていましたが、そんなことをすれば、野党は大きく議席を得らしたはずです。

 憲法改正のための「国民投票法」と「土地利用規制法」が、なんとか成立しました。次は、「スパイ防止法」ですね。

 野党と妥協しながら、自民党の議員諸氏も頑張っているのが分かりました。「護る会」の議員諸氏が、大きな働きをしているのも知りました。

 『最後の殿様』については、これからもよろしくお願いいたします。全ては「温故知新」です。

 コメントに感謝します。
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