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『つゆのあとさき』(読書メモ)

永井荷風『つゆのあとさき』岩波文庫

「女々しい」という言葉は、女性の方にとって失礼な言葉だが、よく考えると、男の方が女々しいような気がする。永井荷風の『つゆのあとさき』を読んで、このことを痛感した。

本書を読んだきっかけは、ドナルド・キーンさんが永井荷風の日本語の美しさを絶賛していたから。まず『つゆのあとさき』という題名が美しい。

さまざまな男と経験することを何とも思わず、淫蕩の日々を送る銀座のカフェの女給・君江が主人公。この君江のパトロンの作家・清岡がしょうもない奴で、奔放な君江に嫉妬して、いろいろな悪さをする。

あるとき、君江は次のようにつぶやく。

「男っていうものは女よりもよほど執念深いものね。」

この箇所を読んで、ある大手下着メーカーの女性マネジャーが「男のほうがよっぽど嫉妬深いですよ」とおっしゃっていたのを思いだした。

本書を読むと、「男らしさ」にこだわる男が、実は「女々しい」ことがわかってくる(自分も含めて)。

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