まつたけ山復活させ隊運動ニュース

 松茸は奈良時代から珍重されてきたが、絶滅が心配される.松茸山づくりは里山復活の近道であり里山の再生は松茸復活に繋がる.

まつたけ「十字軍」運動NEWSLETTER-446-

2009年10月07日 |  マツタケの林地栽培 
岩手県大野高校生の笑顔が素晴らしい.Nikon写真集もご覧下さい.


まつたけ復活・里山再生市民運動


 台風18号の直撃で、強い雨風の影響が心配されます.この頃のマツタケ山には雨が必要で 生産者の中には台風を希求する人が少なからずいますが、一気に降る雨は無駄に流れるし、台風のもたらす南風で気温が上がり子実体原基が腐ることもある.何よりも大きな風水害も期待することにも繋がることをお忘れなく.
 
マツタケの生理生態に興味ある方は、必読です.

次の開催日は10月9日(金)岩倉に10時です.

<目次>
里山再生まつたけ十字軍運動(1):442号掲載
里山再生まつたけ十字軍運動(2):444号掲載
里山再生まつたけ十字軍運動(3)
マツタケの栽培
1)オガクズ栽培と林地栽培
2)林地栽培の効果-岩泉町のまつたけ産業は15倍に成長-
3)人工アカマツ林にもマツタケは発生
4)マツタケ山の日頃の管理が最も大切で重要
作業区と作業内容の紹介
お知らせ
 テレビ朝日地球号食堂が再度取材に来る
 ポスト民芸例会開催
メール便り
カンパお願い!
まつたけ十字軍運動に参加するには
開催予定日 2009年10月―12月
まつたけ十字軍運動とは?
連絡先など


里山再生まつたけ十字軍運動(3)
マツタケの栽培
 人の活動によって人里付近に登場したアカマツ林にマツタケは登場した.人は毎日の生活のために里山林を大いに活用し、結果としてマツタケの生活し易い林を維持していた.

 しかし、アカマツ林の放置は、依然として続いていて、マツタケをレッドデータに載せる地域が増えると思われる.マツタケは、人による森林の破壊によって生まれ、また、人の放置による森林「破壊」によって、その生を終わろうとしているのかもしれない.

 先述したように、昭和10年代、あるいは薪炭の生産量が減少を見せる昭和30年頃までは、意図的でなかったが、日本のアカマツ林で、人はマツタケを大量に「栽培」していたと言える.

 まず、昭和30年代の健全なアカマツ林を取り戻す.その上で、マツタケやアカマツの生理や生態をよく理解し、マツタケの林地栽培をする必要がある.マツタケの林地栽培は、実は極めて容易なのである(長野県伊那市生産者談).昭和10年代には、日本のアカマツ林には蹴飛ばすほどにマツタケは生えていたことを思えば納得できる.ただし、人為的には、「有から有」は容易であるが、「無から有」の成功例がない.

1)オガクズ栽培と林地栽培                
 マツタケの栽培法は二通りある.一つ目は、温度、湿度、照度など物理的要因や培養基の性質など化学的要因を制御した環境で、マツタケの胞子や菌糸を培養基に接種して、マツタケ子実体を得る方法である(人工栽培).100~200回に1回くらいの割合で親指大のマツタケ子実体が得られることがある.しかし、なぜマツタケ子実体が得られたのかあるいは得られないのか解明できずに再現性を欠いている.

 二つ目はアカマツ林の林相やマツタケの生活しやすい土壌条件を整え、マツタケ子実体を得る方法である.アカマツ林を健全に誘導する効果もあり、全国的に里山林の放置が進み森林機能の低下や生物多様性の保全上からも林の現状を改善する必要を考えると、最も望ましいマツタケの栽培法である.

 また、室内でマツタケ菌糸をアカマツの根に接種し、人為的に野外で菌根を作ることも可能になった.岩泉まつたけ研究所のフィールド試験では、5年間の観察なのだが、菌根が維持されるばかりか新しい根にマツタケが感染している(林地栽培;マツタケ感染アカマツ実生苗).

2)林地栽培の効果-岩泉町のまつたけ産業は15倍に成長-
 昭和10年代は全国いたるところのアカマツ林に蹴飛ばすほどにマツタケは生えていたのである.
 アカマツ林に適正な手入れを恒常的に施しさえすれば、マツタケ既発生林ではシロ数やマツタケ発生数の増加が見られる(単に昭和30年代のアカマツ林に戻すことである).その効果は100%であった.岩泉まつたけ研究所向林試験林(1ha)では、1990年に発生環境整備を実施、32のシロを確認. 2005年現在(アカマツ平均樹齢:45年)で101のシロを有する. 

