写真エッセイ&工房「木馬」

日々の身近な出来事や想いを短いエッセイにのせて、 瀬戸内の岩国から…… 
  茅野 友

キャッチボール

2009年09月15日 | 生活・ニュース
 夕方、散歩して家の近くまで帰ってきたとき、男の子がグローブを持ってコンクリートの壁に向かってボールを投げているのに出会った。この子とは数ヶ月前に初めてキャッチボールをしたことがある。「キャッチボールやろうか」「はい」。話はすぐに決まった。
 グローブを持って遊んでいる人に出会うと「ちょっと私にもやらせて下さい」と、過去に何度も公園で遊んでいる親子のグローブを貸してもらったことがある。工場勤務の現役時代の昼休みには、夏であろうが冬であろうが毎日ソフトボールをやっていたほどの野球好きである。。
 28年前に買った私の分身のようなグローブを持ち出して、男の子と広場に行ってキャッチボールを始めた。この子には祖父はいるがお父さんがいない。「何年生になった?」「6年です」というが、まだ幼さが残るかわいい顔だ。
 「スポーツは何をしているの?」「水泳を習っています」。野球はあまりやっていないようだ。ボールの投げ方を見ても体を正面に向けてぎこちなく投げる。「体は横に向けて、こうやって投げるんだよ」と、にわかコーチをする。
 「ボールを取る時には、高いボールはグローブをこう向けて、低いボールはこう向けてとる」と、キャッチングの基本から教える。何とか投げてとる格好がつくようになった。ただ一人が壁に向かって投げているだけではキャッチボールにはならない。
 思い起こせば、私がこのグローブを買ったのは、息子が10歳と5歳の時。休みの日にはよくキャッチボールをして遊んでやった。いや私自身が楽しんでいたようにも思う。6年の男の子とキャッチボールをしながら、ずい分昔、自分の息子と遊んでいたころを懐かしんでいた。ちょうどその時、男の子の祖父が自転車で通りかかった。「遊んでもろうとるんか、ええのう」。子供が少し恥ずかしそうな顔をして笑った。
(写真は、28年前に買った「現役グローブ」)