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『ガラスの街』(読書メモ)

ポール・オースター(柴田元幸訳)『ガラスの街』新潮文庫

ポール・オースターによる「ニューヨーク3部作」を読んでみた。

第1弾は『ガラスの街』。

私立探偵と間違えられて、「スティルマンという男を見張ってほしい」という依頼を受けた作家のクイン。

なぜか受けてしまったクインは捜査に乗り出すものの、スティルマンと依頼人は行方不明となり、途方にくれる

途中までは「探偵小説」として単純に面白いのだが、後半になると謎めいたストーリーへと変わり、ラストは「?」という感じで終わってしまう小説である。

1点印象に残ったのは、クインが屋外で張り込んでいるときの一節。

「何時間も、空を見上げて過ごした。バケツと壁にはさまれた定位置からは、ほかに見るものはほとんどなかったし、日々が過ぎていくにつれて、頭上の世界を愉しむようになっていった。何よりもまず、空が絶対に静止していないことをクインは知った。雲のない、一面青空が広がっているように見える日でも、小さな変化やゆるやかな乱れはつねに生じている」(p. 212)

この箇所を読んで『戦争と平和』でアンドレイが戦場で死にそうになったときに、空を見て感動する場面がオーバーラップした。

偶然や運命に翻弄されている中で、「世界の真実」に気づく瞬間がある。

その瞬間を大事にしたい、と感じた。


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