まつたけ山復活させ隊運動ニュース

 松茸は奈良時代から珍重されてきたが、絶滅が心配される.松茸山づくりは里山復活の近道であり里山の再生は松茸復活に繋がる.

まつたけ山復活させ隊 まつたけ十字軍運動NEWSLETTER 551

2010年11月01日 |  マツタケの林地栽培 
和歌山県富貴のイワタ山でマツタケ発生調査をするメンバーたち


京まつたけ復活・里山再生市民運動

次回(263回)の活動日は11月5日(金)です.午前10時、岩倉香川山にお集まり下さい.初参加の方は8月10日付ブログを必ずお読み下さい.

今年のマツタケ
 ラニーニャ現象が発生し、11月は穏やかでも冬期は厳しい予報となっている.今年の夏は、インド洋東部の南東貿易風が強まってインドネシア近海の温かい海水がインド洋西部に移動する.するとインド洋東部には冷水が湧き上がり低温となる.インド洋で海水温の西高東低現象が起こる(ダイポールモード;東大・山形俊男).
インドネシア周辺は大気が冷えて下降気流が生じ高気圧帯となり干ばつになる.インド洋西部は上昇気流が強まって周辺は大雨と洪水をもたらす.インド洋東部の強い下降気流によって北側に押し出された大気はフィリピン近海で上昇し中国などで大雨と洪水を起こす.より高緯度の小笠原近海で下降流が強まり日本などでは猛暑となる.アジアでは、このようにして多雨による洪水、猛暑と言った異常気象が起きたようだ.
 
 となると、マツタケの発生が気になる.今夏の猛暑で作物の生育が悪く、マツタケも不作と報道されていたようだ.実は僕は見ていなかった.気温が36℃を越えても、地表下10cmでは30℃を越えてはいない(岩倉アカマツ林).マツタケの菌糸は36℃以上に3時間ほどさらされると死滅する.濱田先生の実験結果である.
アカマツの根が成長を止めるため、マツタケも感染する相手がないことになり、新しい菌根も作られず、マツタケのシロは生殖生長に切り替わる準備をしている.猛暑の最中、本来の秋らしい順調な気温の低下と雨が見られれば豊作間違いなしと思っていた.

 アジアの松茸の主な産地は、四川省と雲南省、黒竜江省と吉林省、朝鮮半島そして日本である.大陸の産地では、日本ほど詳しいデータが得にくいが、雨に恵まれて大陸東西共に豊作ときいている.
日本はと言うと、北海道は低温と雨で、7月中旬からアカエゾマツ林やトドマツ林でマツタケが採れている.台風4号の大雨で、8月の上旬に一つの大きな発生のピークがあり、それは中旬に掛けて減少したが、8月の終わりから9月にかけてまた大きなピークが見られた..そして9月の中旬に発生は終了したが、近年になく採れたと声も弾んでいる(北海道S氏).
 
 マツタケ前線は、ついで東北に降りてくる.東北の一大産地である岩手県には3度調査に出かけた.1回目は9月の半ばにまつたけ十字軍運動のメンバーと京都大学マツタケ研究会のメンバーで、地元の杣人会の管理地でマツタケ山づくりを指導したり、旧岩泉まつたけ研究所向林試験林の見学とシンポジウムに参加したのである.シンポジウムでは、京大マツタケ研究会のメンバーが話題を提供した.

 この時期には、猛暑の影響で標高の高いところでマツタケが発生を始めたばかりで、岩泉町の低地の山では、マツタケの発生は見られていない.東京市場を取材した新聞は、「猛暑で不作」と何故か報じていた.何度もマスメディアで説明したので繰り返す必要はないが、「発生が遅れている」といえば誤報ではなかったと思われる.9月17日の朝、NHKでは、岩泉まつたけが、しばらくすると、どっと出るだろうと報じていたことは特筆される.

 二度目は、9月26日から28日に掛けて、県北の洋野町にある岩手県立大野高校の収穫祭に参加するためである.26日の夜、地元のKさんが採った大量のマツタケをと見せてくれた.ここ岩手も始まったようだった.27日の夕方、Kさんの案内で、山根温泉近くの国有林入り口を調査したが、ここのシロは発生がはじまったばかりであった.28日は、大野高校の収穫祭である.ここのユニークな環境教育の一つで、生徒たちと教諭たちと保護者たちが近くの久慈平岳のアカマツ林を借りて、2005年以来マツタケ発生環境整備事業に取り組んでいる.今年は28本と新記録の収穫であった.

 三度目は、10月3日である.全国でも二つとない松茸神社の鎮座祭に参列のため、岩泉町を再度訪れたのである.まつたけ十字軍運動のブログからNikon写真集に入ると写真が見られる.功を奏したかどうかは知らないが、岩手県沿岸の一大産地である岩泉町のみならず近辺の産地では60年ぶりの大豊作と言われていた.

