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ラオス現代文学全集 ( 公益財団法人大同生命国際文化基金 )

2019-07-08 23:26:42 | 徒然の記
 二元裕子氏編訳『ラオス現代文学選集』( 平成25年刊 公益財団法人大同生命国際文化基金)を、読み終えました。
 
 「ジャカルタ路地裏フィールドノート」 の著者倉沢愛子氏は、元インドネシア大使館勤務の大学教授でしたが、二元氏はラオス大使館勤務の官僚です。倉沢氏の著書は、インドネシアの街に住んだ体験談でしたが、二元氏の本はラオスの現代文学の紹介です。6名の作家の短編が、取り上げられています。
 
 長生きはするものと思いました。このような形で、アジアの国の文学が出版されているとは、思いもかけないことでした。倉沢氏の本は、営利会社である中央公論社が出していましたが、こちらは、公益財団法人大同生命国際文化基金の出版物です。制作協力会社として、日経新聞社の日経事業出版センターの名前があります。
 
 調べてみますと財団は、タイ、パキスタン、マレーシア、インド、インドネシア、ミャンマー、ベトナム、フィリピン、カンボジア、バングラディシュ、スリランカなど、アジアの国々の現代文学を、シリーズで紹介しています。しかもこの書籍は、図書館の購入図書でなく、何らかの方法で配布されている非売品です。定価が書かれていません。
 
 書評もさることながら、珍しい出版物なので、「公益財団法人大同生命国際文化基金」について、調べてみたくなりました。巻末に、同財団法人の「発刊のことば」があります。
 
 「我が国の立国の条件は国際平和にあり、ややもすれば、軍事と経済によってことを決しようとする、国家の論理によってではなく、民族や市民レベルにおける人間と文化の交流によって、ものごとの解決を実現する時、それは真に堅固なものとなるでありましょう。」
 
 学生時代の私でしたら、素晴らしい言葉と感激したはずです。しかし世俗の波に揉まれた私の魂は、悲しいことながら、??となってしまいます。朝日新聞のおかげで、美しい言葉に簡単に共鳴しなくなっています。第一、「我が国の立国の条件は、国際平和にあり、」とは、誰が言っているのでしょう。憲法の前文以外で、聞いたことがありません。
 
 「このような願いのもとに、わが国と諸外国との間の人と文化の交流に、微力を尽くしたいと考え、大同生命国際文化基金は創立されました。」
 
 わが息子たちにしても、訪問される方々にしても、いち民間企業である大同生命がかくも高邁な精神で、日本とアジアのため活動していることを知らないはずです。それだけでもこの驚きの事実を、伝えたくなりました。「発刊のことば」は、まだ続きます。
 
 「私どもは財団創立以来、志を同じくする方々と手をたずさえ、幅広く活動してまいりましたが、事業の一つとして〈アジアの現代文学 〉 をテーマに、この地域の国々の優れた作品を、わが国に紹介することといたしました。」「小説、詩、評論、随筆など、様々なジャンルの作品を対象とし、これらを順次、国別のシリーズとして、上梓してまいります。」
 
 これを読みますと、財団が他にも様々な活動をしていて、文学作品の紹介は、その一つに過ぎないことが分かります。
 
 「文芸は、それを生んだ社会を映す確かな鏡であります。」「国ごとに、多くの作品群を持つことができれば、それらは何よりも雄弁に、色彩豊かに、われわれが知らねばないない国々の、今日の姿を描き出してくれるでありましょう。」
 
 この文章がすでに格調の高い、文学のようです。若い頃だったらきっと感激しただろうと、残念な気もします。金儲けを第一とする企業が、ここまで無私の行動をするのですから並大抵のことではできません。
 
 「また、この地域の文芸作品は、商業出版で取り上げる機会がないため、在野の研究者の努力が埋もれているという実情もあります。」「このプログラムが、これらの有為の方々に対する励みになることを、期待しています。」
 
 「私ども財団のささやかな試みが、わが国もその一員である、アジア諸国への理解を深める上で、いくばくかの意義を加えることができれば、これに勝る喜びはありません。」
 
 「発刊のことば」の全文です。財団のホームページを検索しますと、次のようなことが分かりました。
 
 「財団法人大同生命国際文化基金は、大同生命保険相互会社(当時)の、創業80周年を記念して、外務大臣の許可のもと、1985年(昭和60年)3月27日に設立しました。」
 
「平成22年11月には、内閣総理大臣より公益認定を受け、同年12月1に日に、登記を完了しました。」「出捐者、大同生命保険株式会社」「基本財産21億円、事務局長 阪東 敏哉」
 
 公益財団法人が、常に外務大臣や総理大臣の認可を得るものなのか、詳しいことは知りませんが、何れにしてもいい加減な組織ではありません。ホームページには詳細な説明がありましたが、読むほどに複雑になるため途中で止めました。財団の活動の一部だけを、転記いたします。
 
 1.大同生命地域研究賞の贈呈
 
 地球的規模における地域の、総合的研究を支援するため、地域研究の分野で、高い業績をあげた研究者に対し、地域研究賞・同奨励賞を、また、国際相互理解を深めるうえで、功労のあった方に対し、地域研究特別賞を、昭和61年以来毎年贈呈しています。
 
 2.翻訳・出版:
 
 (1)「アジアの現代文芸」シリーズ
現代アジアとの相互理解を深め、アジアの国々との親善関係を目的として、アジアの現代文芸作品を、翻訳・出版し、全国の大学、国公立図書館等に寄贈しています。
作品がより多くの方々の目に触れ、アジア諸国の社会・歴史等への理解が、一層深まるよう、電子書籍化を進め、大同生命国際文化基金のホームページで、公開(無償)しています。
 
 (2)「ジャパニーズ・ミラーズ」シリーズ
アジア諸国の方々に、「日本」という国への理解を、より一層深めていただくことを目的として、日本図書のアジア各国語への翻訳・出版を、平成11年より行っています。各国の言語に翻訳・出版した作品は、現地の大学や図書館等に寄贈しています。
 
 疑問が解けました。図書館への寄贈は、財団が行なっていたのです。情けない話ですが、私は財団の活動に敬意を払わず別の思いを誘われました。
 
 「これは、金をばらまいているだけの組織ではないのか。」「保険会社は、よほど儲けているのだろう。」
 
 ブログでは他人のことを、心根が卑しいと批判しますが、私自身も相当卑しい心根です。明日も続けますが、息子たち以外はスルーしてください。戸惑いながらのブログで、自分でも自信がありません。
コメント (2)
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