写真エッセイ&工房「木馬」

日々の身近な出来事や想いを短いエッセイにのせて、 瀬戸内の岩国から…… 
  茅野 友

クリスマスツリー

2009年12月25日 | 季節・自然・植物
 昭和20年代の前半、小学校の3、4年生の頃である。冬休みに仲の良い友達2人がクリスマスツリーを作りにやって来た。
 テレビもない当時、子供が知っているツリーといえば、店先に飾ってあるものか本で見たものである。まず、裏山にモミの木を取りに行った。片手で持てるくらいの小枝を1本切リ取って帰った。
 大きな花瓶を母に出してもらい、底の方から重しとなる小石をツリーを取り囲むようにそっと重ねて置いていく。まっすぐに立ったモミの木に、綿をちぎって乗せる。それだけでクリスマスツリーらしくなってきた。その周りに飾るものといえば、赤や青など色とりどりの丸い球、小さなサンタの人形、持ち手の曲がったステッキなどの手作りの品々。山で拾った松ぼっくり、ツリーの頂に取りつける厚紙で作った黄色の星。そんな素朴で手作り素材のツリーを作った。
 出来上がったものを床に飾ったころ、母がこれまた手作りのお菓子を出してくれる。豪華なものは何一つないこんなツリーでも、十分に楽しい気持ちになった。
 翻って、この頃のツリー。店に行けばプラスチック製のモミの木や電飾、ありとあらゆる豪華な飾りが置いてある。それらを買って帰リ、取り付けるだけで完成する。これを便利な時代になったというのだろう。
 完成品に電気のスイッチを入れると、散りばまれた豆電球が小人が踊っているかのように点滅を始める。大人でさえ見ていて飽きない。
 しかし、60年前のあの無骨な手作りのクリスマスツリーには、ただ1個の明かりもついてはいなかったが、この頃の電飾ツリーよりも遥かに明るいものが見えていたように今思っている。
(写真は、書斎の出窓に飾ったささやかな「クリスマスツリー」)