 岩泉町全体を見ると、1980年から5年毎の平均まつたけ流通量は、1.5t、2.3t、6.1t/年と増加し、1980年代の3倍強になったが、2000年代になって、異常気象で不作が続いている.また、その価格は1万円から5万円/Kgと5倍に上昇している(2009年).岩泉まつたけのブランド化に成功している. それは、残念なことに、負の側面も持つ.1Kgのマツタケを25万円でも売らないという話を聞いた.生産者に問題があるが、いくら高くても「買う業者」がいることも問題だ.

 しかし、全国の林地栽培において、失敗例が少なからずある.
 一つは、手入れそのものが不十分でマツタケ向きに改善されていない.または、マツタケが生活できなくなった樹齢や富栄養化したアカマツ林を手入れするケースである.
二つ目は、作業のやり過ぎである.過度の地掻や中小径木を伐りすぎたことによって土壌の乾燥を招いている.あせって理想の姿にしてしまう.
三つ目は、発生環境整備作業を初年度に実施するが、翌年の補整作業を怠り、前より茂りすぎの林を作っている.整備後の林の放置は放置以前以上にマツタケの生活に不向きな状態になる.

 かつて、マツタケ発生環境整備事業には公的資金の補助制度があったが、例えば、2週間で作業が完了する計画なら、人は2週間しか山に入らない.これは作物の栽培者のすることではない.林家も、農家の努力を見習うべきである.

3)人工アカマツ林にもマツタケは発生
 岩手県全体では15万haの、岩泉町に1.3万haのアカマツ人工林がある.そのほとんどがマツタケ発生前の若齢林で、ある林齢までは除間伐作業がなされるが、その後は、放置されているに等しい(有用資源の放置).
また、1993年に岸長内沢(キシオサナイザワ)試験林(人工林30年生)で、胞子播種により初シロの形成をみている.また、岩手県林業公社造林の人工アカマツ林にも、マツタケの発生が確認できている.このことは、人工アカマツ林でマツタケ栽培が可能であることを意味する.

 その後、東北、いや京都でも、マツタケは発生していることが分かった.実は、江戸時代、現群馬県太田市金山では、まつたけ発生量の落ちたアカマツ林を伐採し、植林を続けて400年に渡ってマツタケを栽培していた(太田市HP).

 岩泉まつたけ研究所の向林試験林の一斜面に人工植栽のアカマツ林がある.1991~1992年にわたってアカマツ林の手入れを実施.そのあとに土壌表層に階段状のステップを作り、マツタケの胞子とアカマツ細根との出会いすなわちマツタケ感染の機会を大きくするための作業を施した.1997年に、マツタケの自然感染による初シロが二つ形成された.

 アカマツ人工林でマツタケを栽培するためには、林齢15年くらいあるいはそれ以下の若齢林にマツタケ発生環境整備作業を行うようにすべきである.現在の材生長の手入れ(=除間伐材の林内放置=土壌の富栄養化を招く=キノコが減少=樹木の衰弱)からマツタケ栽培の手入れに変換をすべきである.

4)マツタケ山の日頃の管理が最も大切で重要
アカマツ林を放置すると、アカマツの樹冠同士がぶつかり閉塞してくる.すると、アカマツの着葉量が低下し、細根量も少なくなる.また、広葉樹の密度が増え、地表の堆積物が厚くなる.当然、林内は過湿状態で、土壌は富栄養化し、樹木の生長を助けるキノコが少なくなり、林は不健全で低生長になる.森林機能も落ち、新種の病気が発生する.

 壮齢アカマツ林の観察を続けると、毎年少しずつ、アカマツが少なくなっているのが見えるようになる.当然のことながら、マツタケの発生量も減少する.マツタケの発生が最近落ちてきたと思われたら、それには必ずその原因があるので、適切な手入れ等が望まれる.

 マツタケ林地栽培法は、アカマツやマツタケの生理生態をうまく利用し、マツタケを林地にて栽培することである.森林生物や森林土壌の物理・化学性のコントロールである(林つくり、土つくり、根つくり).土壌微生物には、マツタケの生活に有利なグループと有害なグループと無関係なグループとがある.その関係をうまくコントロールすればよい.
 
 昭和30年以前は、薪や柴や緑肥採取のために、毎日の山の利用(=手入れ)をかかさなかった.昭和30年代も薪や炭の生産のため、これまた、毎日、林の手入れを怠らなかった.このようにすれば、マツタケの栽培は出来るのだ.山の手入れを欠かさないことが必要である.
(1)「雑木」や草本類が適正規模以上に繁茂しないようにする.
(2)落葉・落枝をためすぎない.
(3)傘をさしてハイヒールで歩ける林内を維持する(448号に続く).