 その後、マツタケ前線は順調に下がっていき、福島県のH氏、長野県のF氏の話では、こちらも大豊作であったという.
マツタケ前線も関西辺りに届いてから、緯度や標高の高い地域とは異なった様子を見せていた.新聞テレビの情報では、「丹波も大豊作らしい」が、ちっともそのような気配が見えない.確かに、和歌山県高野町東富貴のイワタ山で発生調査を試みたが、豊作である.しかし、どのシロにも発生している状態ではない.
このことが丹波全域にも当てはまるようだ.豊作といえる山もあれば不作の山もある.後者の山がどちらかと言えば多い.京都市岩倉にあるまつたけ十字軍運動の活動エリアでは3本の発生である(10月30日現在).昨年の今頃よりかなり発生量は劣る.

 まだ、暖かい地域では、発生は終わりに近づきつつあるが終わってはいない.岡山県、ここは若いアカマツ林面積が豊富で、マツタケ産業に勢いを感ずる.気候変動温暖化の中、見習うところが多い.

 豊作、不作と言っても、どの年代を基準にするかで変わってくるが、昨今のマツノザイセンチュウ病でマツタケの生息地であるアカマツ林面積が大いに減少しているはずである.残されたアカマツ林も広葉樹との競争に喘いでいて、元気のあるアカマツは非常に少ない.そんな状態の残されたアカマツ林に、気象に恵まれ精一杯のマツタケが発生したのではないだろうか.去年は凶作で京都府全体で2.4tの流通量であったが、奈良県も滋賀県、和歌山県や兵庫県、京都府も去年の2~3倍の生産というのが実態であろう.これが今年の印象だ.

 マツタケの販売価格は、バブル崩壊後、上客のまつたけ離れが進んでいるが一級品、これは僕たちの目に触れないが、価格は下がっていないという.並クラス以下の価格低下が顕著であったそうだ.

 外国ものの輸入量も一頃は3千tを越えていたが、最近はその半分程度に落ち込んでいる.中国雲南省や朝鮮半島においてもその生産量が減っていて、マツタケ発生環境整備が考慮されている.1930年代には7582tあった国内産マツタケは依然として急ピッチで減少、1990年代の年平均流通量は267t、2000年代のそれは68tになっている(林野庁調べ).その主な原因は二つあって、気候変動とマツタケ生息地の喪失と考えられる.そのどちらも人の活動が引き金になっていることは間違いない.
マツタケの生活は春から夏まで、マツタケの菌根集団であるシロの栄養生長が続き、その後、低温が刺激となって生殖生長に切り替わる.気候変動はこの時期に悪さをする.秋のマツタケ子実体発生期に、残暑の継続もしくはぶり返しを招き、子実体形成・成長障害を引き起こす.マツタケ発生量の不作の原因である.

 気候変動の影響と思える激しい天変地異を見聞きすることが増えていて、自らの生活を見直す必要があり、気候変動の要因改善に全世界で取り組まねばならないが、なかなか人はその習慣を変えることをせず、どちらかと言えば無関心派が多数である.名古屋市で開催された生物多様性条約第10回締約国会議(COP10)の盛り上がりももう一つであったし、愛知議定書と愛知ターゲットの中身もいわゆる先進国と非先進国の利害の対立を反映し、これでいいのかと思われる.SATOYAMAはどう変わるか? 結局は、市民に丸投げになるようでは贅沢なお祭りでしたに終わる.

 市民の里山再生(生息地再生)は、これも大いに進んでいるとは言い難い.アカマツ林を手入れして、マツタケ増産に成功している人は全国に結構おられる.また、手入れをすべきだと理解されている林家がほとんどである.しかし、重労働のためその成果の波及は遅々としている.

 マツタケの生活できるアカマツ林を再生するには、マツタケ山づくりを最後までやり抜く気力や体力を持ち続けることとマツタケが生活するアカマツ林に戻せるかどうかという科学的見極めが必要である.現在の放置アカマツ林は土壌の富栄養化が進み、マツタケ山づくりは、大変な作業であり、手入れを、もっとも手入れの仕方も問題だが、すればマツタケが戻ってくる林はどんどん少なくなっている.

 日本のアカマツ林再生活動は、まつたけ生産者と何ら見返りを求めない市民運動が取り組んでいる.里山林所有者が林づくりをしないなら、林づくりをしたい団塊世代に山を貸してはいかがなものかと思うが、ボランティアに依存しても、それに頼るだけでは、全国に230万haある(里山林の30%を占める)というアカマツ林の再生は無理と言える.政府・林野庁は、特別なエリア以外の手入れを進める気はないと表明している.

