ねこ庭の独り言

ちいさな猫庭で、風にそよぐ雑草の繰り言

戦争と正義 - 4 ( 過去の正義の戦争と、ベトナム戦争 )

2019-06-19 21:47:50 | 徒然の記
 ということで朝日新聞社と翻訳者を意識から外し、8名の歴史学者の論文を読ませて頂きました。読むほどに、対米観が大きく変わりました。
 
 アメリカは世界一の金融王国で、世界一の軍事力を有し、踏ん反り返って世界を動かし誰の言うことも聞かない大国、とそう思ってきました。国内に問題を抱えていても意に介さず、他国の政治に口出しし思い通りにやってしまう国と、そういう風に考えていました。現在は大切な同盟国ですが、国民弾圧のソ連、全体主義の中国と、本質的には似た国と理解しています。
 
 そのアメリカがエノラ・ゲイの展示で、国内を二分する論争を展開していた事実に、驚きました。なぜここまで、アメリカはナーバスになったのか。博物館の展示品であるエノラ・ゲイには、どのような意味があったのか。8人の歴史学者のお陰で、アメリカにも「普通の国らしい苦悩」が存在することを知りました。
 
 この発見が今回の最大の収穫と言って、過言ではありません。
 
 建国以来アメリカがしてきた戦争は、全て正義の戦いでした。英国からの独立戦争、奴隷解放のための南北戦争、第一次世界大戦も、第二次世界大戦も彼らには、すべて正義の戦争でした。祖国の名誉のため、彼らは胸を張り、世界中で戦いました。名誉に輝く、栄光の戦いばかりでそれを誇りにしてきました。
 
 しかしこの楽天的な戦争観を打ち砕いたのが、ベトナム戦争でした。足掛け20年にわたる泥沼のような戦争は、兵士たちを悩ませ、むごたらしい殺し合いの中で、多くのアメリカ人が戦争の正義について、初めて疑問を抱きました。
 
 戦争が、自分たちが考えているような輝く面だけでなく、拭いようのない醜悪さを持っていることに気づくと、過去の歴史についても、考え直そうという機運が生まれました。
 
 広島・長崎への原爆投下は、果たして正義だったのだろうか。必要のなかった原爆を使い、日本人を、しかも一般市民を、無残に抹殺したのは、果たして正義だったのだろうかと、一部の学者たちが言い始めました。ベトナム戦争の大きな傷跡が、米国人の心に浸透していたため、学者たちの主張が力を持ち始めました。
 
 彼らは輝かしいアメリカの歴史を、「米国の神話」という言葉で語り始めました。小さな囁きなら無視されたのでしょうが、大きなうねりとなり国民の間に伝わっていくと、保守派の人間には我慢のならない事態となりました。
 
 それはちょうど私たちが、反日左翼の主張を、国に敵対するものとして嫌悪するのと同じ理屈で、彼らは学者とその同調者たちを敵視し始めました。
 
 スミソニアン博物館でのエノラ・ゲイの展示には、そうした学者の意見が反映されていたため、退役軍人の団体や保守政治家を中心に、激しい反対運動が生まれました。
 
 それはまさに日本での「東京裁判史観」、あるいは、「憲法改正」論の根深い対立同様に、国論を二分する争いになりました。
 
 朝日新聞と翻訳者である島田氏を追及しているのではありませんが、結果として、彼らの隠蔽体質を説明したことになりました。しかし、このようなことは些事です。重要なのは、次回から紹介する、米国の学者たちの意見です。
 
 本論に入る前の参考として「ベトナム戦争」について調べましたので紹介します。
 
 ・ベトナム戦争は、 1955 ( 昭和30 ) 年11月 から、 1975  ( 昭和50 ) 年4月30日まで、 およそ20年間 続いた戦争である。
 
 ・この戦争は、アメリカ合衆国を盟主とする、「資本主義・自由主義陣営」と、ソビエト社会主義共和国連邦を盟主とする、「共産主義・社会主義陣営」との間に、生じた対立、いわゆる冷戦を背景とした、代理戦争でもあった。
 
