まつたけ山復活させ隊運動ニュース

 松茸は奈良時代から珍重されてきたが、絶滅が心配される.松茸山づくりは里山復活の近道であり里山の再生は松茸復活に繋がる.

まつたけ「十字軍」運動NEWSLETTER-434-

2009年09月02日 |  マツタケの林地栽培 
9月3日に採れたアカエゾマツ林のマツタケ

まつたけ復活・里山再生市民運動


9月になりました.マツタケ発生のニュースも北では始まっています.
次の開催日は9月5日(土)岩倉に10時です.

まつたけは警告する
 岩手県岩泉町にあった岩泉まつたけ研究所に15年いたので、三陸沿岸にオホーツク海気団から吹き込む冷涼な北東風(ヤマセ)によりお盆どきの夜にストーブを欠かせない「寒さの夏」を経験した.今年の8月下旬は、京都地方気象台のデータでは、22日から最低気温が25℃を下回り25日にはなんと18.4℃を記録している.寝冷えをしかねない寒さである.地球規模での気候変動で亜熱帯となる夏の京都で、ストーブこそ要らないが、今年のこの気温は異常に思える.太陽の活動が未だに極小期にあり、エルニーニョの発生による冷夏を意味するのだろうか.
 こうなると、気に懸かるのがマツタケの発生である.8月の半ばまでは、北海道十勝岳のアカエゾマツ林で順調に収穫があったと聞いている.9月になって例年より1週間早い秋本番の収穫期に入ったと連絡を受けた.今、岩手産と長野産が出回っているが、岩手産の質が大変よろしいと専門店の評判である.確かに「あっと驚く」値段だ.他にラオス産これは終わったようだが、カナダ、メキシコ、韓国、中国ものが販売されている.最近、日本のマツタケと遺伝子が似ている北欧のスウェーデンやフィンランドものが輸入されているが、今年は雨不足でだめらしい.カナダやメキシコものは安いので人気がある.これらは、マツタケ臭のするマツタケの仲間で、ヒョウを見てライオンと呼ぶ位の違いがある.そんなことがまかり通るのも、日本人のまつたけ好きを示す証だろう.
 外国ものの輸入量も一頃は3千tを越えていたが、最近はその半分程度に落ち込んでいる.中国雲南省や朝鮮半島においてもその生産量が減っていて、マツタケ発生環境整備が考慮されている.国内産は依然として急ピッチで減少、1990年代の年平均流通量は267t、2000年代のそれは85tになっている(林野庁調べ).その主な原因は二つあって、気候変動とマツタケ生息地の喪失と考えられる.そのどちらも人の活動が引き金になっていることは間違いない.マツタケの生活は春から夏まで、マツタケの菌根集団であるシロの栄養生長が続き、その後、低温が刺激となって生殖生長に切り替わる.前者の気候変動はこの時期に悪さをする.秋のマツタケ子実体発生期に、子実体形成・生長障害を引き起こす残暑の継続もしくはぶり返しを招き、マツタケ生産量の不作の原因となっている.また、確実に産地の北上を促している.その内、「まつたけの産地は北欧」と教科書に載るようになるに違いない.気候変動の要因改善に地球規模で取り組まねばならないが、なかなか人はその習慣を変えることをせず、気候変動の効果と思える激しい天変地異を見聞きすることが増えている.自らの生活を見直す必要があるが、本気になる方法はないものかと悩む.後者は、前者よりは簡単なはずだが、これも大いに進んでいるとは言い難い.アカマツ林を手入れして、マツタケ増産に成功している人は全国に結構おられる.また、手入れをすべきだと理解されている林家がほとんどである.しかし、その成果の波及は遅々としている.マツタケの生活できるアカマツ林を再生するには、マツタケ山づくりをやり通す気力や体力を持ち続けることとマツタケが生活するアカマツ林に戻せるかどうかという科学的見極めが必要である.マツタケ山づくりは、大変な作業であり、現在の放置アカマツ林は土壌の富栄養化が進み、手入れを、もっとも手入れの仕方も問題だが、すればマツタケが戻ってくる林は少なくなっている.
 林野庁の資料によると、昭和54年度をピークとするマツノザイセンチュウ病によるアカマツの被害は、平成20年度の被害材積(63万m3)が昨年度と比べて微増であるというものの、減少傾向にある.この理由は、流行病の伝染力に限りが見えたのではなく、マツノマダラカミキリの餌になるアカマツが少なくなっているからではないかと思える.被害地は日本海側は青森県を窺う当たりまで、太平洋側は岩手県中南部に及び、多くの山でアカマツの姿が見えなくなっている.林家はアカマツ林再生意欲を喪失している.日本のアカマツ林再生活動は、何ら見返りを求めない市民運動が取り組んでいる.それに頼るだけでは、全国に230万haあるというアカマツ林の再生は無理と言えるだろう.
 被害がここまで拡大した理由は色々考えられる.高度経済成長期に燃料源が石油に変わり化学肥料の使用が進んだため、里山林は放置されるようになった.アカマツ林も、今まで採取していた緑肥や落葉が地表に堆積し土壌が富栄養化した.アカマツは栄養を容易に得られるので、自分の蓄えをマツタケに与えなくなり、マツタケなど菌根性キノコが減少した.そのマツタケはアカマツと共生関係にある.
 この共生関係を簡単に紹介しよう!マツタケが感染すると、アカマツの根が細かく枝分かれし表面積が大幅に増えるため、アカマツは養分などの吸収に都合がよい.地中を見ると、マツタケの菌糸がアカマツ細根をびっしりと覆い、その細根は乾燥や土中の病原菌から守られている.また、マツタケが発生する土壌にはそうでない土壌と比べて、マツタケの生活に有利に働く細菌(ヘルパー細菌)が多い.マツタケなど菌根性のキノコは林を育てる大きな役割を持っていることが分ってきた.広葉樹林に発生するマツタケが見つかっている.すると、里山林の色んな樹木にマツタケが感染し、この菌糸を通してさまざまな樹木の代謝物質が互いの樹に移動すると予測される.
 このように菌根性キノコと宿主植物は相互関係を持ちながら生活するので、マツタケなど菌根性キノコの減少はアカマツの樹勢を弱めたと考えられる.そのことがアカマツ枯損拡大に拍車をかけたように思える. これは、今新たな樹病であるナラ枯れにもあてはまるのではないか?
 人の生活スタイルの変化は、人にはエマージェンシーウイルスを、人に造られてきた里山林には新樹病を生んでいるのかもしれない.

