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『論語』(読書メモ)

加地伸行『論語』角川ソフィア文庫

『老子・荘子』が面白かったので、『論語』の入門書も読んでみた。『老子・荘子』に比べると、やや軽さを感じたが、それは孔子が実践性を重んじているからだろう。

著者の加地氏によれば、論語は社会のリーダー(為政者)を育てるための書であるという。では、社会のリーダーはどのような素養が必要なのか?

「すなわち、<深い知識>に加えて、<豊かな道徳性>があること、つまりは<教養人の養成>でした。この教養人であること、それを為政者の条件としたのです。今日、この<為政者>とは各種社会の指導者に相当すると言っていいでしょう」(p.162)

いろいろとためになることが書かれているが、印象に残ったのは次の二点。

「子曰く、古の学ぶ者は己の為にし、今の学ぶ者は人の為にす」
(老先生の教え。昔の学徒は、自己を鍛えるために学ぶことに努めていた。今の学徒は、他人から名声を得るために学び努めている)(p.166)

これは、まさに「学習志向」(自身を向上させることを目指す考え方)と、「業績志向」(他者からの評価を得ることを目指す考え方)のことを言っている。

「子曰く、剛・毅・木・訥は仁に近し」
(老先生の教え。物欲に左右されないこと(剛)、志がくじけないで勇敢であること(毅)、質朴で飾りけのないこと(木)、〔心に思っていることはしっかりしているのだが、うまく言い表せず〕口下手であること(訥)、〔この四者は〕それぞれ人の道(仁)に近い)(p.176)

これを読んだとき、「信念があれば、木訥でいいんだ」というメッセージが伝わってきてグッときた。

『論語』のエッセンスを紹介した本書を読み、なんだか「あたりまえのことが書かれているな」と感じたが、それだけ儒教の考え方が日本の文化に染みこんでいるということだろう。




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