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『さよならを待つふたりのために』(読書メモ)

ジョン・グリーン(金原瑞人・竹内茜訳)『さよならを待つふたりのために』岩波書店

十代でがんにおかされたヘイゼルとオーガスタスの物語。

限られた時間を生きる二人だが、そこに暗さはない。一番印象に残ったのは、オーガスタスが亡くなった後に残した手紙の内容。

「おれたちはみんな、あちこちの消火栓におしっこをかけてまわる犬みたいなものだ。地下水を自分の毒のある尿でよごして、全部自分のものだってマーキングしている。それも、自分という人間が存在したことを、死んだ後まで覚えていてもらおうってくだらない目的のために。

おれは消火栓にマーキングすることをやめられない。バカなことだし、意味がないってわかってる ―いまのおれの状態じゃ、覚えていてもらうほどの意味はない― だけど、おれもほかのやつらと同じ、動物なんだ。

ヘイゼルは違う。軽やかに歩いて、地面に足あとさえ残さない。(中略)きっとみんな悲しむでしょう。ヘイゼルはほかの人ほど傷を残さなかったし、ヘイゼルを覚えている人は少ないし、深く愛されたけど、広く愛されたわけじゃない。だけど悲しむことじゃないんです、ヴァン・ホーテン。誇れることです。これこそ本当の勇敢さじゃないですか?医者もいいますよね。なにより、傷つけてはならない」(p.325-326)

自分も、人を傷つけながら消火栓にマーキングしていることに気づいた。


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