 林家に最低線であっても収入の道が開けるようにするには、山菜や他の有用キノコ、葉わさび生産などとマツタケの生産を組み合わせるなど山の立体的利用を考え尽くす必要がある.また、広島県庄原市の取組、材を粉砕しキノコにバイオエタノールを作らせる実証プラントがあるが(広島県立大学・森永 力)、このような施設が全国に普及していくことを願う.

 最後に、マツタケは食用キノコとしてのみ注目を浴びているが、樹木と共生関係を持って生活している.マツタケが感染すると、アカマツの根が細かく枝分かれし表面積が大幅に増えるため、アカマツは養分などの吸収に都合がよい.地中を見ると、マツタケの菌糸がアカマツ細根をびっしりと覆い、その細根は乾燥や土中の病原菌から守られている.また、マツタケが発生する土壌にはそうでない土壌と比べて、マツタケの生活に有利に働く土壌細菌(ヘルパー細菌)が多い.

 広葉樹林に発生するマツタケが見つかっている.すると、里山林の色んな樹木にマツタケが感染し、この菌糸のネットワークを通してある樹木の代謝物質がさまざまな樹木に移動すると予測される.マツタケなど菌根性のキノコは林を育てる大きな役割を持っていることが分ってきた.他にマツタケ菌糸の代謝産物にもっと注目しても良い.
     
                           吉 村 文 彦
                            微生物生態学
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★お知らせ
1)11月12日(金・264回活動日) 能登の皆さんが視察 ・・・
能登半島七尾市から20名ほどの皆さんが「まつたけ山復活させ隊!視察」に来られる。

2)11月21日(日)滋賀県荒神山で午前中マツタケ発生調査と山づくり.昼食後、報告会.参加希望の方は猫田さんまで連絡下さい.

3)まつたけ山復活させ隊の仲間たち(高文研刊) マツタケは京都府の絶滅危惧種である.生物多様性上その保全も必要である.お陰様で好評である.1680円で書店でお買い求め下さい!
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☆カンパありがとう!
 まつたけ十字軍運動 ヤマガラの里班からアカマツ材の薪売却代金のカンパを戴きました.
☆カンパお願い: 運営は皆さんのカンパで成り立っています!
カンパの振込先
氏名: まつたけ十字軍 代表 吉村文彦
銀行名: 京都銀行 山科中央支店 口座No. 普通預金 3698173
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§活動拠点へのアクセスなど(参加ご希望の方は事前に電話下さい、090-6227-4305.また8月10日付ブログを読んでおく必要があります.)
活動場所:京都市左京区岩倉村松町138-20 京都バス停留所「岩倉村松」から北東へ450m徒歩6分) 活動開始は、午前10時頃から終わりは午後4時頃.自由参加可能 ただしコアータイム昼食時は参加のこと.
アクセス:
京都バスの「岩倉 村松行き」に乗車.
このバスに乗車するには、
ア)JR京都駅七条口から(バス停「C6」番、所要時間約60分)
イ)阪急京都線四条河原町駅から(四条河原町交差点河原町通り北へ上ル東側(40分)
ウ)京阪本線出町柳駅から(加茂大橋東詰め北へ上ル西側、約30分)
エ)京都地下鉄烏丸線国際会館から(3番出口からバスターミナル1番)約15分
(地下鉄烏丸線はJR京都駅、烏丸四条、烏丸御池、国際会館などに停車)
§参加費は無料;ただし、消耗品費は皆さんの浄財カンパで成り立つ、或いは必要に応じて徴收.食材費(実費)+消耗品費として現在 400円を徴収.
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§開催予定日 2010年11月―2011年2月
第263回    11月05日(金) 榎本    
第264回      12日(金) 三輪  石川県七尾市から見学
第265回      20日(土) 宮崎
第266回      26日(金) 榎本
第267回    12月04日(土) 池内  
第268回      10日(金) 三輪
第269回      18日(土) 宮崎  感謝際(マツタケの碑詣)・忘年会
第270回 2011年01月08日(土) 榎本  新年会    
第271回     14日(金) 三輪
第272回      22日(土) 宮崎      
第273回      28日(金) 榎本
第274回 02月04日(金) 三輪
第275回      12日(土) 池内
第276回      18日(金) 榎本      
第277回      26日(土) 宮崎
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以下の項目は 8月10日付ブログ案内号に移動
○まつたけ十字軍運動とは何をする?
○まつたけ十字軍運動活動への参加方法は
○私達のマツタケ山造り(作業方法)の特徴
作業内容と作業区の紹介
○今年の予定と目標?
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§主 催
まつたけ十字軍運動
代表 吉村 文彦(マツタケ生態科学)
京都市山科区御陵岡ノ西町38-27
090-6227-4305

香川理化学研究所
代表 香川 晴男

§共 催
京都大学マツタケ研究会
代表 大石 高典
080-6123-4706
コメント
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