自分の意見をあり得ない空想とする人は、そう思ってもかまわないと、氏自身が述べています。
20年前といえば、日米安保が揺るぎないものとして語られている時です。同盟国であるアメリカの学者が、日本を疑問視する意見を述べ世界へ発信しました。この事実から、私たちが学ぶべきことが沢山あります。その一つが、自分の国は、自分で守らなくては、誰も守ってくれないという現実です。氏に言わせれば、当然のことと一笑にふされますが、戦後の日本人、つまり私たちは、73年間現実から目を逸らしてきました。
孤独な文明国日本と氏は定義しますが、孤独でない国は地球のどこにもありません。共通の文明国同士でも互いに競い合い、疑心暗鬼し、警戒しています。異なる文明があり、対立する国や集団があれば、警戒を忘れないのが人間です。どの民族にもある防衛本能です。
それを知る私たちの先祖は、努力を重ね、外国の侵略に備えてきました。氏の著作に感心する私のようなおめでたい人間は、日本の過去にいなかったと、定年後の読書が教えてくれました。戦後の日本と日本人が、異質な世界に住んでいただけの話だとやっと気がつきました。
「そうこうする間に、インドは、」「中国が、東アジアに縛りつけられている好機に乗じ、」「パキスタンに攻撃を仕掛け、この国の核兵器と通常戦力を弱めてしまおうとする。」
私の自覚を無視し、氏はさらに「第三次世界大戦」を予測します。ここでは即座にパキスタンとイラン、中国の軍事同盟が動き始め、駆けつけたイスラム諸国のテロ組織がインド各地で活動し、とうとうインドは泥沼のような戦争へと引き摺り込まれます。まだ先がありますが省略し、日本に関する部分を紹介します。
「戦っている中国とアメリカは、それぞれ他の主要国へ呼びかけ、支援を要請する。」「中国が軍事的に勝利したのを見て、」「日本はおずおずと、中国へ擦り寄り始め、」「中国寄りの積極的な中立へと、立場を変え、」「やがて中国の要求に従い、参戦する。」「日本軍は国内に残る、米軍基地を占領し、」「アメリカは急いで、駐留部隊を引き上げる。」
前にも述べましたが、実際に日本がこうした行動を取るのか、私には疑問ですが、問題は氏が、日本をこのように見ているところです。偏見というより、学者としての研究からくる思い込みかと、善意の解釈に苦慮します。中華文明と西欧文明と日本文明は、それぞれ異質ですが、日本とアメリカと中国と並べてみれば、同質性は日本と中国にあります。
実際今でも、「一衣帯水」、「同文同種」などと、互いを懐かしむ政治家や学者が日本に多くいます。国民を弾圧する共産党政権でさえなければ、親中の日本人は、さらに増えるのかもしれません。古代の日本は中国の生徒でしたから、氏がこういう見方をしても間違いとは言えません。
米中の戦争を契機に第三次世界大戦となりますが、詳細かつ煩雑なので途中を省略します。
「アメリカ、ヨーロッパ、ロシア、インドは、」「こうして中国と、日本と、イスラムの大部分を相手に、真の世界大戦に突入する。」
注目すべき点は、日本が西欧の不倶戴天の敵である、イスラム勢力の側の国として語られているところです。イスラムと日本に共通するものはなく、日本はただ中国との戦いで、弱みを見せたアメリカを攻撃したという氏の予測に過ぎません。氏の目に見えている日本は、誇り高い独立国でなく、単なる風見鶏国家です。ロシアと戦い、中国と戦い、米英とも戦った昔の日本なら、氏はここまで蔑視したでしょうか。
息子たちに言います。戦前の日本を、「軍国主義国」「侵略国家」と、多くの人間が攻撃しますが、果たしてそうだったのかと、疑問を抱いて欲しいのです。敗戦を機に日本人は、神国日本から軍備放棄の平和国家へと、思考を極端に振ってしまいました。しかしご先祖を全て否定した間違いに気づく時が来ていることを、氏の著書が教えています。
次回は、第三次世界大戦の結果、国際情勢がどうなったのか。ここまでくれば、最後まで氏の意見を紹介しましょう。