 ・ホー・チ・ミンが率いる、ベトナム民主共和国(北ベトナム)側は、南ベトナムを、アメリカ合衆国の傀儡国家、と規定した。
 
 ・ホー・チミンは、共産主義イデオロギーを背景に、ベトナム人による、南北ベトナム統一独立国家の建国を目指した。
 
 あまり参考にならないと思いますが、ついでに反日翻訳家の略歴を紹介します。
 
 「島田 三蔵は、本名前島勝義。 」「昭和13年、東京の向島生まれ。」「1957 ( 昭和32 ) 年東京教育大学文学部日本史学科に入学。」
 
 「1963 ( 昭和38 ) 年卒業後、偕成社に入社し編集者となる。」「1968 ( 昭和43 ) 年に退社し学習研究社に入社。」「1972 ( 昭和47 ) 年に退社。島田三蔵の筆名で翻訳を始める。」「世間には、作家・翻訳家として知られ、平成19年69才で逝去。」
 
 略歴にコメントする気がありませんので、今回はこれで終わりとします。
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戦争と正義 -3 ( 変わらない、朝日新聞の捏造と隠蔽体質 )

2019-06-19 13:45:23 | 徒然の記
 『戦争と正義』を、読み終えました。書評は長くなっても、息子たちのために残そうと決めました。
 
 朝日新聞が、なぜこの本を出版したのか・・・明治学院大学の助教授篠原初枝氏が、巻末で解説しています。氏は国際関係史、日米関係史の専門家だそうです。
 
 「本書は、1995(平成7)年、ワシントンのスミソニアン国立航空博物館が、第二次世界大戦の終結50年を記念して企画した、特別展に関する著作である。」
 
 「本書の際立った特色となっているのは、8名の歴史家が、それぞれの立場から、」「この展示をめぐる論争に絡むテーマについて、個別の分析を行っていることである。」「執筆者はいずれも、アメリカにおける、一流の歴史家となっている。」
 
 つまりこの本は、トム・エンゲルハート、エドワード・リネンソール氏の共著でなく、8名の歴史家の共著でした。論文を寄せた歴史家の名前と、分担しているページ数は、下記の通りです。
 
   1.  エドワード・リネンソール (  75ページ  )
   2.  ジョン・ダワー     (  38ページ  )
   3.  マイクル・シェリー    ( 22ページ  )
   4.  ポール・ボイアー      (  30ページ  )
   5.  リチャード・コーン          (  36ページ  )
   6.  マイク・ウォレス     (  34ページ  )し
   7.   マリリン・ヤング     (  12ページ  )
   8.  トム・エンゲルハート   (  12ページ  )
 
 朝日新聞社の書籍編集部は、本を二人の著作者、翻訳者を島田氏と、カバーに印刷していますがこれも捏造なのでしょうか。なぜこのような詰まらない細工をしたのか、思い当たる節もあります。もう一度、島田氏の後書きの言葉を読んでください。
 
 「これは単に、アメリカだけの問題ではない。」「過去の所業を直視しないという点では、」「侵略したアジア諸国へ、ろくに謝罪もせず、」「南京大虐殺や、慰安婦問題を糊塗しようとする政治家を、」「選び出す、日本の問題でもある。」「エノラ・ゲイ展をめぐる論争は、過去に対して、」「道義的責任を追わない国は、その存立基盤を危うくするという、大変重要なことを、教えてくれるだろう。」
 
 最後まで読んで分かりましたが、8人の歴史家たちは、氏のような意見を述べていません。彼らにとって大事なのは、現在のアメリカの深刻な状況であり、日本のことは二の次です。氏のように、日本が悪いと思い込んでいる人物がいて、そう思えるような主張もありますが、メインではありません。
 
 意見を寄せた歴史家たちに比較すると、島田氏の翻訳家としてのレベルの低さが見えてきます。ずっと後の話になりますが、平成26年の8月朝日新聞社は、一連の「慰安婦報道」の間違いを認め、社長が辞任しました。本の出版でも分かるように、同社の捏造と隠蔽体質はこうして続いていたのです。
 
 今回は、書評にならず、朝日新聞の批判となってしまいました。息子たちが朝日新聞のような反日新聞に惑わされたりしないように、事実を伝えるのがブログの目的ですから、回り道ではありません。
 
 これはこれなりに目的を達していますから、本日はここで一区切りです。
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