ねこ庭の独り言

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ラオス現代文学全集 - 2 ( 元ラオス大使の推薦文 ? )

2019-07-09 13:33:49 | 徒然の記
 『ラオス現代文学全集』 の、第2回目です。書評に入らず、周辺情報の整理が先行しています。なぜそうなるのかは後ほど説明するとして、必要な予備知識の紹介を急ぎます。
 
 1. 訳者の経歴 2.  解説者のあとがき 3.  ラオスという国の概要・・・この3点だけは、先に紹介する必要があると、判断しました。と、変に気を持たせるような書き方に、自分自身が我慢できなくなりました。周辺情報をなぜ先に紹介するのか、その理由を説明します。
 
 訳者は勿論、解説者の元ラオス大使も、収録された文学作品を日本の人々にぜひ読んでもらいたいと、賞賛しています。しかし、読後の私の感想は別のものでした。
 
 「これがラオス文学の最高と言うのなら、ラオスは、いったいどんな国なのか。」
 「これをラオスの優れた文学作品と、なぜ訳者たちは賞めるのか。外務省の役人には、文学を読む感性がないのか。」
 
 楽しみにして読み始めたのに、結果は期待はずれでした。訳者の感性に言及する前に、私自身の感性が乏ししいのかもしれませんが、それにしてもこの落差に驚いています。
 
 学生時代だった当時は、まだプロレタリア文学が盛んな時期でした。、徳永直の『太陽のない街』や、小林多喜二の『蟹工船』を読みました。そのほか、葉山嘉樹、黒島伝治、平林たい子、宮本百合子、佐多稲子などの作品も、読みました。
 
 私は彼らの作品を読み、読後の不完全燃焼感を持て余しました。マルクス主義に心を寄せていた時ですから、ブロレタリア作家と呼ばれる人々に親近感を抱いていました。感動できなかったのは、作品の単純さと言うか、稚拙さと言うか、文学以前の話でした。
 
 マルクスの論文を読んでいるのでありませんから、文学作品で、長い理論の説明はいりません。貧乏人がみな正しく立派で、金持ちは全て悪だとする、二元論の粗雑さも作品の価値を害っていました。貧乏を憎み、平等な社会に憧れていた私ですが、プロレタリア作家には辟易させられました。
 
 今回の本には、4人のラオス人作家の17の作品が紹介されていましたが、どの作品を読んでも、学生時代の記憶がよみがえってきました。簡単に言いますと、「稚拙」、「生硬」、「粗雑」と言う印象がでした。最近は反日左翼への嫌悪が、偏見の域に達していますので、適切な評価をしているのか自信がありません。実際の作品には、後で触れますので、息子たちと訪問される方々は、その時自分で判断してください。
 
 今は、周辺情報の整理を優先させます。 
 
 1. 訳者の経歴 二元裕子 ( ふたもと ゆうこ )
  「昭和51年、大坂生まれ。」「平成12年、京都大学法学部卒。同年外務省入省。」「入省後2年間、ラオス国立大学留学。」「平成15年より、在ラオス日本大使館勤務。」「平成18年、外務省東南アジア第一課、ラオス班にて勤務。」「平成24年より、再び在ラオス日本大使館勤務。」
 
 2.  解説者のあとがき 橋本逸男 ( 元ラオス大使、日本ラオス協会会長、前東北大・大学院教授  ) 
  「二元裕子さんは、外務省に勤めるラオス語の専門家であり、現在は、ビエンチャンの日本国大使館で、二度目の、ラオス勤務中である。」「最初の勤務は、私がラオス大使を務めた当時で、真に優秀で信頼できる部下であった。」
 
 橋本氏の文章は長いので、適当に割愛し、必要と思われる部分だけを転記いたします。
 
 「外務省のラオス語専門家の、実力の高さ素養の深さは、世界の外交会でも屈指である。」「二元さんは既に研修中から、ラオス要人や、各層人士との、会談等の通訳を経験していたが、その通訳ぶりは見事であり、ラオス人士の評価も高かった。」「本書の作品の選択、翻訳に二元さんが当たったのは、誠に人を得た、幸いなことであった。」
 
 「ラオスは日本と友好関係にあり、人々の対日感情も暖かい。」「日本として、官民を問わず、良好な関係を発展させていきたい国である。」「正直に申して、本書で紹介された作品が、日本の方々が考える文学像に、ピッタリと合致するものか否かは、私には分からない。」
 
 「しかしそこには、紛れもなく、ラオスとラオスの人々の姿が、生き生きと描かれており、その国の風土や人々への、我々の理解と共感を深めてくれると考える。」
 
 何気なく読んでいましたが、今にして思えば、 元ラオス大使橋本氏は、本音を語っていました。
 
 「正直に申して、本書で紹介された作品が、日本の方々が考える文学像に、ピッタリと合致するものか否かは、私には分からない。」・・・
 
 おそらく氏は、私に似た印象を抱いていたのではないかと、そんな気がいたします。有効でないと思われる、文学作品の紹介であっても、ラオスとの友好関係に役立つのなら、しないよりマシだろうと、そんなニュアンスさえ感じられます。
 
 こうなりますと、公益財団法人大同生命国際文化基金がやっていることは、もしかすると日本の国策に沿った事業ではないかと、名探偵ポアロのような推理が働いてきました。書評を離れ、横道へと進んでいきますが、大事なことである気がしますので、次回もこのまま話を進めます。気が向いた方は、「ねこ庭」へ足を向けてください。
コメント
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