作業区と作業内容の紹介
山づくりエリアや作業内容を変更するときは、事前に連絡下さい.
1)香川山皆伐区も予定どおりに再生が進み、アカマツ幼樹の群落が美しい.斜面の
地掻など補整作業を実施している.マツのザイセンチュウ病による枯損木が周辺に目立っている.伐倒焼却の要あり.

2)澤田山は、この秋にでも、まつたけの発生調査をするつもりであるが、アカマツ林でマツタケの生息地を再生するというエリアとコナラ林を整備するエリアとがある.各整備地ごとにネライを定めて各班ごとに独自に作業を進めている.

第1整備地は、村上班(第1整備区)と阿閉班(第2整備区)で精力的にマツタケ山づくりが行われている.第1整備区は京都府のホンシメジ接種試験が相当前に行われ、そのとき整備もされたが、菌根性のきのこの発生には土壌上の問題があるのかもしれない.補整の手入れが必要な状態になってきている.
 その南側は、やはりアカマツ林帯で、阿閉班の担当で第2整備区と呼んでいる.やがて第1整備区につなげるという.エスケープした檜・杉など大径木の処理が進んでいる.

第2整備地は、ヤマガラの里と新しく愛称がついた.以前から整備を始めているところは「ヤマガラの里A地区」と呼び整備が完了している.その西に当たるところを尾根部(アカマツ林を再生)、傾斜地部(コナラ林にする)など3区に分け、それぞれ生態的特徴を生かした整備を進めている.ここは「ヤマガラの里B地区」と呼ばれる.分からないことなどは前田・小原さんにお尋ね下さい.

第3整備地の作業エリアでは、中広さんを中心に作業が進められている.どのような林づくりがなされるのか注目をしているところである.アカマツも減少しているようだが、アカマツ林再生を考えている.シイタケの原木栽培を 「ヤマガラの里」についで 行っている.

3)玉城山は、昔は、山全体がマツタケの発生に適したアカマツ林であったが、林道が造られたためにその下のエリアからマツタケが消えた.岩泉まつたけ研究所の向林試験林内で、全く同じことを経験している.林道を一つ通すだけのように考えがちだが、周りの環境ががらりと変わってしまうのである.
榎本班と三品班で山の上下からマツタケ山づくりをしている.マツタケの生活するア
カマツ林の再生作業に取り組んでいる.地表の堆積物を堆肥化するコーナーを作っ
た.マツのザイセンチュウ病害木の伐倒焼却活動が一旦終了.
尾根筋には、アカマツ林密度が比較的高く残っているので、尾根の下部から手入れ
を上部に向けて進めている.
ここは、市民によるマツタケ山づくりのお手本として有名になった.今まで、プロによる
手入れで、マツタケ発生の復活は、「有から有は簡単である」と実証されている.
しかし、市民による手入れでマツタケ発生の成果が出たケースはここが日本初の地
である.撒水実験にも取り組むという意欲的作業が見られる.

