写真エッセイ&工房「木馬」

日々の身近な出来事や想いを短いエッセイにのせて、 瀬戸内の岩国から…… 
  茅野 友

8mmフィルム

2009年09月03日 | エッセイ・本・映画・音楽・絵画
 長男が盆休みに、嫁と1年生となった孫息子を連れて帰省してきた。夜、スイカをほお張りながら、ふとあるものを孫に見せてやることを思いついた。
 フジカスコープ、8㎜フィルムの映写である。今の孫と同じ年頃の長男が撮影されているフイルムがたくさんある。映写機にフィルムをセットしようとするが、何分久しぶりなためフィルムの巻きつけ方や動かし方を忘れていて手間取る。
 やっと1本目が映し出された。錦川へ川遊びに連れて行った時のものが出てきた。30年前の親が小さかったころを見ながら孫はにんまりとしている。不思議なものを見ているような感じがしたのだろう。
「私でも写せます」という、若かりし扇千景がテレビのコマーシャルでやっていたころに買ったものである。フィルムはカセット式、1本でたったの3分間しか撮影できない。それなのに結構値は高かった。
 今は撮影するといえばビデオカメラ。私は持っていないが、1時間でも2時間でも写すことができるという。技術は進歩し、いい時代になったと言いたいところであるが、そうとばかりは言えないように感じている。
 8㎜フィルムで撮るときには、ここぞという場面だけを選りすぐり、フィルムの残量を気にしながら細切れに撮影した。テレビCMを作るような気持ちで濃縮した場面だけを写した。
 今ならそんな必要はない。だらだらだらと3脚にビデオカメラを乗せっぱなしでメリハリもなく写している人もいる。
 もちろんビデオカメラが優っているのは認めるが、蝉の一生にも似た3分間という非常に短い時間しか撮影できない8㎜フィルムの切羽つまった緊張感ある撮影が今はただ懐かしい。暗くした部屋で映写機を回しながら、古きあの時代を思い出していた。
(写真は、40年前に買った未だ現役の映写機「フジカスコープ」)