goo

『シッダールタ』(読書メモ)

ヘルマン・ヘッセ(高橋健二訳)『シッダールタ』新潮文庫

ブッダをモデルとした小説かと思いきや、主人公はたまたま同じ名前の別人である。

裕福なバラモンの家に生まれたシッダールタだが、沙門(修行僧)になる決意をする。しかし、苦行の意味に疑問を持った彼は(ここまではブッダと同じ)、沙門の世界を離れて、遊女を愛人とし、商売を始め、ギャンブルの世界にはまっていく。

最も印象深かったのは、シッダールタが、その俗世を離れようとする場面

「いかなる師も自分を救いえなかったという、隠れた声の正しかったことを、彼は知った。だからこそ彼は俗世へ入って行かねばならなかった。享楽と権勢、女と金にふけらねばならなかった。彼の内の司祭と沙門が死ぬまで、商人となり、ばくち打ちとなり、酒飲みとなり、欲張りにならねばならなかった」(p.128)

「彼の内の司祭と沙門が死ぬまで」というところが大事である。

沙門時代はどこか上から目線で世の中を見ていたのに対し、下から世の中を見ることで、人生の本質を見極めることができたシッダールタ。罪にまみれないと、その罪の恐ろしさがわからないのだ。

今まで、 『車輪の下で』『デミアン』『クヌルプ』『ペーター・カーメンツィント』を読んだが、ヘッセはどの小説でも、結局は自分のことを書いているように感じた。

迫力ある仕事をするには「自分を表現する」ことが大事なのかな、と思った。








コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )
« プロフェッシ... あなたの命令... »