4)稲の刈り取り作業
1) 我らが田んぼの稲(キヌヒカリ)が実ってきました。刈り取りに備えて水抜きをしています。9月中~下旬の晴天日に稲刈りをします。その後乾燥機にかけ、JAで籾摺り作業をします。いずれコメント欄で日程の予告をしますので、時間が空けばご協力をください。

<お知らせ> 
1)9月11日(金、第206回) 「ポスト民芸」活動開催
近藤高弘さんの提唱する「ポスト民芸」活動を始めることになりました.第1回目の集まりをいたします.近藤さんを交えてミーティング後、作品づくりをする予定です.
民芸品を越える作品を「岩倉焼」と名付け、レストランなどで使用できる器を制作し販売することになります.
土代や薪、温度センサーにパソコンなど消耗品は参加者負担となります.決して高くはなりませんが、実費の計算も必要です.

2)近藤高弘展 金と銀 をテーマに開催される
  大阪展   9月9日~15日    高島屋大阪店 6階
  新宿展   9月30日~10月6日  高島屋新宿店10階
  名古屋展 10月14日~20日    JR名古屋高島屋10階 

3)<提案>・・・作業場が広域に渡るため、誰がいつどの作業場で作業しているか分からない。遅れて参加される方にも分かるように、BCに「その日の行動」を書いておく黒板(白板)をおいておき、参加された折に各自で記入しておくとよいのでは・・・との提案がありました。いろんな意味で良いのではないでしょうか。

<メール便り>
1)雅子さんから
 ブログの衣装替えできましたね!いつも楽しんでいます。  今日は朝から加茂川沿いを歩いてきました。昔と違って随分自然な川に変わってきていました。しろさぎ・あおさぎ・かも等が予想以上にいて、またアユを網で捕っている人もいました。鴨川の上流から四条大橋まで15キロを川の中のしろさぎを追って撮影してきました。こんなに長く歩いたのは初めてです。賀茂川(鴨川)って素晴らしいですね!市民の癒しの場所で

<まつたけ十字軍運動に参加するには>
下記の1から7を了承の上、参加下さい.また、 “まつたけ十字軍運動とは?”も併せてご理解下さい.尚、初めての方は事前に連絡が必要(連絡先は下記主催者).
1)参加資格は問わない. 参加時間は自由、ただし、コアタイム(昼食時)の参加は必須.
2)事故を起こさないように各自勤めること.傷害保険等は各自加入のこととし、事故の責任は当事者に帰するものとする.

3)服装等:山で軽作業できる服装(運動靴か長靴か地下足袋、雨具、タオルなど).ノコ・ナタを持参が望ましい.
4)降水確率(京都府南部、午前7時)が60%以上の日は、原則的に山づくり作業は中止.しかし、山や畑にも、「雨の日には雨の、雪の日には雪の景色がある」といって、皆さんは補修や軽作業などされます.
5)持参するもの:昼食は作るので、MY皿と椀と箸、コップなど、料理の持ち帰り容器、飲料水(お茶があるので水筒)など.
6)道具類や備品は、個人購入のものや皆さんのカンパで購入したものです.大切に扱うよう願います.汚れは洗った後、保管場所に戻すこと.また、使用した食器やコップ類は洗って戻すこと.出したゴミ等は各自持ち帰ること.

7)参加費は無料;ただし、消耗品費は皆さんの浄財カンパで成り立つ、或いは必要に応じて徴收.食材費(実費)+消耗品費として現在 400円を徴収.

