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屋上のポニー

藤沢周さんの『ブエノスアイレス午前零時』(河出文庫)の中に「屋上」という小説が収録されている。

デパート屋上のプレイランドが舞台なのだが、なんと、併設されているペットショップに本物のポニーがいるのだ。

「焦げ茶色のタテガミのいやに長いポニーが、おとなしくいつも同じ場所で同じ方向を向いてじっとしているのだ。わずかに顎を前に倒して、黒い睫毛に覆われた黒い目を伏せて、ただ固まっている」(p.90)

想像しただけでも切なくなってしまう。

しかし、ペットショップの動物たちは程度の差こそあれ、このポニーと似た状態にある。そして、よく考えると、人間も、仕事という枠の中で、同じような毎日を繰り返している。

そういう意味では、われわれも屋上のポニーと同じような存在なのかもしれない、と思った。





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