作業区と作業内容の紹介
山づくりエリアや作業内容を変更するときは、事前に連絡下さい.
1)香川山皆伐区も予定どおりに再生が進み、アカマツ幼樹の群落が美しい.斜面の
地掻など補整作業を実施している.マツのザイセンチュウ病による枯損木が周辺に目立っている.伐倒焼却の要あり.

2)澤田山は、この秋にでも、まつたけの発生調査をするつもりであるが、アカマツ林でマツタケの生息地を再生するというエリアとコナラ林を整備するエリアとがある.各整備地ごとにネライを定めて各班ごとに独自に作業を進めている.

第1整備地は、村上班(第1整備区)と阿閉班(第2整備区)で精力的にマツタケ山づくりが行われている.第1整備区は京都府のホンシメジ接種試験が相当前に行われ、そのとき整備もされたが、菌根性のきのこの発生には土壌上の問題があるのかもしれない.補整の手入れが必要な状態になってきている.
 その南側は、やはりアカマツ林帯で、阿閉班の担当で第2整備区と呼んでいる.やがて第1整備区につなげるという.エスケープした檜・杉など大径木の処理が進んでいる.

第2整備地は、ヤマガラの里と新しく愛称がついた.以前から整備を始めているところは「ヤマガラの里A地区」と呼び整備が完了している.その西に当たるところを尾根部(アカマツ林を再生)、傾斜地部(コナラ林にする)など3区に分け、それぞれ生態的特徴を生かした整備を進めている.ここは「ヤマガラの里B地区」と呼ばれる.分からないことなどは前田・小原さんにお尋ね下さい.

第3整備地の作業エリアでは、アカマツ林再生を考え、適切なエリア探しが続いているように見える.どのような林づくりがなされるのか注目をしているところである.

3)玉城山は、昔は、山全体がマツタケの発生に適したアカマツ林であったが、林道が造られたためにその下のエリアからマツタケが消えた.岩泉まつたけ研究所の向林試験林内で、全く同じことを経験している.林道を一つ通すだけのように考えがちだが、周りの環境ががらりと変り水の流れも変化する.
尾根筋には、アカマツ林密度が比較的高く残っているので、榎本班と三品班で上部と下部からマツタケの生活するアカマツ林の再生作業に取り組んでいる.
地表の堆積物を堆肥化し、冬には水田に鋤き込む.マツのザイセンチュウ病害木の伐倒焼却活動が一旦終了したように見えたが、再開している.
ここは、市民によるマツタケ山づくりのお手本として有名になった.今まで、プロによる手入れで、マツタケ発生の復活は、「有から有は簡単である」と実証されている.
しかし、市民による手入れでマツタケ発生の成果が出たケースはここが日本初の地
である.撒水実験にも取り組むという意欲的作業が見られる.

<お知らせ> 
1)テレビ朝日の番組“地球号食堂”「エコめし」が近代マツタケ学発祥の地岩倉の山の風景を再度撮影.

2)10月20日フジテレビ系列 19時~「わかるテレビ」、
11月8日 午後11時 テレビ朝日系列「地球号食堂 エコめし」 にまつたけ十字軍運動の活動が紹介されます.

3)10月17日(土)ポスト民芸運動第2回例会

4)近藤高弘展 金と銀 をテーマに開催される
   名古屋展 10月14日~10月20日   JR名古屋高島屋10階 

<メール便り>

<カンパ! お願い>
氏名: まつたけ十字軍 代表 吉村文彦 
銀行名: 京都銀行 山科中央支店 口座No. 普通預金 3698173

<まつたけ十字軍運動に参加するには>
下記の1から7を了承の上、参加下さい.また、 “まつたけ十字軍運動とは?”も併せてご理解下さい.尚、初めての方は事前に連絡が必要(連絡先は下記主催者).
1)参加資格は問わない. 参加時間は自由、ただし、コアタイム(昼食時)の参加は必須.
2)事故を起こさないように各自勤めること.傷害保険等は各自加入のこととし、事故の責任は当事者に帰するものとする.

3)服装等:山で軽作業できる服装(運動靴か長靴か地下足袋、雨具、タオルなど).ノコ・ナタを持参が望ましい.
4)降水確率(京都府南部、午前7時)が60%以上の日は、原則的に山づくり作業は中止.しかし、山や畑にも、「雨の日には雨の、雪の日には雪の景色がある」といって、皆さんは補修や軽作業などされます.
5)持参するもの:昼食は作るので、MY皿と椀と箸、コップなど、料理の持ち帰り容器、飲料水(お茶があるので水筒)など.
6)道具類や備品は、個人購入のものや皆さんのカンパで購入したものです.大切に扱うよう願います.汚れを洗った後、保管場所に戻すこと.また、使用した食器やコップ類は洗って戻すこと.出したゴミ等は各自持ち帰ること.

7)参加費は無料;ただし、消耗品費は皆さんの浄財カンパで成り立つ、或いは必要に応じて徴收.食材費(実費)+消耗品費として現在 400円を徴収.