<活動拠点へのアクセスなど>
8)集合場所:京都バス「岩倉 村松」行き終点「村松」.あるいは現地アカマツ林(京都市左京区岩倉村松町138-20バス停「村松」から北東へ450m徒歩6分).
叡山電鉄「岩倉」駅から現地アカマツ林へ2.3Km(徒歩30分)
アクセス:
京都バスの「岩倉 村松行き」に乗車.このバスに乗車するには、
ア)JR京都駅七条口から(バス停「C6」番、所要時間約60分)
イ)阪急京都線四条河原町駅から(四条河原町交差点河原町通り北へ上ル東側(40分)
ウ)京阪本線出町柳駅から(加茂大橋東詰め北へ上ル西側、約30分)
エ)京都地下鉄烏丸線国際会館から(3番出口からバスターミナル 1番、約10分)
(地下鉄烏丸線はJR京都駅、烏丸四条、烏丸御池、国際会館などに停車) 

9)<皆さんの活動の様子を見ることができる>
ブログ画面左下ブックマーク(Bookmark)中のNikonまつたけ復活・里山再生運動を左クリックすると、ニコンオンライン写真集の画面に飛ぶ.ログインの必要はありません.写真一覧からお好きな写真を選び、<大きくみる>を左クリック.大きい写真を印刷したり保存したりできます.

<カンパ! お願い>
氏名: まつたけ十字軍 代表 吉村文彦 
銀行名: 京都銀行 山科中央支店 口座No. 普通預金 3698173

開催予定日 2009年9月―12月
活動場所は岩倉香川山. 活動開始は、午前10時頃.終わりは午後4時頃.
第205回09月05日(土)ブログ報告:池内
第206回09月11日(金)ブログ報告:三輪
第207回09月19日(土)ブログ報告:榎本
第208回09月25日(金)ブログ報告:宮崎
第209回10月03日(土)ブログ報告:三輪
第210回10月09日(金)ブログ報告:榎本
第211回10月17日(土)ブログ報告:池内
第212回10月23日(金)ブログ報告:三輪
第213回10月31日(土)ブログ報告:吉村
第214回11月07日(土)ブログ報告:榎本
第215回11月13日(金)ブログ報告:宮崎
第216回11月21日(土)ブログ報告:三輪
第217回11月27日(金)ブログ報告:榎本
第218回12月05日(土)ブログ報告:池内
第219回12月11日(金)ブログ報告:宮崎
第220回12月19日(土)ブログ報告:三輪 大忘年会 感謝祭
年末年始で休み
第221回01月09日(土)ブログ報告:榎本

まつたけ十字軍運動とは?
今、1年間に40,000種もの生物が絶滅(約13分に1種)していると推測されている.生き物1種の絶滅は、10種から30種の生き物の絶滅を呼ぶという.
日本で、802種の動物が絶滅危惧種とされ、7000種の維管束植物の24.1%(4種に1種)が絶滅危惧種に挙げられている(2007年).
環境省によれば、絶滅危惧種の50%強に当たる生物の生息地は、人里離れた奥山でなく里地里山と呼ばれる私たちの生活の場である.緑が豊かになって生き物が追われている!
私達の周りにありふれた生き物であったフクジュソウやヒメシャガなど、メダカやチョウ類やニホンウサギなど、またオオタカやイヌワシなどが、消え続けている.マツタケも、京都府では絶滅危惧種に指定されている.
生物の保全・多様性上危機に瀕する里山(アカマツ林)をマツタケ山に戻すことが目的である.私たちのマツタケ山づくりは、山-川-畑・水田(-海)のつながりを重視する.マツタケ山づくりで生まれるバイオマスの利用を、「自然」との共生型すなわち徹底した有機物循環型「農林業」に組み込む.また、我々の成果は、情報として正しく発信し、全国に230万haあるアカマツ林に普及させることを願っている.
近代的マツタケ学発祥の地、京都市左京区岩倉を活動拠点として、我々は循環型農林「業」を楽しむ.「楽しむ」ということにおいて、いわゆる農林業的作業と異なる.
時折のイヴェントや開催日のコアタイムに集まることによって、作業の情報などを共有し、互いの知恵や技術を学び、また、里山復活の喜びをともにする.
運動は、食事を作る人、木を伐る人・運ぶ人、薪をつくる人、病害木を焼却する人、畑や水田を守る人、設備を造る人、道具類を整備する人、多機能窯を守る人、拠点を整備する人、道路を補修する人、バイオトイレを守る人などすべての参加者が、互いに対等で支え合い助け合って維持運営されている.
まつたけ十字軍運動全体は、アリストテレス風に言えば、個の参加者の総和以上の意味を持つ.それ故、参加者はこの運動の全体性を見失わないようにしたい.

主 催 
まつたけ十字軍運動
代表 吉村 文彦(マツタケ生態学者)  
〒607-8421 京都市山科区御陵岡ノ西町38-27.
075-581-8932, 090-6227-4305

共 催 
京都大学マツタケ研究会
代表 大石 高典(京都大学こころの未来研究センター)
TEL/FAX 075-753-9682 / 携帯 080-6123-4706

香川理化学研究所
代表 香川 晴男
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