ねこ庭の独り言

ちいさな猫庭で、風にそよぐ雑草の繰り言

新・海外定住時代 - 3 ( オーストラリアでの日本人移民 )

2020-09-21 17:59:12 | 徒然の記

 予定を変更して、オーストラリアに定住している日本人の人数を、先に紹介します。ただいま10ページです。

 「日本人は、どんな展望を持って暮らしているのだろうか。」「これを調べるための一つの手がかりは、オーストラリア国籍を取得した人の数である。」「1990 ( 平成2 ) 年10月現在での、日本人永住者の届出数は、」「5,367人とされている。」「しかしこの数字には、オーストラリア国籍を取得した人々の数は、含まれていない。」

 「政府移民省の統計によると、1978 ( 昭和53 ) 年から、1991 ( 平成3 ) 年まで、」「国籍を取った日本人の総数は、355人に過ぎない。」「数字の上から見ると、永住者中の国籍取得者は、10人に一人いるかどうか、と言うことになる。」

 オーストラリア定住がブームになりつつあるとはいえ、高々5千人程度ですから、ベトナムの10万人には及びません。参考までにネットで、直近のオーストラリアの日本人数を調べてみました。外務省が公表している数字で、平成30年現在の日本人永住者数 は、 58,716人ですから、平成2年に比べると約10倍なっています。

 私が注目したのは、「数字の上から見ると、永住者中の国籍取得者は、10人に一人いるかどうか、」と言う、著者の言葉です。氏の説明を、転記します。

 「この事実には、日本人がオーストラリア国籍を取得することが、」「自動的に日本国籍を喪失することになると言う、法関係を知っておく必要がある。」「オーストラリア政府は、二重国籍を認めているが、」「日本政府は認めていない。」「つまりオーストラリアに長期滞在したり、永住権ビザを持って暮らしている日本人のほとんどは、」「日本国籍を捨てることを恐れており、日本に片足を置き、」「もう一つの足を、オーストラリアにかけて生きている、と言うわけである。」「別の言い方をすれば、オーストラリアで、」「最後まで暮らすことを選択した日本人は、わずかしかいないと言うことである。」

 何らかの理由でオーストラリアに来たけれど、国籍だけは失いたくないと言う、定住者たちの気持ちの中に、私は「日本人」と「愛国心」の問題を感じとります。生まれ育った国を簡単に思い切れないと言う未練を、愛国心と捉えるか、最後に頼りたいと言う計算からと解釈するのか。いろいろあると考えられます。帰化しない在日コリアンたちの気持ちも、こうして類推すれば、理解できないこともありません。

 おそらく私は、著者の予想していない姿勢で、本を読んでいる異質の読者になるのかもしれませんが、氏が何らかの偏見を持った上で意見を述べていないので、一層関心が深まります。

 一番興味を惹かされたのは、「経済移民」から「精神移民」へと言う言葉でした。

 「かって、経済的困難から南米やハワイ、アメリカ西岸などへ移住して行った人たちが、」「想像もしなかった『海外逗留』が、普通の人々に手軽にできる時代がやってきた、」「と言うわけである。」「『経済移民』から『精神移民』へと、」「海外定住を求める人たちの群像は、大きな変容を遂げている。」

 同世代の氏であるから、その変容に気づいたのかもしれませんが、私も、氏の著作で新しい発見をさせられました。「日本人」「愛国心」と、言葉は同じでも、時代が変われば意味も変化します。『精神移民』は、国民全体からすればまだ一部なのでしょうが、存在している事実は動かせません。もしかすると、息子たちの時代は、すでにそうなりつつあるのかもしれません。

 「様々な動機や背景を持ち、長期滞在している人たちの、」「個人史を追うことが、この本の目的である。」「幸せに暮らしている人、満足しながら努力している人、」「ここがダメなら、日本があると言う考えの人、」「オーストラリアの悪口を言いながら、日本の悪口も言い、日本人とばかり付き合っている人、」「背中に日の丸を背負って生きている人などの、」「軌跡や考え方を、一端であれ、紹介したい。」

 こう言うことに興味を持つところが、そもそも私と同年代の印かと思いつつ、次回から具体例を紹介していきます。「ねこ庭」を訪ねられた方々も、発想の転換というつもりで、しばらく氏の意見に耳を傾けては如何でしょう。

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 新・海外定住時代 - 2 ( オ... | トップ | 新・海外定住時代 - 4 ( 精... »

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

徒然の記」カテゴリの最新記事