<活動拠点へのアクセスなど>
8)集合場所:京都バス「岩倉 村松」行き終点「村松」.あるいは現地アカマツ林(京都市左京区岩倉村松町138-20バス停「村松」から北東へ450m徒歩6分).
叡山電鉄「岩倉」駅から現地アカマツ林へ2.3Km(徒歩30分)
アクセス:
京都バスの「岩倉 村松行き」に乗車.このバスに乗車するには、
ア)JR京都駅七条口から(バス停「C6」番、所要時間約60分)
イ)阪急京都線四条河原町駅から(四条河原町交差点河原町通り北へ上ル東側(40分)
ウ)京阪本線出町柳駅から(加茂大橋東詰め北へ上ル西側、約30分)
エ)京都地下鉄烏丸線国際会館から(3番出口からバスターミナル 1番、約10分)
(地下鉄烏丸線はJR京都駅、烏丸四条、烏丸御池、国際会館などに停車) 

9)<皆さんの活動の様子を見ることができる>
ブログ画面左下ブックマーク(Bookmark)中のNikonまつたけ復活・里山再生運動を左クリックすると、Nikon Onlinegalleryにはいる.akamatsurinさんのホームとなっている.アルバム一覧からお好きなものを左クリックすれば写真一覧が出てきます.スライドショーなどお楽しみ下さい.写真を印刷したり保存したりできます.

開催予定日 2009年10月―12月
活動場所は岩倉香川山. 活動開始は、午前10時頃.終わりは午後4時頃.
第210回10月09日(金)ブログ報告:榎本
第211回10月17日(土)ブログ報告:池内
第212回10月23日(金)ブログ報告:三輪
第213回10月31日(土)ブログ報告:吉村
第214回11月07日(土)ブログ報告:榎本
第215回11月13日(金)ブログ報告:宮崎
第216回11月21日(土)ブログ報告:三輪
第217回11月27日(金)ブログ報告:榎本
第218回12月05日(土)ブログ報告:池内
第219回12月11日(金)ブログ報告:宮崎
第220回12月19日(土)ブログ報告:三輪 大忘年会 感謝祭
年末年始で休み
第221回01月09日(土)ブログ報告:榎本

まつたけ十字軍運動とは?
今、1年間に40,000種もの生物が絶滅(約13分に1種)していると推測されている.生き物1種の絶滅は、10種から30種の生き物の絶滅を呼ぶという.
日本で、802種の動物が絶滅危惧種とされ、7000種の維管束植物の24.1%(4種に1種)が絶滅危惧種に挙げられている(2007年).
環境省によれば、絶滅危惧種の50%強に当たる生物の生息地は、人里離れた奥山でなく里地里山と呼ばれる私たちの生活の場である.緑が豊かになって生き物が追われている!
私達の周りにありふれた生き物であったフクジュソウやヒメシャガなど、メダカやチョウ類やニホンウサギなど、またオオタカやイヌワシなどが、消え続けている.マツタケも、京都府では絶滅危惧種に指定されている.
生物の保全・多様性上危機に瀕する里山(アカマツ林)をマツタケ山に戻すことが目的である.私たちのマツタケ山づくりは、山-川-畑・水田(-海)のつながりを重視する.マツタケ山づくりで生まれるバイオマスの利用を、「自然」との共生型すなわち徹底した有機物循環型「農林業」に組み込む.また、我々の成果は、情報として正しく発信し、全国に230万haあるアカマツ林に普及させることを願っている.
近代マツタケ学発祥の地、京都市左京区岩倉を活動拠点として、我々は循環型農林「業」を楽しむ.「楽しむ」ということにおいて、いわゆる農林業的作業と異なる.
時折のイヴェントや開催日のコアタイムに集まることによって、作業の情報などを共有し、互いの知恵や技術を学び、また、里山復活の喜びをともにする.
運動は、食事を作る人、木を伐る人・運ぶ人、薪をつくる人、病害木を焼却する人、畑や水田を守る人、設備を造る人、道具類を整備する人、多機能窯を守る人、拠点を整備する人、道路を補修する人、バイオトイレを守る人などすべての参加者が、互いに対等で支え合い助け合って維持運営されている.
まつたけ十字軍運動全体は、アリストテレス風に言えば、個の参加者の総和以上の意味を持つ.それ故、参加者はこの運動の全体性を見失わないようにしたい.

主 催 
まつたけ十字軍運動
代表 吉村 文彦(マツタケ生態学者)  
京都市山科区御陵岡ノ西町38-27
090-6227-4305

共 催 
京都大学マツタケ研究会
代表 大石 高典
携帯 080-6123-4706

香川理化学研究所
代表 香川 晴男
コメント
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